表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_10 折れた剣<イツカブレード>

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

106/1358

Bonus Track_10_3-2 ラストワンステップ~アスカの場合~(2)

 メタモルソードドール。簡単に言うとこれは、ヒトガタに変形できる、知性を宿した剣である。

 仮の名前はライジングブレード・改からとって『ライカ』。

 ちなみにいまはヒトガタをしているが、その姿は僕そっくりになっている。

 ハヤトはライカ(仮)と僕を見比べて、困惑した様子だ。

 僕は説明を試みた。


「いやー、ハヤトのためにってほしい仕様追加してったらこうなってさー。

 ほら、自分で動けるから持ち運びの苦労もないし! たとえ武器落としされてもちゃんと帰ってくるよ!

 自力で飲み食いしたり周囲のマナ吸い込んで自発的にパワー蓄えといてくれるからいつでも必殺撃ち放題! つーか中級までの神聖魔法だってワンワードで使えちゃう!

 AIがそもそもちょー優秀だからオートカウンターやマジックアシスト、戦況の助言なんかもバッチリできるし、宿題のお手伝いやあれやこれ、いろんなことができるんだよ! えっちなことはだめだけどね!」

「あー、俺が欲しいって言ったのは……」

『大丈夫! おれ、ちゃんとふつうに剣だから! ちょっと変形するけれど! 魔法も助言もオートカウンターも、オフにするっていっときゃしないから!

 もちろん威力も強度もばっちりさ! 『月閃』『青嵐』とガチで必殺撃ち合っても負けないし、絶対折れないよ!! すっごいっしょハヤトきゅん?』

「普通の剣がそんなにしゃべるか!」

「てへっ?」

「テヘペロもしない!」

「ハーちゃん、おれアスカ。」

『はーい、おれがライカ(仮)ねん♪』

「見分けつかねえよっ!!」


 二人でハヤトのまわりをぐるぐるしながらやったら、案の定ひっかかった。これだから、ハヤトはやめられない。

 ライカもたのしげにハヤトをからかう。うんうん、さすがは僕の子だ。


『わーひどーい。ハヤトきゅんてば愛が足りなーい』

「まーしゃーないって。見分けつかないレベルに擬態できるようにしてあるんだから。つまりは仕様だねん♪」

『ほらほらーかわいーこいぬにもなれるよーん。女体化マスターだってこの通りー』

「ちょっきみ何やってんの?! おれの顔でミニスカメイド服とかまじやめてっ?!」

『えー、前着ていいって言ってたよねー?』

「女体化するとは言ってないよ!!!」


 とか思っていたらとんでもないことをかましてきた。

 誰だ、こいつのAI作ったの。僕だ。どうしてこうなった。

 かるく現実逃避したい気持ちに陥っていると、ハヤトがビシッとつっこみをくれた。


「作り主いじって漫才するとかオーバースペックもいいとこだろうが!!

 ったく……あのな、アスカ。俺がほしいのは、『ただの』剣だ。エンチャントも疑似知性も要らない。

 ただひたすら、己の剣の腕だけで戦う。それが俺の求める……」


 ハヤトはむうっとした顔で腕を組み、おれに文句を言う。

 するとそれを聞いたライカが、ショックを受けたような顔をした。


『え、……おれ、ひつよう、ない、の……?』

「たしかにこれは、おれのミスだね。

 ハヤトが心配だからって、勝手に暴走したおれの。

 しょうがない、この子は……」


 おれも神妙に見える顔をした。

 もちろん、ハヤトは慌てだす。


「ちょ、……待て! まさか、廃棄に……」

『いいんだよ、おれはただの疑似生命体。必要とされないならば……』

「ま、まて! 存在が必要じゃないとは言ってない!!

 だが俺は、お前の幸せに責任が持てない!!

 俺は、剣士だ。これまで何本も剣を変えてきた。

 いずれお前が手に合わないとなったら、また替えたいと思ってしまう! それこそ好きに利用して、使い捨てるようなことになってしまうかもしれない!

 そんなくらいなら、確実に終生お前を大事にしてくれる主と……俺が思うのはただ、それだけで……」


 とつとつと、不器用に語るハヤトの頭を、ライカは背伸びしてやさしく撫でた。


『お馬鹿さんだねえ、ハヤトきゅんは。

 そのために、変形する機能があるんだよ。

 しかるべき素材を取り込み消化、再配置すれば、ハヤトきゅんの望む構造にいくらでも変化できるんだ。断言するよ、ほかの剣なんかに替えたくなるわけがない。

 君が、試合中はただの鋼のカタマリでいてくれというなら、おれは喜んでそうするよ。

 けど、君がいずれαとしてそれ以上の相手と対峙するなら、そしてそれでも大切なものを守り切ろうとするならば、おれを使い倒すくらいの技量が必要になる。

 本気でおれのマスターを守りたいなら、おれを君の牙にして見せろ。

 ハヤト、これは、君へのおれの挑戦だ』


 そして最後に、まるで決闘でも申し込むかのように、握手の手を差し伸べた。


「………………わかった。受けて立つ。

 改めて頼む、ライカ。おれの剣となってくれ」

「引き受けた。

 今後よろしく、ハヤト」


 ふたりは力強く手を握り合った。

 ハヤトの右手の甲に銀色の紋章が一瞬浮かび、ライカの使用者登録が完了する。

 その様子をたしかめると、ほっと溜息がもれた。

 同時におれの肩に、優しい手が置かれた。マイロ先生だ。

 俺は振り返り、丁寧に頭を下げた。


「先生、ありがとうございました。錬成、アシストしてくれて。

 これで、心おきなく、アイテム作成をやめられます」

「アスカくん……」

「おれ、やっぱ向いてないんです。

 ボムを作れば威力おかしいし、移動のスクロールは異界につながるし……

 くわえてあんなの、一時間でできるとか。もうおれの存在自体がバグなんですよ。

 そんなやつがこうして、すきにアイテムふりまいてたら、またきっと、……」


 そう。こんな僕がアイテムづくりを続けていたら。

 きっといつかまた、ハヤトをひどく、傷つけてしまう。


 あれはまだ、ミッドガルドにいたころ。

 僕はゲームのなかでも腕っぷしが弱くて、ハヤトに守ってもらってばかりだった。

 そこで、なんとか役に立ちたいとボムを作ってみたら、なんと一発でうまくできてしまったのだ。

 楽しくて続けるうち、僕はどんどん腕を上げ、昇級試験もサクサク突破。小学生プレイヤーの上限とされるBランクまで、あっという間に上り詰めた。

 鼻歌交じりで適当に錬成したものさえ、ほぼすべてがAランクに近い品質。失敗気味のものですら、Bランクを下回ることはなかった。

 僕は『神童』ともてはやされるようになり、すっかりうかれていた。

 そうして面白半分手を出した『オリジナルさいきょーボム』の錬成は、しかしすべてを吹っ飛ばした。

 手順もいい加減なまま魔力をつぎ込みまくったため、構成の甘い錬成陣が崩壊、爆発。

 ハヤトはとっさにおれをかばって重傷を負った。


 もちろん『ティアブラ』のなかだ、演出はあくまでポップでかわいらしいもの。

 でも僕は、ショックだった。本当に、後悔した。

 だから、プリーストになった。もう、あのまちがいをくり返さないために。


 けれどここに入った僕はまた、クラフトに手を染めていた。

 魔力流量調整レギュレーションリングをいくつもお釈迦にしながら、冗談みたいなアイテムを作り続けていた。

 絶対安全な闘技場で、デタラメな威力と効果を振りまき、笑いを取るため。

 自分が、自分たちだけが、『イケニエのウサギ』にされないために。

 ときには、一番恐れていること――ハヤトを大きく傷つけること――への危険を冒しながら、それでも。


 でも、もうそんな日々は終わったのだ。

 おれはプロジェクトのプロモーター、チームのマネージャーだ。

 あとはひたすら、この頭脳でみんなを助ければいい。


「……剣闘士としては、プリースト一本に絞る。

 ハヤトがライジングブレードに満足しないほど強くなったら、こうするつもりだった。

 だから、……」

「ほんとに、それでいいの?」


 マイロ先生が、真剣なまなざしで僕を見上げている。


「わたしは好きよ。アスカ君のクラフト。

 というか、作ってるときの目。

 きらきらしてて、ほんとうに楽しそうで、見ているだけで幸せになる。

 すきなんでしょ、クラフト。

 ここはね、そういう子たちが、のびのびクラフトできるために手を貸す、そんな場所でもあるの。

 すくなくともわたしのラボは、ただの予備兵器工場になんかさせないつもりよ。

 ……それに、もったいないわ、その才能。

 君がもっと自由に想像の翼を羽ばたかせたら、このさきもっともっと素敵なアイテムができるはず。

 月萌ツクモエの戦争なんかパパッと終わらせて、その後の世界も支えていってくれるような、楽しくてワクワクするようなものがたっくさん。

 アスカ君がひとりでもきちんと錬成を制御できるようになるまで、先生はいくらでもがんばるわ。何年在学してくれてもいい。なんだったら、このままラボに就職してほしいとすら思ってるの。本当よ?」


 少女のような小さな手が、小さく震えながら、きゅっとおれの腕につかまっている。

 なんてひきょうなんだろう。おれはそっとその手をはずしながら言った。


「……わかりました。

 わかったから、つま先立ちでぷるぷるするのやめてくださいね?

 せっかくいいシーンなのに、笑えて来ちゃいますから」


 すると先生は、少女のように膨れて言った。


「もう、アスカくんのいじわる!

 そういうアスカくんには、鬼の先生が地獄の特訓をしちゃうんだからねっ!

 ……とりあえず、週明け。クラフトのポテンシャルテストをするわ。

 おそらく上級クラスへの編入になるはずだから、準備しておいてね」

「はい。ありがとうござ……」

「おーい!!」


 そのとき、ハヤトが助けを求める声が聞こえてきた。


「アスカ! お前! こいつどーなってんだよー!!」


 みればライカがいい笑顔で、ハヤトにコブラツイストをしかけていた。


「えっと、主要な近接戦闘系の技能基本パックはひととおりインストールしといてみたんだけど……ダメ?」

「ダメとは言わないが、とりあえず『錬成室でふざけてプロレス技を仕掛けないという基本的な常識』をインストールしといちゃくれないか……?」

「てへっ?」


 このすこし後に、様子を見に来た仲間たちが『アスカが増えたー!!』と仰天するのだが、それはまた別のお話である。

メリークリスマース!

まあ私にゃんこ教徒なんですけどね! だから飲み食いの機会は見逃しません(いらん情報)!

そんなわけで次回はフルーツサンド(いちご)でわいわいの予定です。お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] アスカの能力デタラメすぎ!!性格もか(笑) その中にみえ隠れする本心が切ないですね…… アスカが自由にのびのびと発想する姿をまた見たいです( 〃▽〃)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ