90-7 さあ来い! 『魔王島』南ビーチの決着!(2) ~白リボンのカナタの場合~
2022.08.18
ハイ……またしてもサブタイ修正いたしました……orz
前回『シーガル先遣隊』による砲撃を受けたおれは、二発ちょっとで膝をついた。
一隻の戦艦の砲撃でそれなのだ。いま沖合に浮かぶ五台、プラス、もしかしたら潜水艇二台からを一身に食らって無事でいられるか。
こたえは、イエスだ。
なぜって。準備の時間と質が違う。
あのときおれが自らにまとわせた強化は、あくまで数分間、ソレアさまとヒットアンドアウェイの戦いを行うのが主たる目的。固化空気と砂の陣だけを使って数秒で描き上げた陣だけによる、ぶっちゃけ『薄くて軽い』ものだ。
対して今回は、ひたすらに守りのための分厚い陣を、幾多の枝葉と花々で時間をかけて組み上げている――この愛すべき島の、大地の力を借りて。
おれが両手を広げれば、海岸をぐるり覆った木立が一斉に輝き、館の上空には、盛装したアルムさんの姿が浮かび上がった。
あちらからはちょうど、おれの頭上にアルムさんが浮かび、加護を与えているように見えているはずだ。
『我らが島は、民はけっして、キズつけさせん!
さあ撃ってみよ、月萌よ! われらがホンキ、見せてくれよう!!』
イツカがおれの肩に手を置き、よこに並んでくれる。
きらきらあかるいルビーの瞳には、いちミリの心配もない。
そんな目をみると、おれもほっとしてしまう。
「だいじょうぶ、おれもおまえも、アルムさんもみんなも。
だれひとり、傷つかないよ。
おれがそう決めた。だから、やりとげるだけだ。
みんな、おれに力を貸してください!!」
『おーう!!』
笑顔も言葉も、自然に出てきた。
世界に響けと呼びかけたそのとたん、どうっと上がった――背後から、足元から、空中から、はるかはなれたどこからか。
オンライン、オフラインにあふれる声、声、声。
なかには、ひたすら取れ高を気にしているものもあったり、むしろ月萌軍を応援するものもあったりしたけれど、いまはおれにチカラをくれる声援たちを、しっかり聴いてチカラにかえた。
いちばん響いてくるのは、いちばん親しい人たちが、おれたちを案じる祈り。
ごめんなさい、しんぱいかけて。
大丈夫。すぐ、そちらに行くから。
そしてこんな戦いは、すぐに終わらせるから!
あのときとは比べ物にならない強固な、それでいてもふもふふわふわとした輝きを宿す障壁が、島を、おれたちをしっかりとつつむ。
対して月萌主力海戦隊『つきかぜ隊』のうち七台、旗艦『つきかぜ』を含む海洋小隊の主砲がすべて、一斉に火を噴いた。
やってきたのは、いくばくかの衝撃。視界がきらめく光につつまれる。
けれど、それだけだ。
光がすうっとひくのにあわせ――これにあわせて西岸から侵入を試みた隠密隊がシオンにみつかり、丁重にお帰りを願ったのはもちろん把握している――おれはもういちどニッコリ。
潮風と電波に、声を乗せた。
「いまご覧いただいたのが、おれたちの新型結界『はるかな愛のコンチェルト』です。
これは、ただ攻撃や、そのダメージを防ぎとめるだけのものじゃない。
飛び散る衝撃や轟音、閃光をも大幅に低減し、周囲への被害をも抑える『優しい』バリアです。
『セント・フローラ・アーク』にもこの効果はあるけれど、おれたちはそれをさらに強めて、これを作り上げました。
術式はのちほど、ネットで公開いたします。
もしも今後、おれたちと戦うおつもりならば。どうぞこれを、海と民を守るよすがとして、お役立てください。
ではまたのちほど、お会いいたしましょう」
そして、あくまで丁重にボウ・アンド・スクレープを決めた。
コンチェルトについて調べると兄の愛がわかります。
次回、新章突入!
ほっとしたりドキドキしたりするみんなの様子と、反攻の第七陣への動きが描かれます。
ついにここまで来たか……
次回! ほっとするミライたちの予定です。
どうぞ、お楽しみに!




