Bonus Track_93-2 嵐すぎさりし後。町の外にて ~ノゾミの場合~
俺は、高天原を出た。
トウヤと二人、『縮地』を使って町の門まで。
門衛に門を開かせ、少し歩いたら、携帯用端末を取り出す。
その瞬間に、通話が着信。
かけてきたのは、イツカだった。
「ノゾミ兄ちゃん! どうだって?!」
女神を除けば世界最強のくせに、ぜんぜんかわらぬその調子。
こみ上げる笑いとともに「おう、やったぞ」と答え、俺は携帯用端末を耳から離した。
四人分の歓声がやむと、俺は切り出した。
「ただ、カリキュラムの変更には条件がある。
ひとつは、明日の第七陣、作戦通りに動くこと。
いまひとつは、前倒しのための財源を確保することだ。
お前たちについてた予算があったろう。いまは休職扱いで宙に浮いているやつだ。
そいつから出させてほしい。いいな?」
かえってきたのは、ふたりぶんのイエスだった。
でも、とカナタが残念な声で言う。
『やっぱり第七陣、学園のみんなも参加なんですね……』
「俺としては不本意だがな。
だが、皆は頑張ると言ってくれた。心配するな、生徒たちは俺が守る」
一応、作戦は軍事機密、ここでそれ以上は口にできない。
トウヤは聞かないふりをしてくれるだろうし、そもそもアスカとライカ分体を通じて
あちらには筒抜けなのだろうけれど、そこはまあ、こんな融通をきかせてくれたトウヤへの、義理立てというやつだ。
「トウヤの奴、また強くなってやがったぞ。スケさんもがんばってる。
油断すんなよ、おまえたち。
手加減はしないからな」
『ありがとう、ノゾミお兄さん』
『いらねえって手加減なんて。
ぜーったい勝つからな! カッコよく!!
トウヤもそこいんだろ。よろしく言っといてくれ!』
「……話していいか」
と、聞こえていたのだろう、トウヤが俺を見た。
おお、と携帯用端末を渡すと、トウヤは話し出す。
「イツカ、カナタ。
月萌軍は全力でお前たちに挑む。
もちろん、俺もその一員として。
完膚なきまでに下して見せろ。
俺たちの、王となるというなら」
『おう!』
『はい!』
『絶対勝つからな! 全力と全力で!!
楽しみにしてるぜ、トウヤ!』
「……ああ」
トウヤはちょっとだけ驚いたような顔をしたが、すぐにいい顔で笑った。
次回、カルテットとハナイカダ。
ハナイカダの二人の決断とは?
どうぞ、お楽しみに!




