91-7 未来信じて! 素敵な調印式と、お祭り騒ぎのライブステージ! ~白リボンのカナタの場合~
調印式には、アルム島の素材とステラの素材、双方で作られたアイテムがふんだんに使われた。
調印用の証書や、それをおさめるホルダー。サインをするペンと、ペンにつけるインク。
もちろんそれを置いた机、会場を飾る花細工だってそうだ。
デザインも、双方のデザイナーの協議で決めて、制作も、分担して行った。
あるいは手作業で。あるいは、錬成を用いて。
いつもいそがしいニノも、『ここは正念場だからな!』と、最優先でデザインをやってくれた。
そのときに大いに役に立ったのが、彼自身の新たな力と、イズミのサポートだった。
いくつかのものについてはイズミが素案を出して、それをニノが『翻訳』し、まとめている。
ニノの作品を最も見てきて、なおかつ、冷静に求められるラインを割り出せるイズミの着想は的確で、ニノは『おまえマジ天才――! 俺以上に天才だろおまえ――!!』と感動しまくりだった。
もっともその『生スケッチ』はニノにしか『解読』できず、イズミ自身のクラフトレベルは、控えめにいってゼロ。お互いあってのナイスデザインである。
そんなわけで、調印式はひたすら心地よく進んだ。
お持ち帰りしたいくらいいい感じの机で、書き心地なめらかにサインを終えて、証書を掲げて見せて、マリーさんとしっかり握手をして、写真を撮られて。
いったん退場、一休みしたら、ステージ衣装にチェンジ。
一番手をつとめるサクヤさんを舞台袖から見守って、愛を感じる名演奏に目いっぱい拍手したら、つぎはおれたちの番だ。
ここは、ノリノリでいくターン。あえてイツカの勢いに乗っかるかんじで駆け出して、スロットル全開でとばしていった。
つづくは『おこんがー!』。
明るくかわいく、にぎやかにキメれば、会場内はすっかりホットに。
そこへふたりの直の先輩ともいえる『しろくろウィングス』からの応援メッセージが届けば、前半が調印式だったことなんかもう完全に吹っ飛んだ。
そのノリのままで飛び出す『うさもふミライ』。
世界的に大人気のぴょんぴょんダンスで、客席も一緒にダンスダンス。
さすがにミズキとミライは画面越しだったけれど、そんなの関係なしの盛り上がりになった。
一度休憩をはさみ、第二部の最初をつとめたのは『アオゾラミッツ』。
いつものしっとりとしたアカペラは、どこかおとなの雰囲気で、会場全体がうっとりと酔いしれた……ところでのサプライズ。
なんと、レモンさんご本人の登場である。
レモンさんはぱっとあかるいイエローの衣装で、ぱちんとウインクを飛ばすと、おれとイツカを両手でぎゅっと抱えて宣言した。
「知っての通り、いま月萌は戦時体制を敷いてる。
けれどね、あたしだって月萌最強アイドルだ。
愛するみんなに歌と元気を届けるためだったら、どんなとこだって飛び込んでくよっ!
たとえそこが、戦場の真っただ中だとしてもね!
さあ、歌おう。みんなで、楽しくっ!」
こんなこともあろうかと、今回はちゃんと練習してある。
突発巻き込まれという形で一緒に歌うことになったレモンさんの最大必殺技、ならぬ超メガヒット曲『キミト・ボクト~プロジェクト・モンスターサーガ』だったけれど、けっして恥ずかしくない歌いあがりにすることができたのだった。
レモンさんのすごいところは、その吸引力だ。
彼女のパフォーマンスは、おれたちなんかまだまだ及びもつかないくらいすごい。
なのに、心から楽しそうに歌い踊る様子を見ていると、自然に体が動いてしまう。招かれればそばにいって、たとえ下手でも声を合わせてしまう。
音程なんか外したって、ダンスとちって転んでしまったって、レモンさんはすべてを温かい笑いで包んで、楽しい遊びに変えてしまう。
なんとあの内気なサクヤさんまでがステージに出てきたのだから、そのミラクルパワーぶりがわかるというものだ。
出演アイドル総出、さらにはシューさんマリーさんまでが加わり、文字通りのお祭り騒ぎ。
そうしたら、琴を奏でるサクヤさんを中心にあつまって、かわいい童謡でフィナーレだ。
衣装にあしらったミニストラップもいっしょに、体を揺らして歌ったら、心配事もとんでった。
これからおれたちは、月萌の陰謀に立ち向かわなきゃならないけれど。
「だいじょぶ、ダイジョブだよ。
きみたちと、きみたちの友達を信じて!」
レモンさんに自信たっぷりにそう言ってもらったら、おなかの底から素直に「はい!」が飛び出したのだった。
イズミのクラフトレベルは測定不能です。スカウターがふっとびます。
次回、「ともだち」が画策しているところの予定です!
どうぞ、お楽しみに!




