93-1 平行線の協議と、ひるがえる反旗!
予想に違わぬことだったが、月萌政府との協議は平行線に終わった。
彼らには、おれたちと講和をする意思も、必要性もまったくない。
国家間の戦争は、おれたちが終わらせた。よって、国防のためおれたちを取り込む必要もない。
ミッションを進めるには、なくされた戦争以外の方法で鍛錬を行うよりほかはない。
おれたちは戦争の代わりに己が身を差し出した、よってそれを果たすべき。
例え無抵抗となったとしても、月萌はおれたちをあくまで経験値の源として扱う……とまあ、オブラートをむけばこんなことを言っていた。
今更レベルの確認作業となった会談だったが、だからといってキレて暴れたりはしない。
慇懃に会見の礼を言い合い、静かに解散。
それぞれ迎えの機に乗り、フロートを離れたのだった。
「かんっぜんにナメられてるよな。
『魔王軍』が国じゃないったって、それでも俺たち人間だろうよ」
タカヤさんの操るエアビークルが離陸すると、待ちかねた様子でイツカがぶーたれた。
おれたちとの戦いがあらたな国家間戦争とならないよう、『魔王軍』は国家としての名乗りを上げていない。あくまで、あらゆる勢力から独立しているだけの、私的な集団である。
ソリステラスの手前明言はしないが、月萌におけるおれたちの扱いが正しく『魔王』であるのは、それを逆手にとられてのことであるといえた。
もちろんおれだって、ゆかいな訳がない。
「ソリステラスを対つくもえ戦に加えないって決まってる以上、相手取るのはおれたちだけ。
そのあともめたとしても、ステラさまは武力行使を避けようとするだろうから、殴り込んでくるのはソレアさまだけ。
そしてそうなったら、セレネさんが動く。
その考えで行けば、おれたちと講和をする必要性はないってことさ。
……でもなあ……」
ため息をつくと、耳によみがえることば。
イツカもため息とともに、それを口からこぼした。
「だなあ……
『私たちはこれまでもずっと戦ってきた。そしてこれからもそうです。私たちは平和など知らないし、求めてもいない』とかさ……」
その時、ネット上が大きくざわつくのを感じた。
始まったのだ、『あれ』が。
タカヤさんも察したのだろう、声をかけてくる。
「おっ、そろそろじゃん? のぞみんの決起宣言!」
「ですね!」
携帯用端末に触れて、いつものネット速報サイトをひらく。
と、戦装束の青キュウビはすでに、校門前でどんと仁王立ちしていた。
『ミライとミズキはいいといったが。
俺たちは正直、頭にきている!
けなげな子供たちに苦労を強いて、はいごめんなさいで済ませというのがいい大人のやり口か!
一言でいうなら――もうこんな無茶苦茶に付き合っていられるか!
高天原学園は、独立を宣言する!!』
学園長を務める『銀河姫』――ミソラさんとともに壇上に立ち、アキトやセナたちを引き連れて、ノゾミお兄さんは高天原に反旗を翻したのだった。
昨日『泣きたいわたしは猫を被る』を見たのですが太郎ちゃんがかわいすぎて悶えっぱなしでした。神。
次回、速攻で解決に向かうトウヤさんの予定です。
どうぞ、お楽しみに!




