87-3 押し寄せる! 空と海の民の猛攻!!(2)
遅くなりました。取り急ぎ投稿まで!
ルリアさんたちがけん制の射撃を飛ばしつつ、降下を始める。
タイミングを合わせ、海の民の船団が、島の防御結界に突撃をくらわし始めた。
「っしゃあ――!! カチ割んぞおおお!!」
「そーれっ!!」
「どうりゃあああ!!」
一部の海の民は海に飛び込み、大型の海洋生物に変身、みずから体当たりをかけてくる。
「なんだ! 思ったよりも固いぞ!」
「なんっのこれしき――!!」
一発、二発。そのたびに響く重い音。苦戦している様子だ。
その原因のひとつは、海面近くの結界は上に比べて厚くしてあったこと。
もうひとつは、この島でも波力発電を用い、さまざまなエネルギーを得ていること――ただし構造をとびきり頑強にすることで、近くの海でザバザバやるほど、よりエネルギーが得られるようになっている。
これを防御結界のエネルギー源として使えば、『海中や海面そばから壊そうとするほど強化される防御システム』が出来上がるというわけだ。
そう『本番は上陸してから』といっても、簡単に本番を来させるわけではない。
その前に海の民にはしっかりと消耗しておいてもらわねば、増援に上がってきたかれらにやられてしまう。それではだめなのだ。
ガチで戦い、ガチで勝ち、ガチで魅了する。
それが今日の対ソリス戦のモットーだ。
「ふむ。
皆、一旦止まれ!
道を開き、待機せよ。
私が出る。結界が破れ次第、全速で突入せよ」
やがて、冷静沈着な白鯨の貴公子が声を上げた。
船べりからすいと身を躍らせれば、やがて聞こえる海鳴りの音。
ぶわっと毛並みが逆立った。
海面が細かく、不穏に波立ち始める。
じわじわと、寄せる水面が膨れていく。
やばい。これは確実にやばいやつだ。
ルリアさんたちが上昇。ライアンさんが、イツカが手を止めた。
「くるぞ」
「ああ」
「カナタ、フロートを壊されたくないなら浮上を。最低でも高度30mに」
「ありがとうございます!」
おれはフロートの操作用回線に直接割り込み、この近辺にある全フロートを高度50mに上昇。同時に島のみんなに、緊急指令を出した。
「大波が来ます!! 全員、堤防内まで退避!
大波が来ます!! 全員、堤防内まで退避――!」
言い終わるより先に、ビーチ隊の全員我先にと逃げだした。ここにいるメンツで止められるようなしろものじゃない、本能的に感じたのだろう。
ただし、一部逆方向にぞわぞわしたのもいるようだ。
「……やべえ、挑戦したい」
「やめておけイツカ、あの技は自然の力を味方につけて放つ。パレーナほどの使い手でなければ自滅するレベルの代物だ」
「うぐぅ~……」
ライアンさんにたしなめられ、イツカたちは頭の耳を垂らしてうぐぐ。
「自然をよく知り、それを味方につけること。お前たちもすでに行ってきたことだ。
よく見ておくがいい、お前たちの目指す道のりの、一歩先にあるのがこれだ」
力強く、よく通るライアンさんの声も、高鳴る海鳴りに飲まれていく。
けれどそんな中でもパレーナさんの宣言は、ハッキリと響き渡った。
「あまたの波よ、幾多の風よ。
一時その領を得るために、我とともに来たれ。
我はパレーナ、旧くからの汝らの盟友なり!
往くぞ、『大海嘯』!!」
それはまるで、海の神のみことのりのように。
海は昂ぶり、荒ぶり、駆け抜けた――今までびくともしなかった防御結界をアッサリさっぱりぶち抜いて。
身の震えを抑えつつ目を凝らしていれば、ちらりと見えた。
白い波頭のはざまに、白い大きなクジラの姿。
あれはそう、初めて会ったときに見せてくれた姿だ。
空いっぱいに虹のアーチを吹き上げ、背中に乗せて海原を渡ってくれた。
大きく、優しいその姿が今は、ひどく畏れ多く――同時に、それ以上に魅力的に見えた。
おれはうさぎ装備、濡れるの大嫌いアニマルズだ。だからあの波に飛び込みたいとは流石に思わないが、セナやタマキなんかはフラフラとなってしまいそうだ。
「っしゃあ――! さすが大将!!」
「とっこむぞおおお!!」
「お――!!」
軌跡のような突破劇に、海の民たちは意気あがる。歓声をあげながら波に乗る。
「まったくもう、相変わらずむちゃくちゃなんだから! あたしたちも行くわよ!!」
見上げる空では、ルリアさんたちも飛び出した。
おれは気を取り直すと、改めて両手の銃を装填。乗り込む背中たちに向け射ち出した。




