Bonus Track_94-5 優しき主のために!『シーガル魔王騎士団』、出動です!! ~ルシードの場合~
すでに、覚悟は決めていた。
それでも、『あいつら』は――イツカとカナタは、言ってくれた。
『やっぱさ。同じ釜の飯を食べたやつらとは、できるならやりあわせたくねえんだ』
『それは、戦況が差し迫ってきたなら、お願いすることもあるけれど、……
その時が来ないように、力を尽くすから。
お願い。おれたちの、わがままと思って』
『かもめ隊』のメンバーもまた然り。
ともに肩を並べ、守りあってきた月萌軍の兵士と命をやり取りする覚悟はついていたのだ。
『魔王』のもとに下った日から。
否、『ハグレドリ隊』として月萌の海を出た日から。
それでも、あいつらはそれに甘えようとはしない。
月萌の兵と直接に矛を交えるポジションには、俺たちをけして、つけなかった。
甘すぎるほどに、優しい魔王たち。
だからこそ、俺たちは誓った。
その背中を、帰る場所を絶対、絶対にまもろうと。
俺とマユ、そして『かもめ隊』は、だから誓いを込めて、ひとつのチームを作った。
『シーガル魔王騎士団』。
そのエンブレムは、黒猫とたれみみ青うさぎ――いずれも王冠をかぶっている――を背に乗せ、力強く飛翔するかもめという、かわいらしいものになった。
今日俺たちは、あるじの留守を守る。
左胸に、魔王軍のエンブレムを。
左のこぶしに、騎士団のエンブレムをつけて。
総大将を引き受けてくれたトラオの声にあわせ、大きくそのこぶしを突き上げれば、さわやかな風が大きく吹いた。
一斉に翻る旗印を背に、俺たちは離陸・離岸した。
俺たちの前では、何人もの飛べる者たち、海を行ける者たちが防衛ラインを描いている。
すなわち、俺たちに矛が届けば、もう容赦はないぞとにらみを利かせている。
そのメンツをみていると、正直俺たちの出番はないんじゃないかと思う。
ソリスの最強――『六獣騎士』が四人、手勢を率いて参戦。
空にしろしめす『蒼穹の女帝』。海に布陣する『大海の王者』。
ここからはみえないけれど、砂浜から周囲の海底にかけては『大地の支配者』が地竜の力をはりめぐらせているし、浜では『燎原の猛将』が仁王立ちでにらみを利かせている。
ステラからも『六柱』ともと『六柱』の四名、ステラ国軍の精鋭たち、さらには第三皇女とそのおつきが馳せ参じている。
『涙硝』『雪狼』『狼牙』が船の上に。『絶地』は砂浜に。
さすがに、結婚準備のためと『ステラ杯』を欠席した三名はいないけれど、その穴を埋めるかのように皇女エルメス一行が浜にいる。
皇女のボディーガードたちには、ハルキも加わって準備万端の様子だ。
なお、この海底にはソリステラスのもと・開戦派もいる。
かれらはこの戦いを、自分たちの戦争とみなしている。
イツカとカナタはそれを許す代わりに、俺たち同様、殺さず・殺されずでいくことを『命じ』た。
『おんなじ側に立ってる以上、俺たちは仲間なんだからな!』『戦いが終わったら、また会いましょう。そのために、生きてくださいね』と。
そのときとっくにイツカナにメロメロだった彼らは『はいっ!』といいこの返事をした、というわけだ。
それだけでもすさまじいというのに、第一防衛ラインには『ミッドガルド最強四女神』そして女神クレイズに仕える神獣と、ベテラン神獣も勢ぞろい。
華やかな戦いぶりをみせてきたたたかうアイドルたちも、そろってスタンバイ。
ぶっちゃけこれがアニメなら、最終回かと思うような壮観さだ。
それでも、月萌軍はやってきた。
水平線を埋める勢いで。
次回、サフタフ&イーブンズ、決着!
魔王たち一行は月萌沿岸に到着、待ち受ける刺客の姿をとらえる予定です。
どうぞ、お楽しみに!!




