11-2 高天原学園第一寮の現実と希望!
2020.01.27
チーム名
誤『クランバード』→正『クランレパード』でした。すみませんでした!
「おーいカナタ、ちょっといっかー?」
「あっ俺も俺も!!」
「どうしたの? もしかして……」
「おう!」
「じつは俺たちもさ、うさネコ入れてもらえないかなって……」
「あのさっ、体験入会とかってできる?」
「バディのマッチングだけでも相談いいんでしょ? 出来たらお願いしたいなーって……」
月曜を迎えれば、忙しさは増した。
『クランレパード』『クラッシュクラフターズ』の化けっぷりをみた生徒たちが『ウサうさネコかみ(仮)』に加入、もしくはバディマッチングなどの相談にと押し寄せたのだ。
アスカやハヤトはもちろん、創始者一味であるおれやイツカも、たくさんの生徒たちから声をかけられた。
「連絡先送るよ。時間取れるときに気軽にメールして。
サイトも頑張って作ったから、見てくれると嬉しいな。
そちらで解決できることもあるかもだから」
そのたびおれは、にっこり笑って携帯用端末を差し出す。
アスカはこうなることを見越して、あらかじめ専用サイトとメール相談窓口を開設していたのだ。
だから声をかけられたおれたちがすることは、単距離通信で電子チラシをわたすことだけ。
しかしなぜか、それだけで顔を赤らめている生徒が何人もいた。不思議である。
ちなみに、リアルの連盟本部は開設していない。
あまりに人が押し寄せると、それだけでトラブルが起きるからだ。
電子チラシに入れた『連絡先』も一つではなく、二十くらいに分けている。
このなかのどれかにメール爆弾攻撃などがあった場合、すぐにそこを閉鎖して被害を抑えつつ、流出元を割り出して対処するためだ。
そのへんはさすがハッカー、抜かりはない。
メールを受け取った後の段階で真価を発揮したのが、シオンの情報処理能力だ。
普段のシオンはひたすら可愛いが、もともとはミッドガルドで情報屋として名を成した、異色の頭脳派プレイヤー。
問い合わせ業務を効率化するメールフォームやその処理システムを作成してくれたのだが、もはや「すごい」としか言いようのない出来だ。
具体的に、どのくらいすごいかというと……
ざっとみて八割の作業が自動化され、おれたち人間がやることは、システムが吐き出した返信メールとスケジュールの案をチェック、ごくたまに修正とフリーワードメッセージの追加を行うことぐらい、という状態である。
おかげで、連日数十通、メール爆弾攻撃がきた日には百ちかいメールが押し寄せつつも、おれたちは勉強や実習もおろそかにせずに済んだのである。
もっともクラフターたる者、こんなすごくて便利で面白いものを間近にしたら黙っておれないのが性。
おれたちクラフター勢はシオンを講師に、情報処理やそのシステムについて勉強会を開始。
アイテム作成やリペア支援、ファッションコーディネート、戦術相談なんかもしながらなので、結局、忙しさはどんと増したのだけれど。
一方でイツカ、ハヤト、イズミ、アオバのハンター組は、マッチングやアドバイスの希望者と、実際に手合わせをしての戦力分析。
ミライ、ミズキ、ミツルのプリースト組は、彼らのフォローをメインにしてくれていた。
というのも、相談に来る生徒たちの多くは、クラフター、プリーストの後衛や、それとハンターの兼業。
後衛どうしならまだしも、ハンターと対戦すると歯が立たずに負けが込んでしまう。かといってバディを組みたくても組めず、苦しんでいるという状態なのだ。
高天原は基本バディ制で、入学者もおれたちのように二人一組になることが多い。
そうではない、いわゆる『単騎組』の場合は、実力が近いとされる生徒と仮のバディを組むように学園側からあっせんされる。
そのバディが解散したとき、次の相棒は自力で見つけることになるのだが……
『オレが当番で失敗ばっかなの、みんな知ってるんです。
そうなると、もう誰も組んでくれないんですよね。しかたないことなんですけど、そしたらどんどん試合の成績も落ちてって……。』
かつて、シオンが言っていたこと。
『おれは、陸上競技中にひざを痛めて。治療にTPもかかるし、通院のために試合回数も減らさざるを得ない。そうなったら、仮のバディは解散を切り出してきた。』
『仮のバディが。不正行為で退学に……。
つぎは、見つからなかった。俺、ただのプリーストだったから。……暗いし』
この間、イズミとミツルが打ち明けてくれたこと。
それが、現状だ。
『僕は純粋に実力不足。
ハンターとクラフター、どっちもできてるつもりでいたけど、高天原じゃどっちもハンパだったんだよね。だから本格的に組んでくれる子、なかなか見つからなくて……。』
『オレは……まあ、わきの甘さの結果、だな。
ここってハンター買い手市場だから、半端な単騎後衛はぶっちゃけ使い捨て。そこまでじゃなくとも、消費アイテムもらい逃げとかもままあるんだよ。
そこんとこしっかり計算して、なおかつきっちり契約書交わすようにしないと、単騎かつ底辺のクラフターはどんどん搾取されちまうんだ。
オレは錬成魔術苦手だったから、アイテム先渡ししろって言われてなー……。』
チアキの、レンの打ち明ける厳しい、もしくは理不尽な現実。
『実は俺も、もともと病気の弟いて……あ、弟の手術はもう終わって、元気になったからいいんだけど、ここにはほかにも同じような立場のやついるから、ほっとけなくてさ。
ギリギリでやりくりしてたから……うん、これも力不足だよな』
そして、アオバの切ない理由。
それを全部、なんとかする。そのための器を作り上げ、育て、そして残す。
おれたちのミッションは、新たな段階を迎えていた。
そして、剣闘士としての俺たちも。
あわただしい一週間のおしまいにやってきたのは、待ちに待ったイベントだ。
『クランレパード』『クラッシュクラフターズ』それぞれの二戦目と、『イーブンズ』の初陣。
のびのびになっていた、『ミライツカナタ』『うさもふ三銃士』の3on3。
そして……
ライカこと、ライジングブレード・改。そして強化済みのイツカブレード、二本の新たな剣のおひろめバトル。
月曜以降に加入・結成した生徒たちの『リニューアル』戦は来週以降の予定だが、アドバイスを受けていろいろ頑張ってみた生徒たちは何人も出場する。
最初の一歩の、つぎの一歩をおれたちは、支えあいながら踏み出したのだった。
『小説家になろう 勝手にランキング』さんでOut13まで到達♪ ありがとうございます!
ここから数話かけ、おもに新メンバーたちにそれぞれスポットを当ててゆく予定です。長くても各人一話にしたいところです。お楽しみに!




