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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_87 激突! ソリスVS魔王軍!! 

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Bonus Track_87-1 たぎる血潮と王の器量! いとしき魔王への挑戦!! ~ライアンの場合~

 イツカたちが待つフロートには、船着き場が設けられていた。

 しかし、その巨大な本体は明らかに海面から浮き上がり、波の影響を受けぬ構造。

 正直に言って、ほっとした――俺にも弱点は多々あるが、その一つが船なのだ。

 もちろん、顔には出さない(ルリアがニヤニヤしていたが『言うなよ?』と視線でけん制しておいた)。

 船を寄せていけば船着き場に、ぽんとイツカが飛び降りてきた。


「おーらい、おーらーい! もやい投げてー!」


 明るい笑顔で大きく両手を振って、もやい綱を受け取り、手ずから船を係留する姿は、とても『世界の敵たる黒猫大魔王』なんかには見えない。

 いうなれば、魔王のコスプレをした、かわいいわれらが心の息子。

 俺たちはいったい何をしに来たんだっけ。一瞬本気でわからなくなった。

 だが、日焼けした手に手を取られれば、伝わる秘めた力量。

 一瞬で、血潮が沸き立つ。そうだ、俺たちは、戦いに来たのだった。

 目を伏せ、騒ぐ闘志をそっと秘め、俺とパレーナとルリアはフロート上に設けられた会見のテーブルに向かったのだった。



 だがそこで俺はもう一度『なにしにきたんだっけ』と思うことになる。

 優雅なティーテーブルにはおもてなしのティーセットが整えられ、長いたれうさ耳に赤とレースのリボンを結んだ優美な少年――カナタが、優しい笑顔でお茶を注いでいる。

 首に赤リボンを結んだイツカも「よーみんなー! 座って座ってー!」とニコニコお出迎えしてくるのだ。

 ふたりとも、それは一応、それっぽい装束を着てはいるが、どうやったって悪の魔王なんかに見えない。


 ルリアは愛らしい菓子に目を輝かせ「わーいかわいいー! いただきまーす!」なんて言ってるし。

 パレーナはイツカを「もやい綱の結び方がずいぶんうまくなったな、やはりうちで漁師になるか」なんて口説いているし。

 ああ、無理言ってもステファンかルーに一緒に来てもらうんだったかも。というかパレーナお前はこういうときにまとめる役じゃなかったか。

 内心どうしようと思っていれば、ナイスタイミングでカナタが声をかけてくれた。


「みなさんどうか、お茶が冷めないうちに。

 この島の主アルム殿にお教えいただいた、古きよきハーブブレンドです」

「かたじけない、さっそくいただこう」


 俺は威厳を繕いながら、さっそくその誘いに飛びついたのだった。



 ティーテーブルの椅子は三つと三つ。

 それぞれはじから、ルリアとカナタ、俺とイツカ、パレーナとイツカ(赤リボン)が向かい合う形だ。

 香ばしい菓子をつまみ、薫り高きハーブティーでのどを潤し、落ち着いたところで俺は切り出した。

 あまり長引かせれば、待機する皆の士気にもかかわる。よって相手は、正面のイツカに絞った。


「息災のようだな」

「ライアンさんこそ。

 俺いま、ぶっちゃけほっとしてる。

 もし、ライアンさんやみんなが正気じゃなかったら、すげーやだったなって。

 よかった。マジでよかった。

 たとえ、これから戦うにしてもさ」

「イツカ、…………」


 すこしだけ大人びた、それでも無邪気な笑みが胸にしみる。

 思わず、こんな言葉が口をついていた。


「本当にお前は、よい子だな。

 ほんとうに、なぜ俺たちは、こんなよい子と戦いたいなどと思ってしまっているのだろうな……」


 するとイツカはあっけらかんと笑った。


「それは俺たちにセキニンあるだろ?

 あんなすっげーバトル見ちまったらうずうずしちまうって。俺だってそうだもの!」

「イツカ」


 太陽の笑顔で立ち上がり、大きく空に手を広げれば、よくとおる声が風に乗る。


「やろうぜ、バトル。

 俺、みんなみーんなと戦うぜ!

 タイマンでも、チームバトルでも、バトロワでもさ!

 ちょっと今日俺のほうのカナタはダウンしてるから、バディバトルはこっちの俺たちにたのむけど!」


 おおおお。待機する船団から上がる歓声。

 船べりをバンバン叩くものさえいる。 

 まるで戦に勝ったかのような盛り上がりだ。

 その熱狂は、赤リボンのイツカの「おお、まかせとけー!」でさらにヒートアップする。

 いや、いいのかお前。お前たちは漁夫の利を狙う者を警戒するという役があるんじゃなかったか。

 カナタも「お手柔らかに」ってやんわり笑顔で言ってるし。

 ともあれ、ソリスではまだバディバトルは浸透していない。二人は見守り役となるだろう。

 そこはパレーナがフォローした。切れ長の目で沖をちらり見て言う。


「無理はしないでよい、『後の片づけ』もあるのだろう?」


 俺には水中を見透かす目はないので気配だけだが、どうやら一触即発の様子だ。

 この戦いに乗じ、漁夫の利を狙う月萌隊と、そこに食いついてきたステラ開戦派。

 開戦派は軽くちょっかいをかけて時間を稼ぎ、程よくポイントと疲労度を消耗させて撤退する手はずとなっているということだが――


 どうあれ、ここでわれらがすべきことは一つ。


「では、言わせてもらおうか。

 強き魔王よ、われらがいとし子よ。

 われらの挑戦、受けてもらおう!」

「っしゃあ――! どんとこ――い!」


 そう、全霊をあげ、この戦いに熱き血潮をぶつけること!!

 こぶしを突き出し、挑戦の意を伝えれば、イツカも同じようにしてきた。


 そのころにはすでに茶菓は片付いていた。

 カナタが手を一振りすれば、ティーテーブルとテーブルセットもどこかへ消える。


「では、始めましょう!

 良き戦いを!」

『良き戦いを――!!』


 敵味方双方に高らかに呼びかければ、あふれる声と角笛の音。

 かくして、ソリスの民の、いとしき魔王たちへの挑戦チャレンジが始まった。

サブタイボツ案:六獣騎士筆頭も大変だ!

私も乗物酔いがひどいのです。高速船とかバス旅行とかとにかく試練でしかない件。

カーコロン(だっけ)使用は切実にやめていただきたい、逆に酔うorz


次回、さあ殴り合うぞよ! お楽しみに!!

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