89-7 はばたけ、空へ! ミルルとリンの友情の飛翔!
イズミたちが先祖返りパワーを開花。リンさんは大星霊フォルカと契約して翼をゲット。
その勢いのままに、ポテンシャルの見極めもかねての個別練習が始まった。
イザヤとユウはわりとシンプルな放出系スキルであるため、すぐに使いこなしをマスター。アテにしてくれ! と笑顔で心強さ満点だ。
イズミは幻惑技を利用する方法を試し始めた。
あえて残像を残しての高速攻撃や、純粋に幻惑を試してみたり。
ちなみに講師候補として名前が出ていたルゥさんはふたつ返事でとんできてくれたものの「いやこれいずみんのが強えじゃないっすかあああ!!」ということで、むしろイズミに稽古をつけてもらっていた。
本人曰く「初見殺しぐらいにはなるけど、その道を極めてきたやつらとかトウヤさんにはまだ通用しないな。切り札になるほどのものじゃないと思ってくれ」とのことだ。
対してニノの先祖返りパワーは解析系なので、あえてイズミの幻惑をもらってみたり、サンプルとして作った暗号を解いてみたり。
「すごーい、こんなの解けるの?! しかも早い!
それじゃ、これ! おれのつくったプログラムと解きくらべしてみてー!」
「おお、どんとこい! 勝ったらシオンモフモフな!」
「よーし、おれのプログラムが勝ったらニノをモフモフね!」
その速度はなかなかで、シオンの組んだプログラムと暗号解き勝負を始めるに至った。
結果は1.3秒差でニノの負け……と思われたが、なんとニノは原文のまちがいを補正した『本来伝えたかった内容』を書き出すことができていたので、判定はドロー。
協議の結果、なぜかニノがイズミとシオンの二人にるんるんブラッシングされていたが、本人もまんざらでもなさそうなのでいいことにする。
ただ、リンさんは苦戦していた。
羽ばたけばすこし浮かぶことはできるのだが、それ以上の飛翔力はどれだけ羽ばたいても出ない。
いまの彼女はあくまで、アークさんの助手。第六陣で戦うことは、よほどのことがない限りはないけれど、彼女が必死になる理由はそこにはなかった。
「だめだ……こんなじゃぜんぜん……
ミルちゃんをつれて飛びたいのに。ミルちゃんが飛びたいときには、いつでもわたしが翼になって……!」
「リンちゃん……」
肩で息をするリンさんの背をやさしくさすったミルルさんは、そのときぴんとひらめいたようす。こんなことを言い出した。
「そうだ!
ちょっと浮かんで、わたしにつかまって!
わたしの足で助走つけて、風に乗ればきっと、もっと高く飛べる!!」
「そっか、やってみよう!」
コースはあえて、小さな崖に続く緩やかな下り坂を選んだ。
直線距離で30m。おそくとも、崖から落ちるときの勢いで風に乗れるだろうということで。
もちろん、がけ下に危ない岩なんかはないことは確認した。
それでも万一にそなえ、対策チームが待機する中、チャレンジは始まった。
「よーし! いきますっ!!」
ストレッチ、ウォームアップを終えたミルルさんが気合を入れ、すらりとした足をたくましいエミューのそれにチェンジ。
ちいさく浮かぶリンさんをおんぶの要領で捕まらせて、猛然と走り出した。
その走りっぷり、一ミリのためらいもない。
まるで崖なんか存在してないかのごとき全力ダッシュに、リンさんの翼は風をはらんで膨らんだ。
それでもまだ、空に浮かぶには至らない。
10mを超えたところでリンさんが叫び声をあげた。
「ちょっとミルちゃんストップ! 無理これおちる!」
「だいじょうぶ!
わたし、リンちゃんを信じてるからっ!!」
ミルルさんはそのまま駆け抜けた。
まるで崖なんか存在してないかのように、そのまま。
がくん。ふたりの体がかしいで落ちはじめた。
これは、安全性を確認し、万全の態勢を敷いたチャレンジだ。でもおれたちはみんな息をのんだ。
だって女の子が海に落ちるなんて、平然と見てはいられない!
「頼む、飛んでっ!」
だれかの叫びが響く。
同時に、リンさんの翼がまばゆい輝きを放つ!
海面ギリギリ。ざざっと波を切り分けて、ふたりの少女の体が浮き上がる。
逆向きの放物線を描き、吸い込まれるように青空へ!!
「とんだ……」
「飛んでる……」
「やった……」
「やった――!!」
南国の陽光のような、いやそれ以上にまばゆい光の翼は、自在に風をとらえて舞っている。
涙が出るほどまばゆい光景。おれたちは崖の上下でばんざいを叫びまくった。
「うあああ! よかったー!!」
「うおおん!!」
「ばんざい!」
「ばんざ――い!!」
ひととおり笑いあいながら飛び回ると、リンさんとミルルさんは嬉しそうに手をつなぎ、戻ってきた。
「やっと、飛べました!
みなさん、ありがとうございました!
ミルルも、ほんとうにありがとう!」
「わたしも、夢がかないました。
ずっとずっと、飛びたかったんです。……リンちゃんといっしょに。
もったいないくらい、幸せです。
みなさん、リンちゃん。ほんとうにありがとうございます!」
何度もうれしそうに頭を下げるふたりを、ルリアさんがまとめてよいしょとかつぐ。
もちろんやることなんかひとつだ。
「よっしゃー! みんな、胴上げだー!!」
「イエーイ!!」
つづいて、アークさんとセラさん。ふたりに協力してくれた研究者さんたち。
さらにはルリアさんまでもつぎつぎ胴上げしたところで、坂の上からうれしい声が聞こえてきた。
ソーヤだ。やりとげた顔でふりふりと手を振っている。
「っしゃー! お祝いのスープ、できたどー!!
乾杯するやつあつまれ――!!」
「は――い!!」
はしゃぎまくってへとへとだったはずのおれたちだけど、それを聞いたら元気100倍。
キラキラの砂をけたてて、我先にといい匂いのするほうへ、ゆるやかな坂を駆け上ったのであった。
昨日はご心配をおかけしました!
スマホがやばいくらい熱くなったりタイヘンでした^^;
次回、新章突入! 第六陣が始まる予定です!
どうぞ、お楽しみに!




