87-4 ソリスとの密約と、ビーチラインの攻防!
『皆さんに、お願いがあるんです。
この戦いを契機とし、自国から切り捨てられる運命の者たちが月萌にいます。
かれらをこちらで保護したいんです。
そのために――
『そんなことは知らぬふり』でガンガン戦ってくれませんか。
彼らからの砲撃は、こちらで対処します。けして皆さんに累は及ぼしません』
『ガンガン戦えというなら大歓迎だ。なに、流れ弾程度気にするな』
『そーよそーよ! 海辺のパレーナはさいきょーなんだから! ねっ!』
『おい。』
そんな会話をしたのは、少し前のこと。
だからパレーナさんは、『後片付け』の内容について具体的には触れず。
おれもまた、かれらの背中に銃をむける。
ハグレドリ隊への対処、保護については、月萌側に悟られてはならない。もし悟られれば、彼らを保護する絶好のタイミングが失われかねないためだ。
よって、フロートの上に『残された』おれが、射撃を始めることは織り込み済みだ。
巨大な白鯨がぬっ、とこちらに向き直る。
「やはり来るか、カナタ。
いいぞ、私が相手だ。抜けるものなら、抜いてみよ!」
大きく吠えると荒波を呼び出す。へたしたらこのフロートごと洗い流す勢いだ。
対しておれは――「ごめんちょっと動かすよ!」上り坂状に神聖防壁を張り、同時に前方へフロートを移動。ぐわんと来る波を受け流し、くぐり抜けて難を逃れる。
「のっわったぁ?!」
「ぐぬっ?!」
襲い来るかなりの振動、そして加速度。
おれとイツカ(赤リボン)は、おれが生やした根っこで体を支えたのでまあよかったが、白イツカとライアンさんはさすがにバランスを保ちきれずよろつく。
「ちょおおカナター! むり! それむりー!!」
「さ……さすがにここで続けるのは厳しいな! どうするイツカッ?」
「べつのフロート行こう! そうだな、あっち!」
「心得た!!」
大小のネコ科たちはぴょんぴょんと宙を跳ね、離れたフロートに避難していく。
のこった黒にゃんこもかんべんしてーといった様子で耳を折っている。
「うえええ……俺もあっちがいいー……」
「よーしイツカ! それじゃあパレーナさんをよろしくっ!」
「っしゃあー!!」
おれはイツカを支えていた根っこを操り、イツカをパレーナさんに向けて投げた。
パレーナさんは嬉しそうに人型に戻り、水面に立って徒手で構えを取る。
なんと揺れる波の上、しゃんと立っている。レアスキル『上級水上歩行』だ。
これは、かっこいい。セナやタマキはもうたまらないんじゃなかろうか。
「それはいい作戦だな!
イツカお前、もう水の上くらい歩けるだろう? やるぞ!」
「いやさすがにそれむちゃぶり!!」
もちろんイツカにそんなスキルはない。宙を蹴って跳ねるのみ。
それでももちろん、ノリノリで向かっていくのだ。わが相棒ながらさすがである。
一方でおれはフロートをさらに浮上させ、空からビーチエリア付近に援護射撃を降らしはじめた。
潮に浸されたビーチはすでに、海の民の領域だ。
もちろんこちらにも海の民の同志はいるが、多勢に無勢。かれらは作戦通りビーチエリアから退却。河口につめる一隊に合流し、川からの遡上を防いでいた。
堤防の上では、船から跳んできた(撃ち落とされなかった)平原の民が、われらが陸戦部隊とガンガンやっている。
ゆっくりと平原の民が押しこんでいるが、あくまで作戦通りだ。
なぜなら、堤防の上で戦っていたらハグレドリ隊、それに続く月萌本隊の絶好の的となってしまう。
陸の戦いは、外から狙いづらい、堤防の内側で。
一方でおれとイツカは、目立つフロートの上にいて、月萌がわからの第一射に対応する手はずである。
やがて陸の戦いが、完全に堤防の内側へ消えれば、空の彼方から飛来する赤い光。
昇る朝日のごとき、神々しい輝き。ソレア様だ。
彼女の登場と退場をもって、今日の戦いは次のフェーズに移る。
おれは大きく深呼吸して、親しみやすくも神々しい、赤い女神にむきなおった。
うちで使ってるポケットWi-Fiがきのう不調を起こしまして……
なんと再起動すら受け付けず……
昨晩一文字も書けませんでした(号泣)
(いや割り切ってスマホで書けよって話ですが復旧試みてる間に持ち時間が尽きた)
仕方なく電源コード抜いて一晩放置、電気を抜いたらめでたく今朝復活です^^
どうなることかと思いますた。
次回、メロメロしちゃうセナと、できないタマキ、の予定です。
どうぞ、お楽しみに!!




