90-2 動き出す! 第六陣、南海岸! ~白リボンのカナタの場合~
2022.08.16
サブタイ修正いたしました!
この戦い、魔王軍VS月萌&ソリスの連合軍、といった体裁だが、実際のところは少し違う。
北海岸では、月萌航空小隊が単独で攻め。
こちら南海岸では、まずソリス軍がかちこんでくる。月萌海洋小隊は砲撃でそれをフォローし、撤退時には殿かねての斉射をよこしてシメる流れ。
つまり月萌軍とソリス軍の提携は、きわめてゆるいのだ。
ソリス軍としては、おれたちとこないだの『おかわりバトル』がしたい。
月萌軍としては、おれたちを月萌本土まで引っ張り出すための威嚇射撃を安全に決めたい。
双方の利害が一致したがゆえの、カッコつきの『共闘』である。
もっとも、ソリスもこの戦場では、月萌を攻撃しないし、逆もまた然り。
フリーダムなソリス、腹に一物ふくむ月萌の間でのこの合意は、双方にとって十分上出来な合意だといえた。
ソリスが南から。月萌が北から姿を現す。タイミングよし。
事前の予告通り、砂浜に立ったソラが、イザヤとユウを打ち上げた。
妨害はなかった。むしろ、拍手だけがオンラインで響いている。
なるほど、この戦いもやはり、おれたちが目玉のショーという位置づけであるようだ。
もちろん事前にアスカらを通じて情報は得ていたが、それを過信して痛い目に合うのもつまらない。おれはシグルドさんにあらかじめくぎを刺さなかった――月萌軍にちょっかいを出さないようにとは。
よってステラ開戦派は今日も水底でスタンバイしている。ソリスとの『決着』は、あまり邪魔されずに終えることができそうだった。
かれらは忠犬のように待っている。おれたち大将が名乗りを上げあい、戦端が開かれるのを。
こういうときはイツカがたよりになる。目くばせをすれば、くびもとの白リボンをなびかせながら、やつは大きく手を掲げた。
「っしゃあ! みんな、そろったな?
はーじめっぞ――!!」
「お――う!!」
海面から、空中から、船の上から、ソリスの民が声を上げる。
砂浜から、その奥から、あるいは管制塔から、魔王の仲間たちが声を上げる。
水底ではステラ開戦派が声を合わせ、月萌軍でもノリのいい一部がこぶしを突き上げていたりする。
空の民が、盛んに射撃を始める。
平原の民を船に、あるいは背中にのせた海の民が、浜辺へと迫る。
その下をかいくぐるように、ステラ開戦派が月萌潜水隊へと距離を詰めていく。
こちらももちろん、動き出す。
モモカさんがミクさんを連れて、風の矢のチカラで上空へ。
イツカは新型ブーツの力で、かがやく海面を走り出す。
ソラは水の巨鳥を身にまとい、その後に続く。
自己強化しながら飛び出していくハンターたちの背中に、残りのおれたちが支援を飛ばす。
アオバとタクマが『ルーレアの一閃』『地烈斬』での援護射撃。
エルマーは大きな錬成陣で全員を一気に強化。
おれはもちろん、『卯王の薬園』で仲間たちの力を引き上げる花々をたくさん咲かせ、その香りを潮風に乗せる。
むかってくるソリスの民はみな笑顔。
つられておれたちも、笑顔になる。
まばゆい太陽の下、ふしぎなほどに楽しい雰囲気で、南海岸の戦いが始まった。
今回珍しくイメージ曲があります。
『夢と希望』――有名RPG『Undertale』のボス戦曲です。
今回もなかなかに苦戦しましたが、この曲があって書けたといっていいです。神曲です♪
次回、つづき!
お楽しみに!!
200ブクマ達成記念と感謝の短編、公約通り8/7に上梓いたしました。
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