87-5 やってきた! 暁の女神のドロップキック!
2022.07.10
ソレア様の人称代名詞が間違っているように見えた? 残像です! ごめんなさい!!
女神ソレア、降臨。
その威光は、魔王島全海域に広がった。
敵味方とも一瞬手を止める。
次いで上がったのは、ソリスの民の歓声だ。
『みんなー!
ありがとね、これでボクもここにこれたよ――♪』
ソレアさまはニコニコ両手を振っている。
このノリ、もうほとんどアイドルライブである。
『さってと、それじゃはじめよっか』
『おれでよろしければ。
でも、錬成陣は描かせてもらえますか。
おれ、かよわいアナウサギですので』
ソレアさまも、当然状況はわかっている。
『ハグレドリ隊』がもしも狙撃してきたとしても、彼女を援護したように見える位置で立ち回ってくれる。
その辺は安心だ。だから、おれも全力を出す。
イツカなら、イツカブレード一本あればソレアさまとも平気でガンガンやりあえるだろう。だが、おれにはそこまでの力量はない。
だから、助けを得るのだ――このフロートに、青空に、陣を描いて。
空中描画、立体多重配置、カスケード発動。
アークさんにはまだまだ及ばないけれど、空に手を伸ばし、地にうさ耳をもぐらせて。
たちまちおれは、五重の障壁と虹の輝きをまとう。
ソレアさまはニコニコと拍手してくれた。
『すごいすごいっ!
アークに教わったんだね。この組み立て方、アークっぽさを感じる。それでて、粗削りだけどカナタらしくて!
まったくもう、謙遜が過ぎるぞっ』
「謙遜だなんて。
ソレアさまが描画を待って下さらなければ、おれはとっくにオーバーキルです」
そう、ソレアさまがその気になれば、現れた瞬間にだっておれを瞬殺できたのだ。
ここにいるのがイツカだったら、現れた時点でやっほーいとドロップキックもできただろうに。
レディに残念な思いをさせたのは、申し訳ない限り。でも、その分くらいは働こう。
『ふふっ。
そうしたくない、と思わせるのもまた実力だよ。
お手柔らかに!』
「よろしくお願いします!」
『よーし、いっくよぉぉぉぉ!!』
ソレアさまが、高く高く舞い上がる。今度こそ、ドロップキックだ。
そのとき、ついに聞こえた。
こちらに向けて、海底からの砲撃の音。よし!
あえて、受けた。一発、二発と重い衝撃がくる。
幸い三発目は軽くかすめて、四発目は当たらず消えた。
さすがに兵器、これはきつい。あと少し強化が足りなきゃアウトだったかもしれない。
『おっとぉ?!』
ソレアさまが空中で器用にストップ。そして砲撃の源をまっすぐにじっと見た。
『なになにー、援軍かな?
うーん、ボクとしてはタイマンの気分だったんだけどなあ。
ま、いいや。改めてやろう』
「ええ」
ソレア様にも『聴こえ』ているようだ。『ハグレドリ隊』の砲撃を、同志たるソリス軍への危険を顧みない攻撃、裏切り行為と強弁し、その討伐を命じる月萌本土からの通信が。
いくつもの抗議の声も『聴こえ』る。そりゃそうだ、完全におれだけを狙い、おれだけに当たっていたのに、これはひどい。
まあ、攻撃しなかったらしなかったで利敵行為と断じていたのだろうけれど。
胸糞だが、想定の範囲内の展開である。
月萌寄りに展開していた艦隊が、しぶしぶ感を漂わせながら前進してくる。
おれとは即座に通信に声を乗せた。
『ハグレドリ隊よりの援護、月萌司令部よりの討伐命令、ならびに月萌艦隊の前進を確認!
これよりハグレドリ隊の救援に向かう!』
よし、フェーズ移行。おれはそちらに向けて全速で、フロートを駆った。
だが、なんかがおかしい。
ふとふりむくとそこにはソレアさまがいた。
「って、ソレアさま? どうしてここにいらっしゃるんですか?」
『いや、あれってボクを援護してたんだよね?
月萌のみんなは誤解をしてるんだ。ボクが誤解を解いてあげなきゃでしょ?』
ソレアさまはいたずらっぽく笑った。
数日涼しかったのにまた暑いです……もーバテバテです……
次回、ハグレドリ隊視点でシメの予定です。どうぞ、お楽しみに!!




