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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_86 ステラ領のゆく道は! 決勝、『ステラ杯』!

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86-1 決勝戦!『魔王』VS『雪狼』!~白リボンのカナタの場合~

『シラタマとも詰めたのだが……

 残念だが私の実力では、相討ちに持ってゆくのが限界だ。

 だが、そこまでの仕事は必ずする。

 だから、……カナタ殿。タクマ。

 どうか、あとを頼む』


 サクヤさんとのマッチが決まった日、エルメスさんはそう頭を下げてきた。


『まかせとけって! な、カナタ!』

『おれたちこそ、きつい役目をお願いしてしまって。……

 必ず勝ちます。だからどうか、よろしくお願いします』


 あるいは善戦を、あるいは勝利を誓い、おれたちは握手をかわした。



 そうしてふたりは、なすべきことを――いや、それ以上を立派に成し遂げてくれた。

 さあ、今度はおれの番。

 ここまでの日々で『卯王の(ラビット・)聖地(サンクチュアリ)』はほぼ完成したといっていい。

 シグルドさんも持てる切り札をすべて切ってきたようだが、やるべきことをきちんとやれれば、きっと勝てる!


 おれの身にやどるのは、『暴食』のチカラを完全制御できるようになったナツキ。うさ耳飾りの中にいるのは、もう『虚飾』なんて呼べないレベルのイリュージョニストに成長したバニー。

 これまでいくつもの戦いをともにしてきたふたりがいれば、怖いものはない。


 もちろん装備のチューンナップも上々。島の警備や整備で忙しいおれたちのためにと、レオナさんたちが手を貸してくれたのだ。

 初見ではだいぶヒラヒラ分が増えていたのがちょっとアレだったものの……

『魔力布を増やしてかないとカナタさんのパフォーマンスに追いつけないんですよ!』『せっかくの決戦ならばかっこよく行きませんと!』『大丈夫です、とってもとってもお似合いですからっ!』と言われてしまえば着るしかない。


 さすがはというべきか、着てしまえば動きを邪魔することもなく、着心地もよかったのだけれど、さすがに普段からこの格好で歩き回る勇気はない。

 よって今までは表示設定をいじり、見た目をこれまでのブルーの一式にしていたけれど、これは最初からそれでいかねばならない。

 表面換装マスクエフェクトをオフに。ペールブルーのたたかう魔王装束に身を包むと、おれは試合用フロートへの転送ポッドに向け、歩を進めた。


「カナタ、カナタ!」


 直前で呼ばれてふりかえる。イツカたちだ。

 白のほうが差し出してくるのは、ルナの祈りの羽根。


「これ使ってくれよ。

 大事な試合だからさ!」

「ありがとう」


 もちろんありがたくいただいた。

 大切にインベントリに収納し、今度こそおれはポッドに歩みこんだ。




「お待ちしてましたよ、カナタ殿」


 シグルドさんはもう待っていた。

 漆黒のスーツのうえに、白のマントを羽織って。

 シンプルなようだが、それゆえに質の高さが浮き彫りとなる、最高品質の一式だ。

 魔力糸の一本に至るまでカスタムが施してあるのが一目でわかる、うらやましいほどの逸品。

 とくにマントは素晴らしかった。水銀色の縫い取りと水晶をさりげなくちりばめ、舞い散る雪の結晶を表現した、芸術品といっていいしろものだ。

 あらためて間近で見れば実に美しい。思わず素直に口から出ていた。


「とても綺麗ですね、そのマント。

 まるで雪原をそのまま織り上げたようです」

「あなたはもっと綺麗ですよ、うさぎの王子様」


 さっそくそう来るか。

 しかもマジでうっとり微笑んでいやがる。そうじゃないだろ。


「そういうことはサクヤさんに言ってあげてくださいよ。

 まったく、愛し合う二人の痴話げんかのネタにされるなんて、まっぴらごめんですからね?」

「ああ、それならいつも言ってますから」


 爆発しろ。素直にそう思った。

 でもそんなん口に出したら周囲のバカウケに燃料を追加してしまうので、むしろにっこり微笑んだ。


「どうも大変ごちそうさまです。

 それじゃあ、『フィルの決闘』はやめときますか?

 あなたの左の薬指は、とっくに予約済みのようですし」


 正直なところ、『フィルの決闘』でないほうがおれにはありがたいのだ。だって、敗者は隷属とか普通に嫌だ。

 それに、決闘宣言の『アレ』。おれがサクヤさんだったら、ぜったいやきもちをやくし。


「いえ、むしろ彼女から絶対やれとのお達しをいただいてまして。

 大丈夫です。フィルの誓いは別腹です。さ、お手を」


 と思ったらナナメ上だった。

 サクヤさんはにっこり親指立ててるし、まわりのバカウケは別方向にヒートアップしてるし。

 いいぞーやっちまえーはともかく、そこだーさっさとと押し倒せーっていってるやつは誰だ。

 笑顔で圧を発していたら、いつのまにか惚気狼はそそっと距離を詰めていた。

 なんでこんなビミョーなことになりやがった。まあ、前の戦いのときなんかよりはこんなののほうがはるかに断然ましだけど。


 ため息を押し殺しつつ左手を差し出せば、薬指を軽くかむ感触。

 そして、手の甲と指先に、柔らかな感触が落ちてきた。

遅れ申した!

直前で真ん中の部分がブッチしてるのに気づきました。やばかった……


次回、いよいよ決勝戦バトル開始!

どうぞ、お楽しみに♪

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