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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_88 増える仲間! 講和前夜のあれやこれ!

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88-2 小さな戦士と、解けた誤解

2022.12.04

誤字修正いたしました!

ツヤマ→ツシマ

『かもめ隊』を島に迎え入れたその夜に、少し前の夢を見た。


『ソリステラスで一番許しがたいと思うのは、子供の姿を利用してくることなんです』


 あれは、ソリステラスに行く直前のこと。

 月萌軍関係者と話したときに、そんなことを言っていた。


『破壊工作や戦いを仕掛けてくるのは、百歩譲って仕方ありません。

 でもそこに、かわいらしい子供の姿のアバターぶっこんできて、えげつない揺さぶりかけてくるってのが許せないんですよ』


 そのひとと会う機会は以降なく、それは誤解だと告げる機会は、ついぞなかった。

 そんなことをふと、思い出した。


  * * * * *


 その人選を聞いたとき、いやそれハードワークすぎない? と思ったものだ。

 レム君が島にやってくる。ステラと魔王軍の講和に先立つもろもろの調整官として。

 彼の優秀さはあきらかだ。くわえて、おれたちとも仲がいい。

 でも、彼はまだ11歳(もうじき12歳)。月萌ならば、特段の理由がない限り、小学校に通っているころだ。


 それが、遠いこの島に赴任してくる。

 リンさんも一緒に来てくれるというし、心配には及ばないのだろうけれど。でも、やっぱり心配になってしまう。


 くわえて、ここには『かもめ隊』のみんなもいる。

 今日の今日までかれらにとって、ソリステラスは不倶戴天の怨敵だった。

『かもめ隊』を苦しめたソリステラスの作戦の、いくつもにレム君はかかわっているはず。

 彼らとレム君リンさんが同席しなければならない機会は、とくに注意深く避けなければならない。


 それは最初に島に上がったときは、その場にいた(っていうかバトってた)ソリスの皆さんもノリで『おめでとー!』してたんで『あ、はい、どうも』だったけど、普通に対面するとなるとそうもいかないだろう。

『かもめ隊』ウェルカムパーティーまでには、できることなら、なんとかせねば。



『かもめ隊』を島に迎えた翌日。

 そんなことを考えながらおれは、『到来の間』に向かっていた。

 そういえば、この『到来の間』。瞬間移動用の固定式魔法陣を据え付けた小さな建物なのだが、これもそろそろ何とかしたほうがいいのかもしれない。

 みためこそ表面換装マスクエフェクトで壮麗だけど、実質はいまだにまっ四角にぽつんと窓ドアが開いただけの『豆腐ハウス』のままなのだ。

 できるならここにもう少しちゃんと、応接としての機能も持たせたい感じがする。

 おれたちの部屋を置かせてもらっている本館にも応接や客間はあるし、いいっちゃいいのだろうけれど。


 なにより今は本職たちが忙しい。

『ステラ杯』や、ソリス軍とのバトルの影響を調べて、その補修、ときには改良。

 ざっと舐めただけでも、舞台となったフロートのメンテナンス、会場のしつらえの撤収。漁礁がひとつ、船着き場の一角がちょっと壊れた。酷使された防御結界発生装置が悲鳴を上げている。あと、うっかりライカが海の家の屋根を爆破した。


 ソリスとの戦いは沿岸部だけに終始した。だからまあ、この程度はかわいいものと分かっているが、どうしても人手はかかる。

 月萌艦隊は、来週にも再編されてやってくるだろう。そのときには、島に近づけない戦いをしたい。備えはどれだけしても、しすぎることはないのだ。

 だから本音を言えば、早くステラ領との講和を成立させたい。

 そうすれば、支援を表明しているスポンサーたちも、堂々と来島できる。備えも進むというものだ。


「……ナタ! カーナータ!!」


 と、気が付けば、イツカに呼ばれていた。


「なに、どうしたのイツカ?」

「あれ! レムとユリさんじゃね……?」

「?!!!」


 みれば、私服のユリ・ツシマ隊長と、レムくんが鉢合わせていた。



「こんにちわ。どうしたの? お兄さんかお姉さんに会いに来たのかな?」

「あの、……はい。僕は、イツカさんとカナタさんに……」

「………………もしかして」


 ユリさんは腰をかがめ、別人のような優しい笑顔で話しかけた。

 が、危機はちっとも去ってなかった。

 彼女も、ステラ領から調整官が来ることは知っている。レムくんの言葉から、彼がその人である可能性に気付いてしまったようだ。

 じっ、とレムくんを見つめる。


「えっ? あの? お姉さん、は……」

「きみ。それは表面換装マスクエフェクトじゃない、真の姿かな?」

「は、はい。そうです……けど……」


 その瞬間、ユリさんはがくりと膝をついた。

 さすがにこれは黙って見てはいられない。イツカと二人駆け寄った。


「どうしました?」

「ダイジョブかユリさん!」

「…………なんてこと…………

 ステラ領では『ほんとうに』こんな小さな子が戦っているのか?!

 まだ小学校に行っているような年じゃないか……いったい、どうして……」



 かなりショックを受けた様子。おれたちはユリさんとレムくんを連れて、ミーティングルームへ移動。

 そこでハーブティーをお供に、ステラでの貴族のこと、レム君の身の上話をすれば、ユリさんは驚きつつも、折り目正しく詫びてくれた。


「そうだったのですね……ステラの貴族は『選ばれしもの』として、遅くとも14の歳から戦い、働いているのですね。

 そしてあなたはご家庭の事情で早くから軍務に……

 知らなかったとはいえ、私はあなたに、大変失礼なことをしてしまいました。

 この通り、お詫びいたします」

「いえ、ご存じなければ無理のないことです。

 こちらこそ、お約束より早く来てしまったから……驚かせてしまってごめんなさい。

 あの、……僕たちに会うのはその、うれしくないことと、伝え聞いております。

 こんな形で申し訳ないのですけれど、皆さんにつらい思いをさせてしまったことを、お詫びさせてください」


 まさかの鉢合わせは、まさかの結果に終わった。

 ユリさんたちがソリステラスを憎む理由に『工作員のアバターに、小さなかわいい子供の姿を使い、えげつない心理的揺さぶりをかけてくる』というのがあったのだが、これが誤解と判明。

 むしろ、そんな小さな子供が軍用アバターを操り、命を懸けて戦っていたこと、それに憎しみをぶつけていたことにショックを受けた様子で。

 さらに彼らがそれを『女神より賜った聖務、かつ、生きる糧を得るためのこと』として――すなわち自分たちと同じ理由で行っていたと聞けば、憎しみのほとんどは霧散してしまった。


 これにはむしろレムくんとリンさんの方が驚いてしまったほど。

 それでも、心を縛る憎しみがひとつ解けた『かもめ隊』メンバーの顔は、ぐっと明るくなったのだ。

 心を落ち着かせる時間のいる人も、もちろんいるけれど。

 それでも彼らのあたらしい時間は、優しい海風と共に、ゆっくりと動き出したようで。


『明日の学園定例闘技会では、『イザヨイ』の卒業エキシビションがあると聞いております。

 その上映会に、我らも参加させてもらえませんか。

 準備に手が必要でしたら、もちろんお手伝いをいたしますので』


 その日のうちに、そんなうれしい申し出がもらえたのだった。

今回、もうちょっとアホなはなしになる予定じゃったんじゃ……(暴露)

でもすぐその展開が来る予感しかしない。

かわいいはせいぎ。


次回、待ちわびた晴れ舞台にのぞむイザヨイに焦点が当たる予定です。

どうぞ、お楽しみに!

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