Bonus Track_87-4 あの波、この波~アキトの場合~
『ステラ杯』とその後の様子は、臨時動画学習として全校生徒が閲覧することになっていた。
せっかくだから、うさねこと騎士団で集まって見ようか(もちろん自由参加)ということにして、食事をはさみつつみんなで見ていた。
もちろんあとでレポートを出さなければならないのだけれど、そんなこと忘れるくらいの盛り上がり。
タクマやエルメス殿下の活躍ぶりに歓声が上がり、白カナタ、白イツカの魔王っぷりには『もう完全にボスキャラだろあれええ!!』の悲鳴がこだました。
もちろんわが相棒セナは、いつもどおり一貫してクールに見ていたのだが……
パレーナ八世が『大海嘯』を放った途端、だれおまレベルにハイテンションに。
綺麗な海色の瞳をウルウルさせて、カッコイイを連発だ。
「カッコイイ……カッコイイッ……!!
卒業したら絶対弟子入りする!! 絶対だからっ!!」
「セッ、セナさん?!」
「セナさんが壊れたあ!!」
セナはきれいめクール系男子と認識されている。そのセナが派手にぶっこわれたもんだから、周囲はもう大騒ぎだ。
というか、俺をぬいぐるみかなんかのようにむぎゅうっと全力で抱えてるもんだから、正直いって若干苦しい。ギブギブと腕を叩いてミライあたりの救援を待つ……が、たぶんだめだこれは。
ミライは大きな瞳ではらはらと画面の向こうを見つめている。
「だいじょぶかな。あんなすごい波起こしたら、あそこのお魚さんたち……!」
見回せば、同じように不安な顔をしている人たちもたくさんいる。
フォローしてくれたのは安定のミズキだ。
「大丈夫だよ、ミライ。
もしそんな破壊的なものだったら、あの波があんなに真っ白できれいな訳がない。
あの波は普通の海の波と違う。確かに海に力を借りてるけれど、あの部分はパレーナ八世が出現させた『技としての』波だ。
しかもその破壊力が行ってるのは、あの防御結界だけ。もちろん、生き物も漁礁も巻き込んでない。
さすがは海の民を束ねる六獣騎士だ。海を荒らさず、なおかつあんな破壊力を生むなんて、生半可な力量じゃない。
海辺でだったら、イツカやカナタとも互角以上に戦えるんじゃないかな」
セナもようやくおれを解放し、すっと指をさす。
「ミズキの言うとおりだ。
ほら、ここ。パレーナ八世、中にいるよ。結界以外のみんな無事だ」
頼れる二人のフォロー、そしてかわいらしいミライの笑顔で、あっという間に集会所は明るい雰囲気になった。
「よかったー!
えへへ、パレーナさんてすっごくすごいんだね! おれもファンになっちゃった!」
「だよな、だよなっ!
ミライも一緒に行こうか、パレーナさんに会いに!」
「うんうん! みんなでいこっ!
一緒に泳いでバーベキューやって、すいかわりやって、ビーチバレーもやるの!」
きゃいきゃいとはしゃぎだす二人。なかなか新鮮な構図だ。けど。
「……俺、あれにかなう気がしない」
べつに俺とセナは、ラブラブなわけでもなんでもない。
けれどやっぱり人として、自分のバディには『世界で一番カッコイイ』と思ってもらいたいものであって。
そんなきもちがぽろっとこぼれてしまうと、ミズキが笑って肩を叩いてくれた。
そういえば、ミズキも同じ立場なのだ。
しかも相手は、ガチのボスキャラに成長したイツカとカナタ。
それでもミライは、ミズキが大好きで、心から信頼している。
今だってほら、集会所を走り回ったらミズキのところに戻ってきた。
「ねえミズキ! ビーチパーティーやろうっ!」
「うん、もちろん」
そして、セナも俺のところに。
「アキトもいくよな?」
「もっちろん!」
笑いを含んできらきらきらめく、小さな海に見つめられたら、俺もいつだって、笑ってしまうのだ。
うぬう、ほんとは後のほうにハグレドリ隊の話も入れたかった。なんならハナミズキとカルテットも入れたかった。うん、無理だろそれorz
次回、そのへん(爆)お楽しみに!!
緊急のお知らせ
まさかのブックマーク200達成が明らかになりました(減らないうちに書いておくスタイル)!!
うあああありがとうございます!! どうしようありがとうございます!!
これはいろいろ急がねばー!!




