85-5 インターミッション~エルメスの策とスピカのひらめき、または、激闘の予感~
エルメスさんがD3SF――『無害化済み3Sフラグメント』を服用したところで、大きな効果は出ない、そう見込まれていた。
なぜなら彼女はステラの王族。自らを御することに長けており、D3SFの『燃料』となる負の感情をため込んでいることなど、ほとんどない存在だからと。
けれど実際は、その逆だ。
自らを御せるからこそ逆に、自ら嫉妬の炎を燃え上がらせることだって可能なのだ。
エルメスさんと『嫉妬』の相性値は並レベル。それでも、それを乗り越えるほどの精神力が、エルメスさんにはあった。
だが、それだけではサクヤさんには届かない。
そこで、シラタマだ。
いざ勝負! のとき、エルメスさんは太陽を背に突撃する。
そのさい、さり気なくシラタマは、憑依していたレイピアから離脱する。
具体的には、サクヤさんの意識がエルメスさんに集中、スピカのチカラを腕に集めたタイミングで。
レイピアにチカラを残したまま、姿と気配を消して背後にまわり、一撃食らわす。
『嫉妬』は対象への高い集中力による感覚強化を引き起こすが、シラタマのステルス能力はそれを超える。
そのへんをうまく利用しての作戦だが、スピカはやはり強かった。
シラタマがサクヤさんの後ろに姿を現した瞬間、迷わず最善の手を取ったのだ。
すなわち、シラタマによるバックスタブへの対処を捨て、サクヤさんの腕を通してエルメスさんに一撃くらわした。
サクヤさん本人は、か弱い少女といっていい。もしもチカラを彼女の背後に回し、シラタマのバックスタブに対処すれば、前からのエルメスさんの一撃で落とされ、負けてしまう。
そのくらいならば、エルメスさんを叩いて相討ちに。そうすれば、白リボンのおれとシグルドさんのバトルに、サクヤさんの希望をつなげることができるというわけだ。
素晴らしい、恐るべき、といっていい判断力。
さらにスピカは、大きな優しさを見せた。
サクヤさんの体からさっと抜け出し、落ちていく二人を空中でキャッチしたのだ。
その間にシラタマも足元の水を消滅させて、誰も濡れないようにはからう。
試合の結果はドロー。だがそのすばらしい締めに、満場の拍手が起きた。
もっとも、今回のヒロインたちを愛する男たちがフィールドに飛び込んでいけば、拍手は『ひゅーひゅー』に変わったのだけれど。
二組のカップルのアツアツっぷりときたら、みているこっちがちょっぴり恥ずかしくなるくらい。
それでもシグルドさんは、白リボンのおれを見上げ、ぐっと親指を立てた。
その、挑戦的なしぐさとまなざし。『お前を狩るぞ』という意味だ。
なんとなくだが、ぞっとした。
まるで背筋が凍るかのように。
おかしい……えらい手間かかったのに三枚……だと……
ま、まあインターミッションだからいいのです!(強弁)
次回、新章突入! 決勝戦、『フィルの決闘』再びです!!
どうぞ、お楽しみに!




