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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_89 蘇るチカラ! 第六陣に向けて!

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Bonus Track_89-2 帰ってきたもの、見送るもの~アスカの場合~

 対魔王軍・第五陣はさいわい、空振りと言っていい結果。

 安堵の顔で帰還した一同を、安堵の顔で出迎えた。


 いつも食えない笑いの僕だが、このときばかりは普通にほっとしていた。

 もしも、つきかぜ隊が『戦果』を挙げる結果になっていたら――この間まで学生だった『カルテット』が、誰かの命を奪う結果にでもなっていたらと思うと。

 周りの大人たちもそれは同感のようで、再会を喜びあう『ハナイカダ』と『カルテット』を、優しい目で見守っていた。



 その週末は楽しい『お帰り会』。いつもの『スイシャン(スイーツシャングリラ)』で、軽食とケーキでおいわいした。


「ゴメン、心配かけちゃって。

 でもさ、もうちょっと。もうちょっとなんだ。

 あとすこしがんばれば、誰か人がそこにいなくても、『セント・フローラ・アーク』をつかえるシステムができるはずなんだ」


 コウはキラキラと目を輝かせて語った。


「そしたら、二人はもう出陣しろなんていわれることなくなる。

 俺たちも、戦場へはいかなくて済むようになる。

 みんな、自由になれるんだ!」

「あ。そっか。

『ウィッカーワークス』は『お守り』の発展形だから……

 作った人がそこにいる必要も。なんなら使うひとだってその場にいなくていいんだよね。リモートで発動と停止ができれば!」


 ルイさんがぽんと手を打てば、コウは身を乗り出した。


「そう! そうなんだよルイさん!

 最初さ、ウィッカーワークスは戦闘補助システムってことで考えてたから、どうしても『だれか人を強化したり技使えたりするようにする』って固定観念あってさ。

 でもワークスはもともとお守りなんだよ。そこに人がいなくても力を発揮することができるんだよ。

 いまは出力の微調整や機材がトラブったときの対応あるから、現場に俺たちいないとまだ厳しいけど。でも百キロ程度離れての維持や、複数同時発動はもうできるようになってるから、あとすこしなんだ!」

「すごいすごーい! それってもう、本家のわたしたちこえてる!」

「そんなこと……、えへへ、ありがとう!」


 目を輝かせるハナナさんに、そんなことない、そういおうとしてコウは止めた。

 そう、ワークスにはまた課題がある。

『セント・フローラ・アーク』を『ハナイカダ』の二人が発動するのは、TPBPが数百あれば一瞬。機材トラブルなんかもありえない。

 対してワークスで使おうとすると、現状は最低一時間程度かけての設営と、起動時だけでも数千にのぼるTPBP。そしてコウとシロウによる微調整が必要になる。

 最大のとりえは、本家をはるかに上回る規模と強度。これがすべての欠点を帳消しにしている、そんな状態だ。


 寸暇を惜しみ、研究開発は続いている。それでも、ワークス版のセンフロは、まだ本家を越えてはいるとはいえない。

『カルテット』を研究に専念させるため、次回は『ハナイカダ』に出動を要請できないか。そんな本末転倒な声がぽつぽつ出てきてもいた。


 水曜の第六陣はソリスと現地集合。彼らにまかせてセンフロなしにし、カルテットの研究時間を確保してはどうかというアイデアもあるけれど、それではソリスに誠意を疑われる、まして彼らが万一寝返った場合がヤバいというのでもめている。


 もちろんこんなこと、ハナナさんとルイさんに聞かせてはならない。

 万一彼女らが出撃を受諾し、捕虜になった場合はカルテットを差し出さねばならなくなる。そう説いて、その声を抑えていた。


 それもこれも、いつもの笑顔で意識の外に。


「アスカ君とハヤト君も、いつもありがとうね。

 はやく、指揮官なんてしなくてよくなれば、いいよね」


 そのときかけられた優しい声に、僕は不覚にもウルッとしてしまう。


「あんがとねーふたりともー!

 おれならだいじょぶだよ、これはこれでやりがいのあるおしごとだかんね!

 まーハーちゃんはおれの世話で大変だけどこれもまあやりがいのあるおしごとってことで!」

「お前、自覚あったのか……」

『そーそ! あーちゃんはハーちゃんに苦労ばっかかけてねえ?』

「おいライカ。いっとくがお前らも苦労ふやしてるからな?」

『てへっ?』


 だが、僕はいまの状態は、いやではなかった。

 確かに、ラクなしごとではなかったけれど――

 事態を掌握できている。一歩一歩、目指す真の勝利へのコマを進めていけている。

 なにより、ハヤトがあぶなくない。

 そのことは僕に、大きな喜びを与えてくれていたから。


「まーでもこの戦いがおわったらおれも『魔王島』いきたいかなー。

 プールはいって露天風呂はいってー、ビーチで遊んでバーベキューしてー、ソーやんのつくる南国スイーツたべて、おひるねどころでゴロゴロしてさー♪」

「ほんと充実しまくってるよね『魔王島』のビーチリゾート……ちょっとうらやましいかも」

「魔王軍水着もカッコいいしねー!」

「はーいきたーい! ほんとはやく戦い終わってほしいわ!」

「ねー!!」


 そんな、楽しい時間もつかの間。

 月曜の午後にはふたたびカルテットは基地へ招集。火曜にはまた『つきかぜ』に搭乗し、出航していった。

 心配を笑顔につつみ、見送る『ハナイカダ』はけなげの象徴のように注目されていた。

 もしも彼女らが悪評にさらされ、やけのように出撃を決め、取り返しのつかないことになっては困る、という政治的判断――もっというなら、タカシロのチカラによるものだった。


 かつて僕が『赤竜管理派』を糾弾しようとしたときは、結局はこれに鎮火されてしまった。

 けれどいま、友を守るためならと、このチカラを『利用』している状態だ。

 皮肉なめぐりあわせにため息をつけば、ハヤトのおっきな手が頭に乗っかった。


「……うん、だいじょぶ。だいじょぶだよ」


 それだけで胸がポカポカになった僕は、へへっとハヤトに笑い返した。


最近、とみに体温調節がへたくそになった感じがします。

子供がえりかっ!!


次回、たぶんエルカさん視点!

どうぞ、お楽しみに!!

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