89-1 確認と、決意のカタチと――『ゼロブラ館』での『会わないデート』(1)
おれの足元で、黒いこねこと水色のたれ耳こうさぎがキラキラした目で待機している。
「はいはい、いま開けるからね? いいこで帰ってくるんだよ?」
その正体は、けも変化した白イツカともうひとりのおれだ。
わかっている、わかっているのに顔が緩む可愛さだ。ついつい甘やかす口調になってしまう。くそう、ひきょうものどもめ。
ともあれ、まずはやるべきことを。
掌認証式の認証プレートにおれは手を当て、声に出さずにつぶやく。
『ドア・オープン』。
プレートが小さく輝き、扉が左右にスッと退く。
そのとたん、ふたつの毛玉が飛び込んだ――はるか月萌につづく抜け小路へと。
ここは、われらが魔王島の誇る『ゼロブララボ』の扉まえ。
おれたちの住む旧領主館からつながる、おれとイツカのためのクラフターズ・ラボへの入り口だ。
そして同時にここは、ソレイユ邸敷地内『ゼロブラ館』のラボ入り口でもある。
そう、このドアは特製の『まほうのドア』。ふつうに開けると魔王島ゼロブララボにつながるが、しかるべくキーワードを唱えて開くと、ソレイユ邸のゼロブラ館ラボにつながるのだ。
ふたつのラボのレイアウトは全く同じ。
だから万一このドアからゼロブラ館のラボに入るところが動画に映りこんだとしても、バレることはない。
念のため、こっちのドアから中を見ても、正確な映像は見えないようになっている――中にいる者が全員、ライカ分体に見えるように細工してあるのだ。
うっかり誰かが盗撮したなら、どんな顔になることやら。これを設定したとき、アスカとおれとライカは、悪い笑いを浮かべたものだった。
そんなわけでおれたちは、これを利用してゼロブラ館を訪れ、利用していた。
研究のため。魔王島ラボでしきれない、メンテなどのため。そして、待ち合わせのために。
そんなわけで、白リボンのおれたち(※けもモード)はかわいらしくラボを飛び出していき、おれとイツカ、ソラとイズミは予約してあったミーティングルームへと向かうのだった。
「やあ、お待たせしちゃったかな」
「いえ、時間通りですよ」
めいめい飲み物を調達してしゃべっていれば、小洒落た緑のきつね紳士は時間きっかりに、カフェオレを手に現れた。
朗らかに笑いながら言うことには。
「いや、さっきすごいものを見てしまったよ。
『スケさん』がさらっと猫イツカ君を看破してね」
「マジッ?!」
「ああ……」
ソラとなぜかイツカがおどろいて、イズミは深くうなずいて納得。
「まあ、もしかしたら黒い子猫ということでイツカ君を重ねただけかもしれないからね。そんなわけで結論を出すには条件を整えての実験が必要だけれど、とても興味深い光景だったよ」
「なあエルカさん! 実験ってやっぱ、黒いにゃんこと俺まぜて見分けさせるんだよな? 俺まざりたい!!」
と、ぴーんときたイツカがくいついた。
現金すぎる反応に、エルカさんをはじめ、みんながぷっと噴き出した。
おれはうさみみパンチでツッコミをいれたけど、それでもやっぱり吹いてしまった。
「それで、エルカさん。
スケさんたちは、第六陣に参加することになりそうですか?」
ひととおり笑っておちつくと、おれは本題を切り出した。
エルカさん、作者もその実験見たいですッ!!
なお一部分、出オチになってるのは仕様です。
次回、続き!
お楽しみに!!




