91-3 正念場の裏側のミッション・インポッシブル!
おやすみありがとうございました*^^*
にゃんこに会ってパワーがみなぎりました♪
楽しいながらもガチにやる大規模バトルの総括と、新型結界の大々的なおひろめ。
あるいは、一国を統べる女神とのハンデなしバトル。
そのあとに衣装合わせとリハなんて、普通にしんどい。
それでも白リボンのおれたちは『ここが正念場だから!』と、ポーション一気飲みして行った。
こんなの見てしまったら、こっちも全力出す気になるってもの。
おれたちのできることは、全部ばっちりやっておこう。
まずは、ステラとの調印式の準備。
ステラ杯を開催したのと同じ場所に浮かべたフロートに上陸して、各種チェックを行った。
月萌を刺激しすぎないため、そしてなにより参加者負担を減らすため式そのものは極力シンプルなものにしているが、開会・閉会のあいさつと代表者入退場、そしてライブへのつなぎは絶対外せない。
その手順を確認したら、おれたちが白リボンズの代理をしての第一回リハーサル。
時間配分に無理がないことや、イツカの野生の勘フル活用で警備の穴がないのを確かめたら、いったん一休み。
ほぼ同じメンツで、国際首脳会談の下準備に入った。
まずはカードの確認だ。
ステラ領からの調整官である、レムくんが言うには。
「ソリステラスは互いに手を取り合う一つの国。それを前提としてあえて言います。
ステラ領としては、『ステラ杯』で勝ち取られた願いを叶えるのが最優先の目標です。
すなわちイツカさん、カナタさんと戦わないため『魔王軍』と和平を結び、それを良い形で維持していくこと。
しかし、月萌を敵として戦うつもりはありません。
もちろん、ソリス領と敵対するつもりも。
よって、中立の立場から和平を推進するために、こんどの首脳会談を主催するというわけです。
同じ事は、今月萌に渡っている外交使節団も伝えています」
「エイドリアンさんたちだよな。んじゃ、だいじょぶだ!」
これはイツカの直感に頼るまでもなく、大丈夫と思えるところだ。
レムくんのおじであるエイドリアンさんは、押し出しも実力も、人柄も申し分のない方である。
さらにいうなら『魔王の味方』でもないし、ステラ杯において便宜を図ったわけでもない。そちらのほうは大丈夫だろうと思われた。
ついで、ソリスからの調整役をつとめるアークさんが述べるには。
「ソリス領としては、ソレアさまが力を認めた存在を『敵』とする気はもはやありません。
その命とあらば、盟友としてでも尖兵としてでも戦う所存です――もちろん、個人として好きにふるまうものはおりますが」
小さくやわらかく苦笑する顔には、同胞への優しさがあふれている。
ソリスの民はとにかくフリーダムだ。それは、アークさんご夫妻もだ。
もちろん、そこがいいといえるのだけれど。
つづいて『魔王軍』代表としておれが所信を述べた。
「ご存じのとおりおれたち『魔王軍』は、ミッション『エインヘリアル』の中止、もしくは変形をなしとげる――すなわち『グランドマザー』によってこの世界の住民に強いられる戦いをなくすため行動しています。
今行われている『ウォーゲーム』は、あくまでその道を切り開くために行っているものであり、誰かがおれたちを敵として攻めてこないならば、続けることはありません。
それでも、今後も敵対行為を続けてくるというならば、黙っているつもりはない、ということはハッキリ伝える所存です。
ただ、今後月萌の領地における戦いで、ソリス軍やステラ軍を伴うことはしないでおきたいと考えています。
孤立を意識させれば、それだけ月萌は硬化します。
この島を守ってもらえるひとたちも必要ですから。
第七陣、おれたちが月萌に遠征すれば、月萌はその背後をついて島に手勢を向けてくるはずですので」
月萌の現状を肌で知る、『かもめ隊』リーダーのユリさんがうなずく。
「ええ。月萌は確実に仕掛けてくるでしょう。
小国といえどもひとつの国。その軍の総力は、失礼ながら、われらが魔王軍よりもいまだに上回っております。本国が攻められれば、もはや遠慮はないでしょう」
「月萌国内のラウンドたちやチェシャからの報告でも、活発に準備が進んでいる様子です。
『赤竜管理派』の重鎮からも辞任、辞職は相次いでいますが、『立国党』の最大与党の座は揺るいでおらず、『緑の大地』においても、この『ウォーゲーム』を国費にと考えている様子。
高天原の市民の間ではイツカさん、カナタさんの人気が着々と高まっているようですし、『風見の党』『小さな芽吹きの党』も尽力していますが、それが彼らの動きに影響を与えている様子はみられず。
結論として、月萌が講話を考えている気配はくみとれません」
『ナイツオブラウンド』ことアンドロイドエージェント部隊のリーダーであるトニーさんが、月萌内のエージェントからの報告からの結論を伝えてくれた。
「やっぱ、だよな」
「だね……」
残念だが、予想にたがわぬ予測だった。
管理派は、おれたちを憎み、これを好機に経験値としたい。
『グランドマザー』と管理派をつなぐ男は、ミッションの早期進行のために、戦争と死を受けいれてくれとおれたちに言った。
そしてなにより、高天原の住人のほとんどはまだ、おれたちを狩るべき敵と認識している。
さらにはおれたちが『月萌杯』で願った『Ω制廃止』が与えた経済的損失を、この『ウォーゲームイベント』で回収したい向きもあるとくれば、いかにハジメさんたち良心的な人たちが懸命に頑張ってくれたとしても……である。
これはもう、セレネさんがエンブレムを受け取ろうと受け取るまいと、どうにかなるレベルの話じゃなかった。
それでも、くじけるわけにはいかないし、講和の可能性を投げだすこともまたしてはいけないことだった。
できるかぎりで、その可能性を探る。それが今日の議題であった。
ミッションインポッシブルや……
作者もない頭で全力で考えるところです。
次回、ふたたびミライサイドです。
どうぞ、お楽しみに!




