88-4 サプライズ! 本物きちゃいましたの上映会!!(1)
ゴツゴツっぷりのかっこいい、パワーアップ・ツノトカゲ装備のイザヤ。
背中のたてがみがたまらない、フサフサマシマシ・アードウルフ装備のユウ。
二人が堂々入場してくれば、会場は沸いた。
一ツ星時代に『わりのいいバイト』に引っ掛けられ、服役を余儀なくされた二人。
その後3S憑依実験の被検体とされ、最後はセレナ・タカシロと『闇夜の黒龍』の作戦で使い捨てられた悲運の持ち主たちはしかし、あきらめなかった。
ノゾミ先生や、ミツルとアオバ、そして騎士団のバックアップをうけつつ、頑張った。
ことの原因となった実験の成果も、自分の力にした。
そうして、半年とすこし。二人は卒業エキシビション・バトルの舞台に立っている。
アント退治に特化してのしあがってきたふたりの門出を飾るのは、もちろんアント系モンスターとのバトルだ。
アリ、というとリアルでは、小さくてかよわいイメージだが、かれらはデカい。強い。そしてやっかいだ。
かならず徒党を組み、統制の取れた動きで攻めてくる。
個体の質と数によっては、スパイダーマンティスを超える脅威ともなりうる、それがティアブラのアント系モンスターだ。
記念すべき今回のセッティングは、一味違うものだった。
人間サイズのアイアンアント10体を先兵に、ひとまわり大きなフルメタルアント5体を中核として擁した群れの真ん中に、頭一つ抜けて大きな紅の個体――クイーンアントが鎮座している。
いや、そこまでならばよくある布陣。だが今回はスペシャルだ。
クイーンアントが変形する。胸から上の部分が大きく反り返り、赤い髪とドレスの妖艶な美女の姿に。
彼女はそして、セクシーな中にも凄みのある声でしゃべり始めた。
『ひさしぶりだねえ、アンタたち。
アタシを、アタシたちをおぼえているかい?』
「えっ、『アンナと楽しい仲間たち』?!」
『その通り。嬉しいわよ、ボウヤ』
ユウが口にしたのは、ティアブラで人気のボスグループの名前だ。
美女の姿を宿したボスと、彼女のしもべたるアントたちからなるかれらは、初級中級上級と三パターンで相手をしてくれる。
初級編はだいたい誰もがC~Dランクでお世話になる定番イベント。中級編はAランクパーティー相当でないときつく、上級編はSランクでもなめてかかると負けるくらいの鬼難易度。
逆に、上級編をクリアすれば『世界的アントハンター』として勇名が轟く。
『イザヨイ』のふたりは、このタイトルを有している数少ないプレイヤーだ。
けれど、そのとき戦いは決してラクなものではなかったときく。
つぎからつぎに召喚されるアントの群れを、片っ端から狩ってはBPHPに変えまくり、一歩下手すれば鬼神堕ちという壮絶バトルを実に六時間かけて制したのだという。
イザヤがちょっぴり苦い顔になる。
「一年半ぶりか? あのときは手こずらせてくれたな」
『こっちこそ。
……でも、今回はそんな心配はないね?
なぜって、アタシたちがサクッと勝つからさ!
今のアンタたちを食らったら、どれだけ強い子が生まれるかねえ。
今度こそアタシの糧となりな、『イザヨイ』!』
「その言葉そっくり返してやるぜ!
今のお前たちを倒せばどんだけチカラになるだろうな?!
今度こそまるっと食らってやんぜ、アンナさんよ!!」
気の強いイザヤがバトルピックを背から抜き、びしりと差し向ける。
ユウも一歩下がって大鎌を構えた。
そう、『アンナ』は戦闘に敗北してもとどめを刺すことができない。イベントで確定逃げして、また次の難易度で登場する。
これまで彼女を倒すことのできたものはだから、正確には『いない』。
イザヤとユウは、それに挑むのだ。
試合開始のゴングが鳴る。同時に、先兵アリたちが横一列で一斉に突撃してきた。
『しもべども! やっておしまいっ!』
こんな場合だと、ユウが大鎌の必殺技『ウインド・リーパー』で一気に足元を薙ぎ払うのが定番だが、相手は高い知力と、二人との対戦経験を持つ『アンナ』。ユウが準備動作に入ると同時に追加命令を出してきた。
「まかせて!『ウインド・リー……」
『かかったね! 『城壁崩し』!!』
アンナの周りを固めていたフルメタルアント、そのまわりにさらに現れたアイアンアント20匹が、計150本の足で一斉に大地を叩き始める。
轟音と、立ち込める土煙ともに発動したのは、強烈な地震攻撃。
彼らの立つ場所を除くフィールド全体を効果範囲とできるうえ、まともに食らえば強化なしの建造物は崩れ落ちる、脅威の攻撃だ。
もちろん相手が無対策の人間ならば、一発アウト。
何も見えなくなったフィールドに、アンナの高笑いが響く。
『あっははは! まさかこんな簡単な手に引っかかるなんて。
ユウ、アンタがちょっと待って『アースクェイク』を使っていたなら、この攻撃もしのげたろうにねえ。
まったく、いろんな意味で残念だよ。
やはり食べるのはやめて、ペットにでもしようかねえ? 生きていたらの話だけれど!』
「おれも残念だよ! こんな簡単なフェイントに引っかかるなんてさ!」
『なにっ』
「忘れたのか? 俺たちの同級生の、現役時代の通り名を!」
『……まさか』
「「『空跳びにゃんこ』だっ!!」」
もうもうたる土煙のうえ、フィールドの天井近く。イザヤが、ユウが多段ジャンプで滞空していた。
二人のブーツの底にあるのは、イツカの『ぴょんぴょんにゃんこブーツ』にあるようなにくきゅう型斥力発生ユニット。
中を蹴り、鋭く急降下する二人は、アントたちの死角から、次々と攻撃を仕掛ける。
「『クリムゾン・ブラスター』! からのっ、『メテオランス』!!」
必殺の『爆裂効果付き目からビーム』に続いて、本人がピックを突き出し飛び降りてくるイザヤの大胆コンボが、アイアンアントのうち28匹と、フルメタルアント一匹を撃破。無双レベルの爽快攻撃だ。
「『スカイ・リーパー』!! からのっ、『アース・クェイク』!!」
一方ユウは手堅く攻める。空中からの真空薙ぎ払い攻撃で、イザヤの背後の安全を確保。地震技『アース・クェイク』をアンナに仕掛け、これ以上の召喚を食い止める渋い働きをみせる。
『ふん、やるねえ……
前言撤回だ。
お前たちはこの場で食らう! 頭のてっぺんからしっぽの先まで!
ああ、こんなに欲しいニンゲンどもは初めてだ。ここからは完全に全力でいくからねッ!!』
手勢の八割を仕留められつつも、アンナはむしろ歓喜の表情。
その背中で、虹色を透かす翅が広がった。
遅れ申したっ!
次回、決着! お楽しみに!




