93-3 自由をかけて! 最強剣士の本気対決!!(2)
即席の闘技場の隅、一見何もない場所から火花が散った。
ひとつふたつ、みっつ。
鋼のぶつかる音が響いたそのときには、中央付近の空中で小爆発がみっつよっついつつ。
それらがまたおさまりきらぬうち、別の隅っこでまた火花。
すべて、2秒と経たないうちのことだ。
もちろん、そこにほんとうに何もなかったわけじゃない。
目には見えずとも耳はとらえていた。そこに確かに、二人の剣士がいたことを。
「あー。こりゃ見えないなー。
見せる気もないだろうからこりゃーだめだわーむりだわー」
タカヤさんはさっくり諦めたようすではっはっはーと笑った。
こんな時いつもミソラさんは、笑顔で神聖強化・学長権限バージョンを発動、戦う様子を見えるようにしてくれたものだけれど、今回それはない。
戦う二人の圧倒的強さを印象づけるため――すなわち、勝者に対して異を唱えさせぬためのことと、すぐにわかった。
ちなみにイツカは完全に見えてる様子でくぎづけ。おれの胸元のライカ分体 (ペンダントフォーム)は『ライカネットワーク』を使ってのぞいているようで『うっひょう! いいぞのぞみん、いっけー!!』とエキサイト。
つまり現状、タカヤさんだけ仲間外れ。なんかちょっとかわいそうな気がしたので聞いてみた。
「タカヤさん、よければ強化ポーションのみます?」
「カナタぴょーん! 心の友よー!!
でもいまはやめとくわ。
タカヤさんには、そんな優しいごしゅじんさまたちを無事におうちに送り届けるという、至高の任務があるからね。
ありがとね、カナタぴょん☆彡」
そう言ってタカヤさんは、バックミラーごしにイケメン全開のウインクをくれたのだった。
おれたちがそんなふうにほっこりしている間にも、画面の向こうはさらに白熱していた。
地面も空中も関係なし。ひととおり走り、跳ねては斬り結んだ二人は、互いに大きく跳び離れた。
『青嵐公』は下段後ろ手に得物を構える。とたん、周囲に湧き出す闇色のチカラ。
おれたちは知っている。その正体は、無差別に吹きあれる『パワードレイン』の嵐。第一覚醒発動の前兆だ。
「『ナイトライド』!」
はたして銘刀『青嵐』が一閃すれば、嵐は凍てつく顎となって、トウヤさんに襲い掛かった。
何度見ても恐ろしげな必殺技に、トウヤさんはしかし、寸分も動じない。
こちらも同じく、第一覚醒で対抗だ。
「『明鏡、止水』」
まっすぐに相対し、するりとまるく『月閃』を滑らせる。
描かれた弧は輝く水鏡となり、闇の襲来をすいと飲み込んでしまう。
「こんどは、こちらから行く。
――『墜華月閃』!!」
トウヤさんはその流れのまま、第二覚醒を発動した。
幾多の剣閃が舞うように宙を裂けば、斬りおとされるのは空間そのもの。
まるではかない花弁のように、きらめく切片となった『空間』が降り注ぎ、閃光とともに炸裂する。
見ている限りではきれいだが、その威力は恐ろしい。
『空間』そのものの炸裂のまえには、通常の防御フィールドは無意味。
さらにはじけ飛ぶ『空間』は、その周囲の空間をも連続的にはじけさせて破壊を振りまく。
それに対抗できるのは、『通常』を超えたモノや技のみ。
そして『青嵐公』は、超常のモノとなれる力を持っている。
「やっと来たか。『レギンレイヴ』!
――行くぞ!!!!」
青のキュウビはうれしげに笑い、高々と剣を掲げる。
さきとは対照的に、身の内からあふれ出す白き光。
群青と黒の戦装束が、深い青の毛並みが、みるみる一等星の輝きに染まる。
かくして『眼鏡の死神』は、神狐の戦士へと姿を変えた。
『青嵐』を右上段に。その切っ先は、トウヤさんに。
そうして『青嵐公』は、降り注ぐ花時雨の中駆け出した。
やっと明鏡止水と墜華月閃だせました^^
次回、決着!
お楽しみに!!




