Bonus Track_91-2 近づく嵐! 月萌軍、学園訪問! ~ノゾミの場合~
それはまだ公開動画も終わりきってない時分だった。
校門で張っていれば案の定、軍からの人間たちが来た。
あまり知らぬ顔。これみよがしの階級章。これでずんずん入ってきて俺の可愛い弟たちを拉致るつもりだったのか。
カチンと来たが、俺も大人だ。
しばし言い合ってみせてから、ミソラに連絡。丁重に学長室へと通した。
奴らがいうには、来たるべき月萌領での決戦、その勝利のため、学園生を総動員する。
五ツ星、四ツ星の生徒は出撃、もしくは後方支援に。三ツ星以下は必要に応じ支援に回す。
これは午後、実習の枠を優先的に充てるが、必要ならば通常授業を停止、業務につかせることとする。
また、生徒らを取りまとめる学生団体の長を務める生徒たちに関しては、星数にかかわらず臨時の軍属とし、軍施設にて軍務につかせると。
もともと学園での実習は、程度の差はあれ軍務補助。
国事や有事に際しては、学園生が警備や支援、手伝いに回っていた。
しかし。
「学生団体の長にも、まだ義務教育すら終えていない者はいるのです。
いつ終わるかわからぬ戦いのために、学ぶ権利を取り上げる。そのようなことは、若者とその未来を育む学び舎の主としては承服しかねることです」
ミソラがきっぱりと言えば、学長室に集まった俺たち教員は全員うなずいた。
「『魔王軍』ですら守った権利を取り上げ、生徒を連れていくというならば。その理由は生徒を預けてくださった方々にしっかりと説明できねばなりません。
それは可能なことですか?
うやむやにすまそうとすれば『視聴者』が納得しませんよ?」
ミソラがいつになく凄みを利かせて微笑めば、彼らは帰っていった。
これまで、学園の立場は弱かった。カネを出している理事会、そこで多数を占める管理派のいいなりで――前学長のころまではむしろやつらにおもねって、守りはぐくむべき生徒たちを犠牲にしてきた。
だが、ルカとルナ、そしてイツカとカナタから始まった『学園公認アイドルバトラー』の存在が、その力関係をひっくり返した。
そしてその体制は、ミズキが立ち上げた『スターズエイド財団』によって盤石のものとなった。
高天原学園は、俺たちはもう、誰の言いなりにもならずに済む。それだけの力をすでに蓄えているのだ。
それでもこの訪問が、『もっとアタマのキレるやつがたくらんだ、単なる手始め』に過ぎないことはわかっていた。
これで俺たちが生徒を引き渡すはずなどない。そのことは自明。
万一確保に成功したとして、無理に関係先を吐かせようなどとすれば第七陣を前に月萌軍は世の支持を失い、この『ウォーゲーム』の敗者となる。
それよりはあえて一度目の訪問を失敗し、次の使者が来るまでの間、ミライたちの動向をチェック。イツカやカナタ、その関係者と接触するところや、それに使われる場所をおさえようというのだ。
だが俺たちはすでに。第六陣のまえからそれを警戒していた。
完全プライベートのビーチパーティーののちは、ミライたちを島には行かせていない。イザヤやユウが島に『赴任した』時も、国立研究所が設けている転送装置を島側の承諾のもとに使用した。
そしてここから事態が動くまでは、ミライたちには学内でおとなしくしてもらうことになっている。
オンラインでの共同ライブの予定はまだあり、間接的とはいえ、その練習やリハでは『顔を合わせる』ことができるのは幸いだ。
大丈夫。準備は、整っている。
きたるべき月萌決戦は、魔王軍が制する――俺たちが、そうさせるのだ。
翌日、政府からの人間が学園に来た。
『この国のトップが住まう、またその候補者を輩出する高天原の住人として、月萌国を守る役を果たしてほしい』と。
夏バテでここのところ早く寝てしまいますが、それでもしんどいです。マジ早く終われ夏。
皆様に不義理ばっかで、まことに申し訳ない限りです……
こんなときは猫ちゃん画像を見て命をつなぐしかねえっ←
次回、魔王島にカメラ戻ります(レポーター風)。
ライブ打ち合わせと、この戦いで最大の痛手を被った人にうれしい再会がある予定です。
どうぞ、お楽しみに!




