11-5 『クラッシュクラフターズ』のミルククエスト~イツカの場合~(1)
2019.12.30
しまった、すみません……
一か所、チアキとレンを間違えている部分がありましたので修正いたしました。
また、「週末」と何度か言っていますが、なんだかごちゃりそうなので「今週」「金曜日」「日曜」と分けました。
「よう、破産卿。
お前もわんこのお散歩かい?」
それは、火曜の放課後のこと。
俺たちは、やけに感じの悪い猫耳野郎に出くわした。
そいつはニヤニヤ笑ってレンをからかい、鼻を鳴らしてチアキを馬鹿にした。
ついでに隣に立った女子ふたりの肩を抱いて、勝ち誇った顔をしている。
おまけにその顔立ちはだいぶ整ってるし、装備も高級げ。ぶっちゃけ絵にかいたような悪役ぶりだ。
だがレンも負けちゃいない。
困ったように犬耳を垂らしたチアキをかばい、むしろそいつより悪党なカオと言いぐさで切り返す。
「は? ワンコ? 見えねえなァ。
ここにいるのはオレの相棒と、女二人に散歩させられてる哀れな金ヅル野郎だけだァ。
それともなんだ? そっちの女子二人はお前のワンコなのか?」
「おー、かわいいかわいいワンコちゃんよォ。
それもこれもどっかのマヌケどもが、ホイホイアイテム貢いでくれるおかげでな!」
抱き寄せられた女子たちがきゃははと笑う。
その時俺は気が付いた。
「あ、お前?
『困ってるクラフターとバディ戦で組む代わりアイテム余計に出させて、横流しして儲けてるハンター』って!
へー、どんな悪党面してんのかと思ったら、わりと普通なのな!」
「うっそっ、イツカナ――!!」
思わず口から出ると、なぜか女子ふたりが顔を赤くしてハンターと距離を取った。
なんだか左腕がもふあったかい。
見れば、カナタのもふ耳がもっふりと俺の腕を包んでいた。
どうやらモフモフ女子二人に囲まれた猫耳野郎に対抗してるっぽい。もふい。
「お、おまえら……チッ。
おいゴミカラス! 一体どうやって三ツ星タラしたのかわからねえが、あの程度で俺にかなうと思ったら大間違いだ!
今週の試合でそのちっぽけな自信、コナゴナにしてやるからな!」
「ハ、お前のな、ゴミネコ!!」
二人が悪党面で笑いあい、チアキは困ったように仲裁に入ろうとするが、そこにカナタが割って入った。
「はいはい、ここではじめると校則違反だよ?
金曜日に戦うんでしょ。そのときに全力見せてよ。
おれたち、ちゃんと見てるから。ね?」
綺麗な顔で穏やかに笑えば、俺以外の全員が見とれた。
うん、これでこいつ無自覚なのが怖い。
うさ耳しっぽもモフモフしいし、まさしく『歩く無自覚系チート』だ。
「さ、ふたりとも。打ち合わせ遅れるよ。
イツカもつがい探しはまた今度ね?」
「なんかひどっ?!」
チアキとレンの背を押しながら、カナタが放った一言に俺はなぜだかショックを受けた。
レンもあんぐり口を開けてる。きっとこれすげーひどいやつだ絶対。
「えっと、ねえカナタくん? いまのって……??」
「いやチアキ聞くな! たぶんこれ聞いちゃダメな奴だから!! お前は知らなくていいことだからっ!!」
「えーと、うん……」
ぽかんと問いかけたチアキをレンが必死になだめすかす。
猫耳ハンターは真っ赤になってるし、取り巻きの女子二人はなんか歓声上げてる。ぶっちゃけわけがわからない。
それでも、今はまずここを離れた方がいい。そう思った俺は、おとなしくカナタについていくことにしたのだった。
はたして角を曲がったとたん、チアキはふらりとくずおれてしまった。
「ありがと……もう、だいじょぶ……
ごめんね、みんな」
医務室のベッドの上、チアキははかない笑顔を見せた。
日曜に見せた明るい顔とは打って変わって、無理してることがはっきりわかるやつだ。
チアキはなぞのステータス低下症にかかっている。多分それが悪化したのだろう。
ミズキが優しく問う。
「チアキ、ちゃんと強化のポーション、飲んでる?」
「あっと、うん……あの、すこしだけ、残したけど……
ごめんね、その……。」
「チアキ!」
レンが怒ったような顔を見せる。
「お前、ポーション残すなって言ったじゃん。
ポーション代なら俺がなんとかするからって……」
「ごめん、ごめんねっ。
ただ、牛乳と一緒に飲むと、それでもだいぶいけるから、つい……」
「そこが不思議なんだよねー……。」
俺たち全員首をひねった。
『ティアブラ』にも、好物を食べることで回復するシステムは、ある。
しかしそれで回復するのは主にTPとBPで、チアキのようにステータスまでが向上するのはレアケース。
誰が食べてもステータスを上げられる食材もあるけれど、それこそレアアイテムなのだ。
そのとき、ソウヤがぽんと手を打つ。
「チアキさ、たしかミッドガルドでは羊飼ってたって言ったよな?
そんとき、羊のミルクとか飲んでた?」
「うん。毎日ログインするとまず一杯。乳しぼりしてまた一杯。
チーズやヨーグルトもつくって……夏はアイスクリームが最高なんだよねっ!
みんなにも飲ませてあげたいなあ。濃厚でまったりしてて、とにかくぎゅーっと自然の恵みが詰まってるの!!」
チアキがニッコニコの笑顔で答えると、ソウヤは瞬時に宣言した。
「行こう! ミッドガルド!
……あ、いやけっしてグルメハンター魂がうずいたからじゃないからなっ?!
あくまでそれが多分、原因とふんだからでっ……
ちなみに牧場の名前は?」
「エアリーのひつじ牧場!
マウントブランシェの奥めのとこにあるんだけれど……」
「おいまじか。」
俺もおもわず突っ込んだ。
『マウントブランシェ』。そこはAランクモンスターが徘徊する『魔の山』だ。
近づくだけでもかなりヤバいのに、奥めのとことかもはやSランク案件である。
「そんなとこで羊とか飼えるのか?」
「あっと、うん。そのあたりは、モンスターもそんなに強くない個体ばっかりだったし」
するとアスカがうんうんとうなずいた。
「なるほどなるほどー。牧場のあたりはなんかの聖域なのかもしれないね。
その影響で魔物は弱められ、そこにいたチアキや羊たちにはいい影響があった、と。
そーかー。聖地かー。
そーいうことならプリーストの俺たちは詣でなきゃいけないねー。
決して決してアイスが食べたいからじゃないよ?
か弱いプリーストが行くんなら護衛は必要だ。よーし、みんなで行こうかー!」
「おー!!」
翌日、俺たちはミッドガルドに降り立った。
あれ……なんか長くなるよかんが……?




