92-1 まさかの寝起き訪問、そして女神の伝言!
おれにとって、白リボンのおれはなんというか、ふたごの兄弟のようなかんじである。
つまりは、家族。大切な仲間。
それは、白イツカもおんなじようなもので。
その晴れ舞台の間、おれとイツカはどうしていたかというと……
おもいっきり、爆睡していた。
ほんとのことをいえば、リアタイで見たかった。
けれど、おれたち『赤リボン組』には、外せないことがある。
それは、この後。白リボンたちとタクマが休んでいる間に、起きて動いていることだ。
おれたち『魔王』とタクマ・エルマーは魔王軍における『守護神』的存在になっている。
そのため、スケジュールを調整し、二名程度は常に稼働している状態を保つことになっている。
それがたとえ、ビーチで遊んだりご飯を食べてたりでも、すぐ立ち上がり、戦える状態にある。そのことが、島を守る抑止力となるのだ。
調印式とライブステージがおわったら、週明けに控えている『三海首脳会談』の準備がある。
主催はステラ領ということで、段取りはステラでやってくれている。
会場は、安全面を考慮しオンライン。
よっておれたちのするべきことは、着ていくものや話すことの用意だけ。
まあぶっちゃけほぼほぼ終わっているのだけれど、コンディションを整えることも大事な準備だ。
たのしいライブの光景が、ちらっと夢をよぎる。
レモンさんが自信たっぷりに『信じて』といってくれた言葉が、眠りのさなかに深く響いて…………
「おはよう! ほーら起きて起きて!
早く起きなきゃモフモフしちゃうぞー?」
なぜかモーニングコールにかわった。
なんだ、夢か。そう思った、そのときだった。
「もうお姉さまっ。
ゆっくりさせてあげましょう。おふたりは準備でお疲れなのですわ?」
まさかの声に一気に目が覚めた。
がばっと身を起こせば、まさかまさかのライムがいた。
「ラ、ライム?!!!」
「おはようございますわ、カナタさん」
「おーおー、すごい起きっぷり♪ おねーさんやけちゃうなー?」
「えっ、えっレモンさん?! すみませ……っていうかいったいなんでここにいるんですか――?!」
レモンさんにからかわれてあわてて謝りかけたおれだけど、いやそもそもなんでふたりがここに。いちおう寝室にカギはかけてるはずなんだけど!
「~♪」
そのとき、わざとらしく響いてくる口笛。
みれば部屋の隅でライカ分体が、頭の後ろで手を組んでそっぽむいてニヤニヤ口笛拭いている。
ほほう、おまえか。そういうつもりならおれにも考えがある。
おれはニッコリわらってやつを指さした。
「レモンさーん、こいつすきなだけくすぐり倒していいですよー?」
「えっいいの? それじゃあさっそくー」
「へっちょっレモンちゃん? うっひゃあああ!!」
ドタバタとたのしいおっかけっこが始まった。
ライムはしばらく放置することに決めたようで、ごめんなさいと謝ってくれた。
「眠っていらっしゃるだろうし、悪いかと思ったのですけれど……
おふたりにも一目、お会いしておきたくて。
お目覚めを待っておりましたら、ライカさんが開けてくださったのですわ」
「そういうことだったら、うん。
気にしないで。そもそも、怒ってないから。
ライムに会えたの、その。すごく、うれしいし」
「カナタさん……」
そっと手を取り合うおれたちのよこで、イツカはねたふりをしてくれている。ぶっちゃけ、ぴくぴくしているネコミミでバレバレだ。
「セレネさんも、お気にかけておりましたわ。
何もしてやれない私をゆるしてほしい、と言っておりました」
「……ほかに、なんか。言ってたか」
ライムがセレネさんの話を始めれば、イツカは引っ込みつかないのだろう。その体勢のまま問いかけてきた。
おれはそっと、洗面所に移動した。
頭が痛い……
早く夏終わって~と念じる今日この頃。
次回、月萌サイドの予定です。
どうぞ、お楽しみに!




