Bonus Track_91-3 あともうひとがんばり! 月萌軍、学園再訪! ~ミライの場合~
その翌日、こんどは政府の人たちがきた。
おれたち、主たる生徒団体のリーダーは学長室に集められた。
『スターズエイド財団』『騎士団』の団長として、ミズキとおれ。
『うさねこ』代表として、アキトとセナ。
『にじいろ』『ガーデン』総括として、チカさんとヤヨイさん。
きたる『魔王軍』との本土決戦に向け、傘下の生徒たちをとりまとめること。
その様子を毎日報告に上がり、指示を仰ぐ役を担ってほしいといわれておれたちは顔を見合わせた。
最初に声を上げたのはアキトだった。
「いや、待ってもらえませんか。
そんな毎日ちょこちょこ行ったり来たりしてたら、みんなと満足に話もできない。
ちゃんと顔見て話して、それでこそ様子もわかるってもんですよ!」
「同じことを我々も君たちに求めているのだ。
君たちと顔を合わせ話をすることで、学園の実情を把握しより良き協力関係を構築して、来たるべき戦いを無事に制したいのだ」
けれどもそれは、同じ論法でさらっと返されてしまう。
どうしよう、という雰囲気の中、ミズキが微笑んで進み出た。
「でしたら俺が、総代表として取りまとめの上、参りましょう。
みなさんはアキトやセナ、チカさんやヤヨイさん、そしてミライをよくご存知でありませんし、かれらもあなた方をよく知らない。
その点俺のことは皆さんよくご存知ですし、俺も皆さんの多くを存じ上げております。
顔を合わせて話をし、十二分に実情を共有しうる生徒は、現状この俺をおいて他にありません。
決戦は早くて6日後。いちから関係を構築しているような暇はもはや、誰にもありませんから」
自信たっぷりに言い切る姿は、たよれる男っぷりにあふれてて、思わずみとれちゃうカッコよさだ。
「ふむ、さすがは御三家が一『クゼノイン』の次期当主、現実的かつ前向きだ。
いいですね、ミソラ・ハヅキ学長。これは生徒本人が進んで申し出てくれた、彼自身の意志です」
「わたしたちは生徒の意志を重んじます。が、思考停止して言いなりになることはありません。
彼にはその現状で必要な学びの時間をきちんと過ごしてもらいます。そうなるべく全力を尽くすのが、新世代の学び舎を任されしわたしたちの責務です」
そしてミソラさんも毅然としててすっごくかっこいい。
そばに控えるお兄ちゃんは、ポーカーフェースで隠してるけど誇らしげだ。
「もちろん俺はいまだ学ぶ身。ここでできる限りを吸収し、きちんと卒業したいです。
ですから、報告に上がるのは原則として放課後、もしくは始業前とさせていただきたく考えております。
もしくは。……俺はクゼノインの嫡子として、αの流儀を幼時より修めてまいりました。それを勘案して四ツ星講習を満了扱いとしていただければ、動ける時間も増えるかと」
ミズキはそっと下がって、優しく俺の背に手を添えてくれた。
おれはミズキのバディだけど、四ツ星講習はさすがにブッチできない。つまりミズキが報告に行っている間、ひとりで講習を受けなきゃならない。
でも。
「だいじょぶだよミズキ。おれひとりでもがんばれるよ!
ミズキがいってる間は、おれにまかせてっ!」
そう、おれはミズキの相棒なのだ。
ミズキが安心できるよう、おれもがんばるのだ。
そう伝えたら、チカさんとヤヨイさんが励ましてくれた。
「大丈夫よミライくん!」
「ほら、わたしたちも講習一緒だし」
「もしわかんないとこあったら、俺たちも教えるからな!」
セナもちょっとうるうるしながらおれの手を握ってくれて、アキトも明るい瞳でミズキとがっつり握手。
「よし。じゃあ、もし騎士団でなんかあっても、俺たちで助ける!
俺たちの分までよろしく頼む、ミズキ」
「まかせて。俺のいない間よろしくね、アキト」
そんなかんじで、ミズキに放課後の使者を頼んで、学内のことをおれたちがしっかりまとめる、という体制がととのったのだった。
もちろん、あの場でバタバタきまったわけじゃない。
すでにどう来るかのパターンをミソラさんとお兄ちゃんが予測していて、ここでいいかんじにまとまるよう、おれたちも事前にかるく打ち合わせていたのだ。
政府の人にとっても、これが予測された落としどころだったのだろう。話はすんなりまとまった。
これはイツカとカナタと、ふたりについてった仲間たちに牙を向けるための体制づくり。
だからほんとのことをいうと、協力なんてしたくない。
でも、ここにのこってる仲間たちを支える。それも、おれたちの決めたことだから。
がんばろう。あと、もうすこし。
『正義の魔王』たちがここにやってきて、カッコよく勝ってくれる、その日まで。
ほんと『必殺・投稿しようとするとWi-Fiキレる』攻撃やめていただきたい(#^ω^)
次回、月萌中枢部の様子をお届けする予定です。
どうぞ、お楽しみに!




