88-1 魔王軍『かもめ隊』、新生活を始めます!
「ようこそわが島へ――!!」
「おつかれさまなんだなー♪」
「待ってたよー!」
『つきかぜ』隊に丁重にお引き取りをいただくと、おれとイツカは旗艦『かもめ』に並走する形で、『月萌シーガル先遣隊』一行を島まで誘導。
『かもめ』号、ならびに遊泳兵、飛行兵からなる一行がぶじ島にたどり着けば、そこここから一気に拍手と歓声が沸き上がった。
さすがにクラッカーは鳴らさないが、どっからか取り出した万国旗をふりふりしてるやつもいる。ぴょんぴょんはねてるひともいる。みんなみんな、笑顔の歓迎だ。
「……これ、は……?」
『かもめ』の甲板に立つ、ユリ・ツシマ隊長はぼうぜん。
ほかの皆さんもポカーンとしている。
「見てのとおりです。
おれたちはみな、あなたがたの窮状を知っていました。
頼まれたんです、月萌内の心あるものから、あなた方を救ってくれと。
どうか、ゆっくりと羽を休めてください。
おれたちも故国を追われたもの。おれたちに、そしておれたちを愛してくれる者たちにとって、あなた方もまた、捨てては置けない仲間なのです」
「そーいうこと! ここをウチと思って、のんびりしてなっ!」
イツカがピーカン笑顔で親指を立てて見せれば、目元を抑える人が続出。どこからか、すすり泣く声も聞こえる。
隊長本人もまた、背の翼を震わせている。
それでも、誇り高き隊長はびしりと決める。
「魔王様方、いえ、我らが救い主よ。
われら『元』月萌シーガル先遣隊30名、謹んでご厚情を頂戴します。
――一同、敬礼ッ!!」
涙を流している人もいた。
顔をくしゃくしゃにしている人もいた。
それでも、白の制服のまぶしい30名は、一糸乱れぬ敬礼を、おれたちに向けてくれたのだった。
この島には、ソリステラスの人もいる。だから最悪、先遣隊として使っていた防衛拠点への移送も覚悟はしていたが、彼らはここにいることを選んでくれた。
ひとつには、『大神意』の影響下から抜けたため。
いまひとつには、総司令の言っていたことが間違いでないからだろう。
いっとき『魔王の捕虜』となり、その後自発的に月萌空軍基地に帰ったルシードとマユリさんでさえ、一週間近く軍施設に閉じ込められっぱなしだったのだ。
『ハグレドリ隊』が月萌に戻れば、言いがかりのようにして軍法裁判にかけられる、それは十分に現実味のある未来予想だった。
「我らは容疑をかけられておかしくない状況にいる。
かつて我らは『ステラ杯』警護任務に反感を示していた。そして実際、秘密裏に警護は行ったものの、妨害に来たやつらのほうが、月萌軍のふりをしていた。
これらを総合すると、任地で敵と示し合わせて背任行為を、私情に基づき行ったという言いがかりをつけられうる。
そもそも我らは切り捨てられる予定だったからな。当然に対抗措置も取らなかったし――取ったところで握りつぶされたことだろう。
我らのしたかったことを代わりにしてくれる味方がいる、と私はあらかじめ告げられていたのだ。裏でつながっていたのだ、あいつらは」
真新しい療養施設のラウンジで、島のハーブのお茶を手に、ルリ・ツヤマ女史によく似た彼女はいみじくも語った。
「我らはその掌の上で死ぬ予定だった。けれど、生きてしまった。
それでも月萌には帰れない――あいつと、あいつの息のかかった奴らが幅を利かせている限り。
ならば、強弁を弄してまで身柄を保護してくれた、貴方方に下るほうがよいというものだ。
ソリステラスを、その軍人を味方とは、まだ思えずにいるけれど……
そのわだかまりがほどけたら、貴方方とともに戦わせてほしい。
ソレア様も、あそこで我らを救ってくださった。そのことは、確固たる事実なのだから」
「ええ、よろこんで」
意に染まぬ任につき、その行く手は切りすてられての死。そんな状況にいた彼女らのココロは、すっかり疲弊していた。
しばらくはただ、のんびりと療養していただく。
この島になじみ、元気を取り戻せたら、あらためて歓迎パーティーを開く予定である。
たとえ彼女らの参戦が、月萌国軍との決戦に間に合わなくともかまわない。いやむしろ、戦わせるのは忍びない。
なぜって、おれたちもそうだけど、月萌はやはり、故郷なのだから。
それでも彼女も隊員たちも言ってくれた。おれたちのためになら、戦いたいと。
ありがとうと、ひとりひとりと握手した。
かくして『ハグレドリ隊』、あらため『かもめ隊』30名が、魔王島での新生活をスタート。
彼らが最初にしたことは、かれらのための療養施設に名前を付けること。
すったもんだの大論争の末、名前は素直なネーミング――『かもめ荘』に収まったのだった。
いきなりにわか雨ふってきてえらい目にあいました……
次回、放送された顛末を見た人たち。
ダンサーズ@研究所、女子たち@スイーツシャングリラの予定です。
どうぞ、お楽しみに!




