92-4 プリティすぎる! 三海首脳会談!(2)
! 絵面がモッフモフ警報発令中 !
「ええ、それはもちろん」
おれは即時にうなずき、問い返した。
「そのことにより、おれたち人間どうしの戦いがきっぱりと終わるのであれば。
月萌国においてはいかがでしょうか。
おれたちは最大限の努力をする所存ですし、そちらもそうでしょう。
そのうえでそれは、現実的に可能なことでしょうか、タカシロさん」
「可能ですな。
――これを」
うさぎのぬいぐるみ姿のリュウジ氏は、一体どうやってか、重々しくうなずいた。
さらにはもふもふの手で、すっとデジタルの書状を取り出した。
くそう、なんなんだこれ。たしかに若き日のリュウジ氏の夢は月に行くこと、けも装備はうさぎだって情報で知っちゃいるけれど、こんなのみたらギャップ可愛さにほだされてしまいそうになる。
まあそれはいいんだ。ひとつ深く呼吸して萌えをよそにやり、マリーさん経由で書状を受け取る。
その間にもリュウジ氏は言葉を続ける――半ばおれたちに、半ばはパレーナさんに向けて。
「ソリス領ではすでに、貴殿らを敵にしないとの合意が形成されていると聞く。
それは領のすべてのものが信を置く、マザー・ソレアが現身との戦いの結果によるものと」
「さよう。われらが女神の認めしものを打倒し、その意を曲げるほどの力量を有する者は、ソリスの地にはないといってよい」
「それと同様のことは、月萌の地においても言えるのでね。
とはいえ、われらがマザーを最前線に出すことは致しかねる。
理由は、――とうにご存じかと」
かつてと同じ、かすかに嘲弄するような調子。赤いリボンを首に結んだ黒子猫は小さく片耳を寝かせた。
ツクモエマザーの現身たるセレネさんは、こいつと愛し合う仲だ。
それでも、それをこらえて務めを果たしている。
人々の自由のために。『秘密主義』に、『大神意』に依りたい者たちの、『最後の砦』であるために。
だからこそ、イツカは口を挟まない。『セレネをバカにすんな!』などと感情をあらわにすれば、リュウジ氏の言葉を裏書きすることになりかねないからだ。
こういうときは、かわいくないうさちゃんこと、おれの出番だ。
「月萌国においては、『この者たち』のほうがマザーよりも信を集めているだろうと?
『アメリカンジョーク』ですか、『月萌国代表』」
回ってきた書状を掲げて見せて、口元だけで笑った。
ぬいぐるみの目からあふれる視線と、口から出る声とことばの温度に、さりげなくも細心の調整を加えながら。
対してリュウジ氏は、食えぬ笑みを浮かべる。
ぬいぐるみの顔立ちの可愛さを損なわずにそうできるのがどうしてなのか、心底謎だけど。
「そのあたりもよくわかっておいでと思われますが。
彼らとの交渉を制すれば、第七陣を無血に終わらせるに充分なコンセンサスが得られましょう。
私から示せることは、それだけです」
リュウジ氏はそれだけ言い残すと慇懃に一礼、ログアウトしていった。
残された書状には簡潔にこれだけしたためられていた。
――明日夜九時、洋上特設フロートにて、我らが使者らと会われたし、と。
お休みありがとうございました!
もう今までの一生分くらいにゃんこ撫でてきました。
モフ分のおすそ分けとなれば幸いです。
次回、掲示板が不穏な空気に包まれる予定です。
どうぞ、お楽しみに!




