11-1 みんなあつまれ☆けものぱーく?!
2020.01.27
チーム名
誤『クランバード』→正『クランレパード』でした。すみませんでした!
期待のこもった静寂の真ん中で、アスカはこほん、と咳ばらい。
高々と、イチゴ牛乳の三角パックを青空に掲げる。
「それではー!
新ユニット『クランレパード』『クラッシュクラフターズ』の始動!
ならびに『イーブンズ』加入を祝しましてー!」
「かんぱーい!!」
ティーカップのお茶やペットボトルのコーラ、ブリックパックの野菜ジュースなど、めいめい好きな飲み物でおれたちは乾杯。
持ち寄ったサンドイッチやクッキー、小さなおにぎりやおだんご、チョコレートやポテトチップのスナックをつまみながらの会食が始まった。
今日は楽しい日曜日。そして、『ウサうさネコかみ』全体会合の日である。
おれたちがミッドガルドに行ってから、ちょうど一週間がたっていた。
ミッドガルドで過ごしたのは一日だったが、イツカブレードのアップグレード、および二度の再調整にはトータル六日間を費やした。
もちろんその週の闘技場出場は、予定通りナシだったが……
新たな仲間たちの勇姿を満喫し、リフレッシュすることができたのでそれはそれでよし。
イツカもサブのナイフや徒手格闘での組手で、ライカを含む新メンバーたちと仲良くなったので、結果オーライだ。
その後、土曜を休息などのためはさんで、日曜。
おれたちはめいめい、お弁当やお菓子、飲み物を持ち寄り、集まった。
ハルバード使いのアムールヤマネコ・アオバと、プリーストのタンチョウ・ミツルの『クランレパード』。
クラフターのカレドニアガラス・レンと、兼業クラフターのシェルティー・チアキの『クラッシュクラフターズ』。
そして、兼業クラフターのきつねのニノとうさぎのイズミ、オッドアイ二人の『イーブンズ』。
三つのチームを加えると、もう三ツ星の応接でも入り切らない。
『ウサうさネコかみ(仮)』の懇親会合は、おもいきって外で。
構内の芝生に腰を掛けて、お弁当やお菓子を食べる、プチピクニックとなったのだった。
「ミツルくん、はい、イチゴサンド!」
「……ありがと」
おれの向かいでミライとシオンが、ミツルにイチゴサンドを手渡している。
最初に会ったときは、アオバの後ろにかくれていたミツル。
大好物のフルーツサンド(いちご)をミライに作ってもらったことがきっかけで、いまでは心を開いてくれている。
「きょうのはね、オレもいっしょにつくったんだよ! おいしい?」
「っ?!
…… おいしい」
シオンはミライの手ほどきで安全なクッキングを習得しつつある。
もともとあまいものずきでクラフター。筋は悪くないようで、いちごサンドのこととなると人が変わるミツルも笑顔のできだ。
「えっマジ?! 俺にもひとくちー!
あむあむ……うんまー……!」
「ああ……ミツルがひとさまにいちごサンドをふるまってる……お母さんうれしいわ!」
アオバが『ちょーだい』してはんぶんこ。
幸せそうなその様子に、ソウヤがウソ泣きをする。
するとミツルは最強の反撃をしてきた。
「お父さん……誰?」
「えっ」
「シオン? ミズキさん? それとも……アオバ?」
「え、なに?! ちょちょっと待ってノリツッコミボケだよねいまの?! ちょっやめて、ソニックブームやめてえ!! 俺は無実だ――!!」
「……冗談。」
「おとーさああん! さいきん息子がこわいわーっ!!」
コントになってる一方でこっちもコントになっている。
チアキとレンが顔を見合わせ、イズミが大真面目にすごいことを言う。
「シオンが……料理を……」
「つくっただってっ?!」
「一体何人死んだんだ……?」
「しなないよー! そーゆーいじわるいう子にはあげないー!」
軽く涙目になったシオンに、イズミはあわあわ。
といっても顔に出にくいので、表情はちょっとしか変わらず――ひたすら黒のうさみみがパタパタしている。
シオンのみじかい黒うさ耳もおかんむりでパタパタ。
なんだろうこれ。二人とも真面目なのにちょっとほっこりしちゃう構図だ。
「イズミ、いくらなんでもいちごサンドで爆発はしないよ?
シオンもちゃんと、小麦粉を混ぜるときは火の気のないところでやるように徹底してるから。ね、シオン?」
「ごめんなシオン、俺からも謝る!
ほらイズミ、おわびに『あれ』やってさしあげなさい」
「う、うんっ」
ミズキとニノがとりなせば、イズミは最強の必殺技を繰り出した。
イズミをつつむようにぽん、と小さな煙が上がる。
それが晴れると、イズミの姿は小さなオッドアイの黒うさぎにかわっていた。
ぴょこんと立ったうさ耳の高さまで入れると20cmくらい。レオナール君にあげたぬいぐるみとそっくりの愛くるしい姿だ。
「はわっ……うそ、ひきょう……かわいい……なんで……?」
「完全うさぎアバターに変えられていたためのようです、サー!
どうぞだっこでもモフモフでも、お好きなように!」
「う、ううううんっ!
うわあ、ふわっふわ~……
こんなかわいいうさちゃんだったらぜーんぶゆるせちゃう~……しあわせ……」
うれしそうにだっこしたシオンはとろける笑顔。うさぎ装備を選択するだけあって、うさぎ大好きのシオンには最高のごほうびだったようだ。
かくいうおれたち、旧『うさぎ男同盟』の残りメンバーも沸き立った。
「なあシオ、俺たちバディだよな? だから次は……」
「ソーやんはシオっちだっこすりゃいいじゃん。やっぱしここは盟主のおれがっ」
「それをいうなら、ニノとイズミをつれてきたのはおれだよ?」
「もうみんな、おちついて。なかみはイズミなんだよ? ……俺はかまわないけど」
「ミズキが一番すごいこと言ってる!」
「うん」
「異議なし。」
「おいおまえたち……今日はなんか議題があったんじゃなかったか……?」
「あっ」
ハヤトが気圧された様子でつっこみを入れてくれたおかげで、おれたちはなんとか正気に戻ったのだった。
アスカがちょっぴり顔を赤くして眼鏡を直した。
「そ、そうそうそう!
あのさみんな、今日は連盟の名前、正式版に変えようかなって!
理由は、いろんな動物装備の人が増えたから。いまは鳥のひともいるし、そもそも剣の奴もいるし。さかな系アバターの人も増えるのを見越して、おれ考えてみたんだけど……」
そしてアスカがどん! と取り出したフリップにはこう書いてあった。
『移動動物園』
「あー……もとのほうがよくね?」ニノ。
「そう思う」イズミ。
「うさうさねこかみが……かわいい……。」ミツル。
「いいのか、鳥分ないんだぞ? まあミツルがいいならいいけどさ」アオバ。
「親しみあるよね。もちろん、こっちも悪くはないけど」チアキ。
するとレンがまあまあと代替案を提示した。
「頑張りは認める! だが漢字ばっかはやっぱきついぜ?
なのでここはもうすこしポップに……
『たかまがはら☆みんなあつまれけものぱーく』!」
「それなんかやばい!!」
「ていうか長い!!」
「かわいい……」
激論は一時間に及び、結局連盟名は『ウサうさネコかみ(仮)』のままでいくことになったのだった。
ぶ、ぶ、ブックマークをいただけている!!
ありがとうございます!!
本日なかなかまとまらず遅れました……!




