87-1 戦闘開始! ソリスVS魔王軍!
鬨の声も消えぬうち、二つのこぶしがぶつかり合う。ドンッと広がる衝撃。
ライアンさんも白イツカも、さすがにフロートをブチ割るヘマはしないが、ルリアさんが後方に吹き飛ぶ。
「あははやっぱこーなっちゃうか――!!」
といっても彼女はうっかり吹っ飛ばされたわけではなく、後方で待機していた空の民にサクッと合流するため、この衝撃を利用したのだけれど。
青の翼を大きく広げ、軽やかに離陸していく。
「まあ、われらの番がくることも確約されたことだ。今はできることを!」
同様の動きはパレーナさんも行っていた。
衝撃に逆らうことなく身をを翻し、豪奢な装束も気にせず海へ飛び込む。
さすがというべきか、きれいなフォーム。しぶきもほとんど上がってない。
なお、ソリス側代表の三人を送ってきた船は、とっくにもやいを解いて離れていた。
パレーナさんがするりと船べりを乗り越え、乗船。
全身ずぶ濡れのまま、勇ましく空に手を掲げ、よくとおる声を上げる。
「上陸艦隊、前進せよ! 後続隊は支援を開始!」
沖で待機していた船団のこちら半分が、おもむろに前進を始める。
一ダースはあろうかという船の甲板、その前半分には、ハイテンションの平原の民たちがぎっしり。ライアンさんとイツカの『爪と剣での殴り合い』にやんやと熱い声援を送っている。ときには「下がれてめえら! 船傾いてんだろうがゴルア!!」なんて船長さん(海の民)に叱られたりもしている。あっ、一隻転覆した。
だがたくましい彼らは、そのまま泳いでこちらを目指し始めた。たぶんこのフロートに上ってくる算段だ。それに気づいたイツカがおーいこっちこいよーなんて手を振ってる。
かれらはおれたち同様、水中での戦闘は苦手なのだろう。それを考えるといま、この時点で撃ち取るのがベストだけれど……そこはまあ、いいか。
おれたちには『海を荒らさない』という協定があるのだし、黒猫大魔王陛下が頑張ってくれるというなら、おれは後に備えてラクさせてもらうだけである。
ふとももから双銃『ウヅキ』『サツキ』を抜き、強化のミックスポーション弾をフル装填。おーいおーいとぴょんぴょんしている背中にめいっぱい打ち込んだ。
「よっしゃこっちもー! 撃ち方はじめー!!」
そんなおれたちの頭上を、ルリアさんの明るい声と、無数の射線が渡っていく。
はばたく空の民たちが、弓や必殺技を盛んに放ち、島の防御結界を削り始める。
こちらは五つの隊をW型に配置しているようす。前衛三つが射撃中。後衛はというと、前衛たちに向けオーブや護符、錬成陣を使って強化を施している様子だ。
強化といえば、海上を進んでくる船団のうしろ。距離を取って続く船からは、前を行く者たちに向けて強化技が飛んでいる。
平原の民は、遠距離系の戦いをほぼしないはずだけれど。はたしてそれは、海の民からの支援だった。
大丈夫、こちらも守りは固めてある。防御結界はまだ持つし、その内側ではさかんに強化が打たれている。
おれはそっと、さらに向こうの海底に意識を走らせ、もう一度前を向いた。
もう半分バテてます……あつすぎやorz
次回、続き! がんばりやすっ!!




