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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_89 蘇るチカラ! 第六陣に向けて!

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Bonus Track_89-4 開花せよ、先祖パワー!『先祖返り』組のスペシャルレッスン!!(2)~ニノの場合~

「いやイズミ、あのね? 俺はぜったい『先祖返り』じゃないから!

 ただやりたいことがあるととまんなくなるだけの」

「……」


 イズミはまるい眼鏡越しにじーっと俺を見上げてきた。

 俺のつくったアイカラーで金色に染まった右の目と、もともとの深い、澄んだ青の左目で。

 無自覚だろう、頭の黒うさ耳の角度も絶妙。


 むかしっからどうにも、俺はこの目に弱いのだ。

 そこにさらにうさみみまでついてしまったら、もう「ハイうさぎはせいぎですっ!」としか言えなくなってしまうのである。

 かくして俺は、イズミの先祖返りトレーニングに付き合うことになってしまった。



 ミッドガルド時代の俺たちのホームグラウンド――ノルン地方西地区界隈。

 鉱山町として栄えたそこには、いろいろなやつが集まってきた。

 当然、俺たちより強いやつも普通にいた。

 それでもイズミは、同期のなかでは頭一つ抜けて強かった。

 やつと手合わせをして勝ったやつも、皆言ったものだ。『この先が楽しみだ』と。

 俺としては、そんなイズミの後ろでゆるーくアイテムを投げたり、採取したアイテムを使って小物やアクセサリーを作って売ったりするのが好きだった。


 イズミのいうことも間違ってはないのだろう。すなわち、俺もその気になればやれる。

 けれど、俺の『奇跡』は、イズミが力の源で、先祖なんかは関係ないのだ。


 それでもイズミがああして俺の袖を引いてくれたのは、正直なところをいえば、うれしかった。

 だから、まあ、いいかと腹をくくった。



 俺たちの指南役を引き受けてくれたのは、イズミのご希望通りの兎家<アルネヴ>姉妹。

 ただ、この二人は島のアイドルだ。うらやましがるやつらが続出し、島の広場に希望者を集めての大人数レッスンとなってしまった。


「はいみんなー、こーんにーちわー!」

「こーんにーちわー!」

「んんー声が小さいぞ、こーんにーちわー!!」

「こーんにーちわあああ!!」


 トレーニングウェア姿が『たいそうのおねえさん』ぽくて尊い、くろうさ美少女クロートーさんはノリノリだ。


「はーいよくできましたー!

 それではみなさん、まずは深呼吸からはじめましょー!!」


 すると灰うさ美少女クローネさんがグランドピアノに指を弾ませ、流れるようなBGMを演奏し始めた。

 ぶっちゃけこっちは『うたのおねえさん』ぽくて、これまた尊い。

 一体このでっかいピアノをどっから調達したのかが謎だが、そんなの吹っ飛ぶ勢いだ。

 もえもえしながらひととおり準備運動を終えれば、クロートーさんからつぎのお達しが出た。


「はい、ではみなさんその場に座って、胸に手を当ててみましょう。

 ドキドキしてますかー?」

「はーい!」

「もしも心臓が打ってない方は手をあげてくださーい。いませんねー?」


 どっとわく会場。たぶんスケルトン姿の『スケさん』がいたら手を挙げるのだろう。ちょっと見たい。


「では、目を閉じて。その鼓動を、もっともっと感じてみましょう。

 流れる血潮は、命のあかし。古より受け継がれてきた、力の証。

 生きよ。そして、己の記憶を残せ。そうした、魂の呼び声の結晶です。

 流れる血潮を感じましょう。その語る声に耳を澄ませて。

 だいじょうぶ、かならず、きこえてきます」


 ゆったりとした伴奏にのって、クロートーさんの声が流れてくる。

 なんともここちの良い時間。からだがぽかぽかしてきて、このまま眠ってしまいたくなった。


「だいじょうぶですよ、むりしなーい。

 眠たくなったら、寝ちゃいましょう。

 いまはただゆったりと……息を吸って、はいて……

 もしも何かが浮かんできたら。それがきもちのよいものだったら、それに近づいてみましょう。

 こわいものや、かなしいものなら、そうっと息をはいて、流してしまいましょう」


 そのとき、ふいに手を握られた。目を開けなくてもわかる、イズミだ。

 きっと不安になったのだろう。俺はゆるくその手を握り返す。


 思い出す。俺が覚醒しそこねたときのことを。

 覚醒をなしとげて第二陣に参戦できるか、学園に残って修行するかの瀬戸際で。俺はスゥさんに『魔法陣の特訓』をしてもらったのだが、その時は覚醒できなかった。

 イズミは俺のわきに座って手を握り、ギリギリまで応援してくれていたのだが……


 思い出すと、まったく申し訳ないことをしてしまった。

 特訓さえうければ、きっと覚醒いける、なんてなめてかかっていた。

 結局イズミの『鬼特訓』を受けることになり――イズミを泣かせてしまった。



 俺は、やればできる、かもしれない。

 けれど、イズミのようにうまずたゆまずコツコツと、続けることはどうにも苦手だ。

 それができるというのは、俺にはとんでもなくでっかい才能に思える。

 イズミをもう泣かせたくない。そのために、できる限りで手を伸ばしてはいるけれど。……


「もし、たすけてほしければ手をあげてくださいね」


 そのとき聞こえてきた声に手を上げかけて、やめた。

 いや。これはただの、個人的な雑念。クロートーさんに助けを求めるようなものではない。

 呼吸を大きく。雑念を払おう。いまはその時じゃない。


 そのとき、もう一度ぎゅっと手を握られた。

『おれがいるだろ』というように。

 そのとたん、揺らいだきもちがすっと凪いだ。



 気がつけば俺は、涼しい木陰で横になっていた。

 どうやら、眠ってしまっていたようだ。

 誰かが運んでくれたのだろう。お礼を言わないと。

 そう思って顔を上げると、すぐよこで転げて眠っている、黒うさ姿のイズミがいた。

 今回の主役は、こいつだったはずだが……はたして先祖返り力のパワーアップは、できたのだろうか。

 じっと見ていると、おかしなことに気が付いた。

 子ウサギ姿なのはいつものことだが、なんだかやけに大きくないか。

 いや大きい。俺と同じくらいのデカさがある。

 まさか。

 あたりを見回せばなにもかもがでかかった。


「きゃんっ?!」


 そのとき俺の口から出た声は、きつねのそれだった。

 動転した俺はきゃんきゃん鳴きながらイズミのまわりをグルグルし、お叱りの足ダンを頂戴してしまったのだった。


きつねの鳴き声ってかわゆいですよね!

「くぉーん」というか「きゅーん」というか、歌っているような感じで文字にしづらいのですが、あえて「きゃん」と表記させていただきました。


次回、トレーニングの結果?! どうぞ、お楽しみに!!


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