Bonus Track_84-5 水面下の晴れ舞台、知らぬ顔して~白リボンのカナタの場合~
おおお……やっと再開宣言きた……;;
『卯王の聖地』はまだ不完全。
それでも、充分わかっていた。
この島を取り巻くいくつもの影。水面下にのみ隠された『晴れ舞台』の様子は。
だいじょうぶだ。
月萌からの味方、ソリステラスからきた同志たちは、きっちり守ってくれている。
敵の皮をかぶった未来の友軍は、うまくやってくれている。
おれとイツカは笑ってマイクを手に取った。
* * * * *
あの日『年上のおしかけ弟』は、カメラに写らない角度で、そっと耳打ちしてきた。
おれのうさ耳の白リボンを、器用な手つきで直しながら。
「カナタさん。
旗揚げ宣言の前に、我らはこの海底で妨害工作を行います。
もちろんあなた方、ならびに月萌からの防衛者を相手に、成功など望むべくもないことは百も承知。
目的はあくまで、対月萌開戦派のガス抜き、月萌内の対抗勢力の消耗、ならびに『ステラ杯』開催へのダメージコントロール。
もちろんこの海を荒らさぬよう最大限心がけます。
祖国の味方を撃つご許可をくれとは申し上げられません。敵対行為を行えば撃たれるのは当然。
ですがどうぞ、我らの真意を。われらの忠節を知っておいて下さい、未来の我らが王よ」
それだけ吹き込むや、モフりに入ろうとしたのでもちろんうさみみパンチ。
奴は笑って走っていった。一瞬だけ、からかうようにぱたぱたとしっぽを振ってみせて。
一方的に言い置いてくれたのは助かった。質問の形なら、YESともNOとも答ええぬことだったからだ。
そして、あのしっぽ見せ。彼が嘘を言っていないなによりの証左となった。
それは同時に、彼がそれだけステラ杯での対決に向け、気合を入れてきているということでもある。おれはあらためて、気を引き締めたものだった。
ライカ、アスカを通じて、月萌内の状況はつかんでいた。
『赤竜管理派』たちは、おれたちへの敵意をいっそうみなぎらせている。当然『ステラ杯』によって、おれたちの味方が増えることなど望んでいない。
この前夜祭の時点、すくなくとも『ステラ杯』開催の公式発表までに、『ステラ杯』が実施できぬようにしてしまおうと画策していた。
だが、そこには困難があった。
月萌軍からの強い反発。国内エージェントの多くとも連絡がつかない。
そこに手を上げたのが、それまで彼らと裏のつながりをもち、戦況をコントロールしてきた者たち。ステラ領内の『闇の勢力』だ。
そのなかに含まれる『開戦派』にしてみれば、この状況は絶好のガス抜きチャンスとなるためだ。
鎖国結界によって阻まれてきた月萌との直接対決が、小競り合いという形ながらもかなうからだ――月萌軍の多くにとっては『ステラ杯』は成功してほしいもの、必ず防衛に来るのだから。
シグルドさんは『開戦派』としての顔で、魔王島を、前夜祭を攻撃すると手を上げた。
けれどその真のターゲットは、島と祭りを守りに出てくる月萌軍。
『ステラ杯』を本気でつぶしたい、そう考える者らの代理として動くことで、かれらの直接の手出しを防ぎつつ……
戦いたい、戦わせたい同志たちの要求もかなえ、のちのちの動きやすさにつなげるための策だ。
もろちんおれたちに黙ってやったらすべて台無しになりかねない。スポンサーとして島を訪れたのは、この作戦をおれに知らせておくためだったのだ。
おかげで今この島を警備してくれている仲間たちは、それを理解したうえで動けている。すなわち、『謎の味方』をジャマせず、『敵対してくる連中』をあしらい、降りかかる火の粉を払いのけている。
いまもまたレティシアさんの精密射撃が、フロートに向かう一射を貫いた。
海の民も海中に潜み、技や結界を駆使して港と海を守ってくれている。
平気なわけなんかない。けれど、いまここで笑顔を保つことはできた。
むしろいまはこれが、おれたちのしごと。
『いまここにおれたちは、新生『魔王軍』の完全独立、ならびに、活動開始を宣言します!!』
イツカと背中をたたきあっておれは、晴れやかに高らかに宣言を行った。
つかいすぎてあたまいたいよう。
ぶっくまーくありがとうございます! げんざい197………………えっ?!
200がちかいだって?! 笹食ってる場合じゃねえ!!
もしも達成かないましたらなんか記念話考えますねっ!!
次回! 前夜祭が終わり本祭がはじまる!!
どうぞ、お楽しみに!!




