89-6 再開花! リンの輝く翼!!
所用にて遅れました!
しかし今度こそ翼復活です! 取り急ぎ投稿まで!!
この直前に、おれはアークさんから打診を受けていた。
奥様であるセラフィーネさんと進めていた研究がほぼ完成した。あとは、リンさんご本人でトライしてみるだけであると。
それでも、リンさんがみんなといっしょにうさぎ姉妹のレッスンを受けてみるつもりであると伝えたら、すんなりと「リンがやってみたいというなら、試してみるといいよ。もしかしたら行けるかもしれないからね」と承諾してくれた。愛が大きい。
そんなわけでもし、うまくいかなかったらサプライズということで……という手はずだったのだが、リンさんは予想より素早く、気づいたらもうみんなの輪を離れて走ってゆくところだった。
そうしていま、セラフィーネさんがリンさんに問いかけたところである。
「で、でも。
わたしはステラの血を半分しかもってない。
星霊なんて、接触するのさえ無理なんじゃ……」
リンさんは戸惑っている。
ステラの星霊は、生活魔法などでお世話になる元素精霊などとはまた、別の存在。いうなれば、ステラさまにより近い眷属、亜神たちだ。
安全に接触できるのは、ステラ人に特有の因子『スペライト因子』を持つもののみ。コミュニケーションの成否を決めるのもその因子の多寡。もちろん接触できたとしても、契約できるとは限らない。
リンさんももちろん、それはわかっているのだ。
「それを何とかする方法ができたの!
ね、リン、やってみましょう?」
「え、あっ、はい」
「セラさん押しつええ?!」
イツカが驚いている。おれもちょっとおどろいた。
セラさんは、どこかステラさまに似たたおやかな容姿と、絶やさぬ微笑みが魅力的な女性だ。しかしながら、そのままぐいぐいくるのでむしろ押しは強い。
アークさんがはははと笑う。
「そういえばプロポーズは母さんからだったなあ」
「だって父さん素敵だったんですもの☆」
「ちょっちょ、ふたりともそれは後でねっ?
ごめんね、これ始まると長いのよ。
ほらほら、やるんなら早く行くわよっ?!」
そのまんまふたりの世界に入ろうとしたラブラブ夫妻を慌てて止めて、リンさんはその背中を押す。
一瞬ご夫妻が「よっしゃ」的な笑いを浮かべていたように見えたが、深くは追及しないことにした。
ラボには既に、準備が整っていた。
リンさんが儀式を行う台の上には、みたこともない陣が描かれている。
どんな働きをするものかはわかる。リンさんの体内のソウルのチカラを引き出し、スペルのチカラに変換するものだ。
そうして、この陣とリンさんを一体の存在として、星霊とのアクセスを試みる。
補助役として、ステラ人であり、リンさんの母親であるセラさんも参加する。
さらっとこう言うと簡単そうだが、どの段階もとんでもなく高度だ。ぶっちゃけおれなんかにはとうてい真似できない。
「ほんとにすごいわ……
正直この陣ほとんど読み解けないけど、すごく……優しさを感じる。
これならきっとうまくいくわ。がんばって、みんな!」
「リンちゃん、ファイト!」
応援団長兼オブザーバーであるルリアさん、親友で同僚のミルルさんも、今日は特別ご招待。ふたりともお目々をキラキラさせて応援してくれる。
ラボの中はとてもいい雰囲気だ。まるで、すでに成功が約束されているかのような、明るくリラックスしたムード。
「よし、それじゃ始めよう!
リン、セラ、みんな、いけるかい?」
「もちろんよ!」
アークさんが声をかけ、正規の大実験は始まった。
儀式用のローブに着替えたリンさんがメインの陣の中央に、補助用のサブの陣の方にはセラさんが立ち、ゆったら深呼吸。
心拍数が安定したところで、陣に力を流して活性化。
ぼうと赤く光る色は、リンさんとアークさんの髪の色に似ていた。
赤の光を待った力が、充分に台の上に満ちたとき、リンさんの頭上に、キラキラとした星空のようなものが見え始めた。
ゆっくりと、厳かな声が降ってくる。
『やれやれ、ようやく本番か。
まったく、待ちくたびれたぞ、セラよ』
ただし、なんかすごくやれやれ感を漂わせて。
「えへっ。ごめんなさい、フォルカ。
でも、そのかいはあったでしょ?」
『それはそうだけどな……』
そしてセラさん、そんな声の主とお友達感漂わせてしゃべってる。ていうかてへぺろまで決めた。ええええ。
対するフォルカの声も、しょうがないなあという笑いをふくむあたり、両者は気安いあいだがらなのたろうと伺われた。
『まあよい、このままおればリンの負担となろう。さくさく本題に入ろうか。
リンよ』
「はい」
リンさん、クールに返事した。
肝が座っているのか、半分フリーズしているのか。いずれにしても堂々として見える。
『我のことは知っておるな?
炎と光の翼もつフォルカ。汝の母君の契約者だ。
我で良いなら、契約しよう。もしも他の奴が良いなら話を通すが』
「いえ!」
リンさんは間髪入れずに返事した。
「わたしは、……母の自由さに憧れていた。
聞いています。母はあなたの翼で家を飛び出し、父に会いに来たと。その結果として、わたしがいると。
父からもらった翼はうしなってしまったけれど、母と同じ翼なら……!」
『良い答えだ。
良かろう、我が力を授けよう。
だが、リンよ。
お前は二つの民の血を引いている。よってその身に芽吹くものは、常に2つの民の力をはらみ、そのバランスが保たれたとき、真のポテンシャルを発揮する。
そのこと、忘れるでないぞ、我が新たな契約者、アリオン家のフォルカ=リンシャールよ』
「……はい!」
震える声で答えたリンさんの背中に、一対の翼が開く。
それはまだオーロラのようにはかなかったけれど、それでも確かに空を舞うことができるはずのものだった。
「よっ……しゃあ――!!」
感動に包まれたラボ。
最初に上がったのは、感極まったルリアさんの歓声だった。




