Bonus Track_92-1 ちょびっとさびしい? ミライ、ぐっと成長しました! ~ミズキの場合~
今日もまた一つ、たくましくなるミライです。
2022.09.24
修正しましたヌフ
実習が毎日一時間→実習が一時間でも
「うそだろーまじかー!!」
「ふざけんなよ俺降格なっちまうわ――!!」
高天原学園が果たすべき『戦時協力活動』の内容が発表されると、学内には叫び声が響いた。
なぜなら、月のお給料や闘技場の投げ銭は、星数に応じて最大二割が天引きされることになってしまったからだ。
「おいあわてんな、続き見ろ」
「へ? 部屋代がその分減額に…………
まじかミソラちゃん先生神――!!」
「一生ついてくぜミソラちゃんせんせ――!!」
これにはミソラ先生が対策をしてくれて、部屋代をそのぶん減額することで、直接の負担は抑えられる形になった。
けれど、さらに何かあったら、『うさねこ』などの生徒団体というクッションがない場合はまたすぐピンチになる。
気になる団体にあわてて入る生徒がいる一方で、『俺は降格になっても孤高を貫くッ!』という者もいた。
もちろん無理強いなんかできない。どうしてもまずそうなら手を差し伸べると決め、見守ることになった。
もちろん、負担は収入の拠出だけではない。
原則として、月曜、水曜の放課後と、土曜日の午前に、追加の課外活動が求められるようになった。
クラフターはアイテムクラフト。
ハンターは、軍のトレーナーを講師としてのバトル訓練。
そしてプリーストは、医療・救助活動用の神聖魔法の充填と、バトル訓練で出たダメージの回復を行う。
内容としては普段の実習とほぼ同じといえばそうだが、そうでなくとも忙しい学園生活、実習が一時間でも増えるのはそれなり厳しいものがある。
ただ俺の場合は、軍との懸け橋の役目があり、それが課外活動とみなされると言われたけれど。
ミソラ先生は俺たちに助言をくれた。
「ミズキ。正直きついと思うけれど、課外活動にはいったほうがいい。
政府側は今後、確実にノルマを引き上げてくる。そうしてみんながもっとつらくなった時、もし君がそこにいなければ、そこでヘイトが向けられる――君と、そして『スターズエイド財団』に。
彼らはいまだに、財団についてあまりよく思っていないからね。君が体制側と癒着している、そうして自分だけ楽をしているというように、学内の生徒たちに吹き込んでくる。
それを防ぐためにも、今はお願い。わたしもできる限りのサポートをするから」
俺のこたえは、さいしょからひとつだ。
「はい。俺も、それを考えてました。
活動は、プリーストのほうで行きます。
そうすれば、ミライとすこしでも一緒にいられますから」
「ありがとミズキ。おれ、すっごくうれしいよ!」
俺の隣でミライは、にっこりと笑ってくれた。
それでも、こんなことを言ってくれた。
「でも、ときどきはハンターのほうにも行ってあげて。
ハンターの子たちも、ミズキとご一緒できたほうがいいもの。
ミズキがいっしょにがんばってるとこ見れば、うれしいし、変な誤解もしないですむし……でしょ?」
その言葉は、いつもみたくけなげなものだけど……
なんというか、その声には、強さがあふれてた。
ふと、気が付いた。
すこし前までなら、こんな時、ミライは不安を隠して俺の袖を握ってた。
でも、今のミライは。
ミソラ先生はうれしそうに笑ってミライの肩に優しく手を置く。
「えらいよミライ、ぐっと成長したね!」
「えへへっ。
イツカもカナタも、海の向こうで魔王様としてがんばってるんだもの。おれももっともっと、強くならなきゃ!
それにね。思えるようになったんだ。『だいじょぶだ』って。
お兄ちゃんにも、イツカやカナタにも……いきなり離れることはあったけど、また会えた。
だからミズキとちょっとぐらい離れたって、ぜったいまた会えるんだ、だいじょぶなんだって、……
むしろ、ミズキがこまってたら、おれがたすけに行くんだって、今は思うの!
ミズキ、必要ならおれ、政府や軍にも一緒に行くからね。ミズキの背中は、おれがまもるから!」
ちょっと、びっくりして。
それから、じわんとうれしくて。
「ありがとう、頼りにしてる」
そうしておれは、握手の手を差し出したのだった。
なおノゾミお兄ちゃんは後ろで不自然に眼鏡を直してました。
次回、ダンサーズとしろくろの予定です。
どうぞ、お楽しみに!




