93-2 自由をかけて! 最強剣士の本気対決!!
2022.09.22
いくつかの表記を修正いたしました。
『フィクション』→フィクション
磨き抜かれた愛刀→白刃
高天原学園を包むのは、軍事基地も真っ青の多重障壁だった。
ミソラさんの『学長結界』。『チコニアン_ウィッカーワークス』を利用して再現された防御技の数々――もちろん『セント・フローラ・アーク』も含まれている。
さらには、おれが先週公開した最新型結界『はるかな愛のコンチェルト』まで。
これだけ重ねられると、強引にぶち抜くことは難しい。
現実的な選択としては『ブラックムーン』でスキルを無効化、しかるのち、警官隊を突入させて制圧、というところだろう。
だが、この相手と状況で、それはできない相談だ。
高天原の教員は飛びぬけて高い資質を要求される。悪しき管理主義の支配を脱した生徒たちも、大幅にポテンシャルを上げている。
それを相手にスキルなしでの突入などすれば、さすがに無傷では済まない。
さらに強硬突入を行った場合、月萌政府の大前提『魔王戦と一連の動きはすべてフィクション、ゲームのイベントである』が崩れかねない。
この独立騒動をあくまで『ティアブラのゲームイベントの一環』にしておくためには、みんなが見慣れたスキルが飛び交う、華やかな絵面が必須なのだ。
なによりもし逮捕・拘禁を行ってしまえば、明日に迫った第七陣において、学園生の戦力を期待できなくなる。
一斉砲撃で挑発したうえ、お前らはただのEXPだとやんわり言い放ってしまった手前、おれたちに第七陣の日時をずらしてくれとは言えない。
そんなわけで月萌国は、彼らを説得しなければならない状況に陥った。
そこで立ったのは、やはりというべきか。
軍と警察のトップを務める月萌最強のうさぎ剣士、トウヤ・シロガネだった。
校門前に築かれたバリケードの内側で、最強剣士たちは向かい合っていた。
かたや、群青と漆黒を基調とした、いつもの戦装束の青キュウビ。
かたや、雪白と薔薇色に彩られた、真新しい軍装の白うさぎ。
バリケードの半径はちょっとした駐車場ほどあるが、その程度ではかれらには狭すぎる――そう思わせるほどの闘気が渦巻いている。
二人とも、この上なく本気だ。
ここに割って入るつもりには、イツカもなれないらしい。みみしっぽの毛並みがブワッとなっている。
かくいうおれも、画面越しなのに震えが止まらない。
おれたちはすでに、第四覚醒を成し遂げている。戦えないわけはない、はずなのに。
『はいはーいみんな離れた離れたー!
ここはあたしたちで結界はっとくけど、万一があったらあぶないからねー?』
ピンクの日傘でふわふわニコニコ飛来してくるのはアカネさん。校門の内側にはミソラさんが、『銀河姫』の姿で竪琴を手にスタンバイしている。
いつものすこし不敵な笑顔で、ミソラさんが言う。
『ぶっちゃけ全面衝突になるのは、お互いに避けたい状況だよね。
かといって、もはや互いに言葉は尽きている。
となればここは卒業生同士、学園流で行こう。
決闘だ。戦うのは、ノゾミとトウヤ。
勝った者に皆が従う。それでどうかな?』
トウヤさんが小さくうなずく。
『もとより、そのつもりだ』
そうして、スラリ、腰から抜いた。
『月閃』――彼の二つ名ともなった銘刀を。
磨き抜かれた白刃が、つめたく陽光をはじく。
『来い!』
ノゾミお兄さんも一気に抜刀。
『青嵐』を正眼に構え、その力を解き放った。
スタートラインのある試合と違い、両者の距離は遠い。
刃先を合わせるどころか、キャッチボールにすら遠い間合いだ。
だがその程度、この二人にとってはないも同然。
瞬きの間に、壮絶な斬りあいが始まっていた。
結局ほぼほぼバトルしてないやん!(※禁句)
次回はがんばります! お楽しみに!!




