Bonus Track_91-6 奏でたい、大きな愛のハーモニー! メイキング・オブ・合同ライブ! 〜サクヤの場合〜
いっきに合同ライブです。
わたしは、琴がすきだ。
思い切り奏でれば、嫌なことも忘れる。
すてきなひととも、出逢わせてくれる。
シグルドさまがわたしに声をかけてくださったのは、琴の演奏を聴いてだった。
そして、こんどはイツカさまが、いっしょにライブをやろうと言ってくれた。
知らないひとを前にするとひどく緊張してしまうわたしだけれど、音楽を通してだったら、大丈夫。
魔王軍のアイドルたちとは、すぐに気安くなってしまった。
だから、ほんとならみんなみんなの曲とセッションしたかった。
でも、それは難しいことともわかっていた。
編曲に、ステージ構成に、練習に。もちろんわたし自身の演目もきちんと仕上げなければならない。時間が圧倒的に足りないのだ。
そこに光明をもたらしたのは、カナタさんだった。
『どうせならさ。全員で一つの曲をやろうよ。
みんなの連帯を示すにも、そのほうがいいと思うんだ。
曲も、みんなが知ってる、歌いやすい曲にして。
会場の人たちや、オンラインで見てる人たちにも歌ってもらえるように……』
そうして、全員セッションの曲は、ソリステラスでも月萌でも有名な、動物たちがたくさん出てくるたのしい童謡になった。
子どもたちの施設に行くときは、いつもこれを弾いていた。
なにをかくそう、わたしもこの歌が大好きで。
だから、今回の練習は、楽しくてたまらなかった。
みんなでの練習の時は、これまでの人生で一番笑ったかもしれない。
よかった、と思う。こんなひとたちと、戦争をせずに済んで。
悪いことをしてしまったな、と思う。開戦派として、イツカさまたちをワナにかけようとしたりして。
だから、謝った。
イツカさまとふたりになったとき、勇気を出して。
『もう気にすんなって。
サクヤさ、あんとき――ベニーんちで戦った時、俺に猶予くれてただろ。
もっと荒っぽくしようとすりゃ、いくらでもできてたはずなのにさ。
だから俺も、ここにいるわけだし。
第三覚醒も、できたしさ!
だからモーマンタイ! なっ!』
イツカさまは太陽のような笑顔でそう言って、わたしの頭をなでてくれた。
いいえ、『猶予』をくれたのは、この方のほう。
目の前でおぼれたふりをした時も、心配して助けてくれた。
あんなシチュエーションだったら、ワナを疑ってしかるべきなのに、本気で心配してくれて。
それを利用して水牢に閉じ込めた時だって、最後まで優しさを忘れなかった。
第三覚醒を成し遂げ、水牢を破って飛び出すときに、この方は言ってくれたのだ。
離れろサクヤ、と。
第三覚醒技に巻き込まないために。
わたしはこのひとをだましたばかりなのに。斬られても、文句など言えなかったのに。
このひとは、おっきくてあったかくて、とても優しい。
シグルドさまを愛してなかったら、恋をしてしまったかもしれない。
だからいまは、このひとのために。
このひとの夢のために。このひとが愛するひとたちのために。
このひとたちが大切にするものを、ともにまもるために。
奏でよう。
大きな愛のメロディを。
スポットライトを浴びながら、わたしは琴の弦にそっと指を触れた。
Bonus Track_65-3の『あいつの、小さな優しさ』というのはこれのことでございます。
どんだけ前だよ(セルフ突っ込み)っ!
まだ回収してないワードも実はあるんですが、それはいずれです。
回収し忘れただけともいいますが(爆)今となっては引っ張ることになってよかったかも、です。
次回、調印式~ライブのシメでございます。
どうぞ、お楽しみに!




