11-6 『クラッシュクラフターズ』のミルククエスト~イツカの場合~(2)
2019.12.31
ついに恐れていたことをやらかした!!
アオバをまちがえて「ワカバ」と書いてしまいました……
お詫びして修正いたします!
ミッドガルドにインした俺たちは、山麓の町・ムートンに向かった。
そこでひつじ牧場の主『エアリー』と合流、先導してもらってマウントブランシェを上ったのだが……
それはまさしく地獄の道行きだった。
雪の残る山道はきついわ、風はめっちゃ寒いわ、モンスターはわらわら出てくるわ。
やっとのことで牧場にたどり着いたときにはもうへとへと。
一歩ゲートをくぐったとたん、緑の草のうえにへたり込んでしまった。
案内してくれたエアリー以外の全員が。
エアリーはなんと、足がかりのろくにない斜面を、重さすらない様子でひらふわと上り、道中襲い掛かってきたモンスターもすべてさらりとあしらったのだ。
それも、一度も笑顔を絶やさぬままで。
「もーう、都会っ子は軟弱ねっ!
あなたたちってば、ほんとに天使様?」
なのに彼女の見た目は、ヒラヒラのフリルがついたエプロンドレス、ふわふわのコリーのみみしっぽ、明るい金髪はブルーのリボンをヘアバンドにしてまとめてる、童話のヒロインみたいな少女なのだ。
うん、ミソラ姉ちゃんやアカネちゃんという例もあるし、見た目で判断しちゃいけないのはわかってるんだけど……
「だからさ、エアリーが強すぎるんだって!!
なんだってスノーベア三体を片手でチョイ、なんだよっ!!」
「え、あの白いくまたちのこと?
あんなの大きいだけでフワフワの、たいして害のない野生動物でしょ?」
「ちが、アレAランクモンスターだから!!」
「またまたご冗談!
チアキも一体どうしちゃったの、すっかりか弱くなっちゃって。
って大変! みんな冷えっ冷えじゃない!
まずは温泉入ってらっしゃい。そしたらあったかなミルクとホットケーキをご馳走するわ!」
「ホットミルク!」 チアキがぴょんと跳ね起きる。
「温泉……」 ハヤトは温泉と聞いてしっぽハタハタ。
「ホットケーキー!!」 のこりの俺たちはホットケーキでテンションが爆上がり。
「ふふっ。チアキ、ご案内してあげて。
お風呂ちょっと広くなったけど、基本は変えてないから。上がったら居間に来てね」
「はーい。
みんな、こっちだよ!」
広い広いお風呂を満喫したあとは、居間に急いだ。
あたたかな居間ではニコニコしたエアリーが、大きなテーブルにでっかいホットケーキの皿と、ホットミルクのマグを並べてくれていた。
もちろんどちらもほっかほか。ホットケーキにのせたアイスクリームが、今にもとろけてしまいそうだ。
「うちは羊牧場だから、乳製品は全部ひつじものなの。
みんながよく飲む牛乳とはちょっと違うけど、味わってみて!」
「いっただっきまーす!」
言われてみれば、ホットミルクもちょっとにおいが違う。
一口、口に含めば、生クリームでも溶かしたかのような『濃さ』がやってきた。
「おお……」ハヤトがうなる。
「これは『濃い』な……」
「すっげ飲みごたえ……」イズミとニノが驚いた顔をする。
「嫌いじゃない。」ミツルはお気に召したようでひとくち、ひとくちと飲んでいる。
「これだけ濃ゆいってことは……む! むまいっ!!」
「うっまあああ……」
「ありがとうございますエアリーさん。こんなおいしいものを……」
「うふふ、いえいえ♪」
ソーヤがアイスを口に含んで幸せな顔をした。
レンは天を仰いで『うまー』しか言わなくなってる。
ちなみにアスカが静かなのは、すでにアイスにとろけてダメになってるからだ。
如才なくお礼を言うミズキだが、その顔も明らかにほわほわしてる。
まふまふとホットケーキを食べまくって盛り上がってるのはシオンとミライ、アオバだ。
「ホットケーキもふっかふかー!」
「おいしい、おいしい!」
「こんなのいっくらでも行けちゃうだろー!!」
「でしょでしょー! うちの乳製品とホットケーキはミッドガルド、ううん、ヴァルハラふくめても世界一だと思うよ!」
チアキがぴーかんの笑顔でそう言い切った。
なつかしの味に癒されたのか、ほっぺたはつやっつや。耳しっぽパーツの毛並さえふかっふかだ。
と、ここまで幸せに浸っていたカナタが、ハッとした顔で言い出した。
「ねえチアキ、ステータス! 回復してない?」
「……あっ!」
チアキが驚いた顔で見せてくれたステータス画面。おれたちも全員驚いた。
「回復してるってかむしろ超上がってる――!!」
「てことはつまり……」
「うちのミルクが、チアキを強くしてたってこと?」
「そうかも。だってミルク飲んだら一気に元気わいてきたもの!」
チアキの声は、今や格段に力強い。
そこでのこりの俺たちも、それぞれステータスを確認してみた。
上がってる。全員もれなく上がってる。
今なら外のモンスターも『ただの野生動物』に違いない。
そうとなったら決まりだ。
「よっしゃ、それじゃ、たまにここにミルクとかもらいにくればいいよな!
ついでにちょっとだけ手伝いもしてさ。いいかなエアリー?」
「うちならもちろんいいわよ。
ただ、羊たちの数もそう多くないし、ミルクは鮮度が命だからね。
チアキ、週一回ここに取りにこれる?」
だが、実際のとこで壁がみつかった。
「え、……っと……それは無理、かも……
あの、ここにくるのにね、いくらかTPが必要なんだけど、僕いまTPあんまりなくて……がんばっても、次これるのは三か月後とか、かも……。」
「え、そうなんだ。天界も厳しいのね……ちなみにいくらくらいなの?」
「ええっと、僕は星なしだから、一回2万。
実はいまのひと月のお給料よりね、上になっちゃうんだ……」
「ええっ?! それっうちより厳しくない?!」
「僕はまだ弱いから……見習いなの。
もうすぐ、一人前にはなれるけど。たよれる仲間や先輩がいるから!」
「そう……なの……?
こっちから送ってあげればいいのかしら。小規模だけどうちも、通信販売始めたのよ」
「ほんとにー!」
「あのね、ただ……ほんとチアキには悪いと思ってるんだけど、そうなるとどうしても、タダというわけにもいかなくって……。
従業員価格で、一週間分1000TP。びん代と送料ふくめてギリギリになるわ」
レンが携帯用端末で計算を始めた。
「一週間分のセットで、1000TP。月になおすと4~5000か。
チアキは月給が一万。ファイトマネーは勝って投げ銭はいると3000、負けたときは2000ちょいと。
素材費ほかいろいろ差し引くと、むりなく続けられるのは月2000ぐらいが現状だな。それ以上だと取り崩しになる。
チアキの手持ちがこれだから、一ヵ月内に一ツ星になるか、一ツ星のやつと組めば……
オレとの共同購入って形でチアキだけ飲んでもいいんだが、ヘタすると代理弁済分を詐欺ったということで厄介なことになるからな……」
「うーん。いっそ足が出る分は連盟でもとうか?」
「いざとなったらミズキと組むとか」
するとチアキがあわあわと手を振った。
「まって、待ってよ。
それだとみんなに負担かかりすぎだよ。
僕なんかよりもっともっと困ってる子がいるでしょ。
ソナタちゃんもそうだし、ミライくんも早く助けてあげたいし。……
ミズキくんのバディ枠は、それこそ『ほんとうにそれしかないとき』のために取っておかなくちゃ。
僕は今でも何とかやれてるし、そもそも僕がもっとトレーニングして、もっと強くなればいいだけのことなんだから!」
レンが携帯用端末を置き、真面目な顔で言う。
「チアキ。オレ知ってんぞ、お前が今でもめっちゃトレーニングしてること。
これ以上どう増やすってんだよ。
いい加減、頼っていいレベルだろ。
オレたちその、……あの、う、運命共同体? だしっ」
最後の最後で照れたレンに、俺たちはおもわず笑ってしまう。
「あ、そうだ。
そーうだ! いーいアイデアがあるんですよ奥さん!」
そんななか、ニノが満面の笑みで言い出した――
なんてことだ。IN二つ目をいただいてしまったぜ!
ありがとうございます――ドがとれたばかりの底辺作者日向は、年の終わりに感謝と幸せをかみしめるのだった。
(ラノベふうを目指してみる)
皆様今年もありがとうございます。
来年も楽しんでいただける話をお届けするべくがんばります。
どうぞ、よろしくお願いいたします!
やっぱり2話でおわらんかったとです……orz
明日から五日は、更新が不定期になる可能性がございます。
どうぞお時間のある時に、そっと覗いてやってくださいまし。




