84-5 クライマックス!! 『みずおと』第二話第五幕!(2)
昨日は副反応で全身痛くて一文字も書けませんでした。うそです1/3しか書けませんでした。
調べないでいい話ははかどりますね!
『なるほどな。つまりアンタがチクッたと。
可愛いカオしてとんだタマだぜ』
グリハは、もう完全にグリードの表情で嗤う。
ふだんのクレハなら絶対にしない表情。そういえば練習後、顔が筋肉痛だって言ってたっけ。
だが、意外と似合う。グリードの『才気ばしったヤバい感』が、クレハのもつ清廉さでなんとも言えないバランスになっているためだ。ナイスキャスティングである。
『なんでソッコーチクったよ。
最初に俺様とおハナシしてればこんな騒ぎにゃならなかったかもしれないぜ?』
色気さえ漂わせて問いかけるグリハに、ユキさんは少しうつむいて答えた。
『あたしには……なにもないから。
交渉のカードにするようなものも、一人で魔神を止めるだけのつよさも、なにも。
一番はやく止められるのが、この方法だった。
ハクジョー大いに結構よ! クレハ君ならきっとこうしろといった!!
これ以上、クレハ君の顔でそんな笑い方させないからっ!!』
そうしてビシッと指を向ければ、グリハはさらに大きく嗤う。
『わかってねえなァ。なんっにもわかってやしねえ。』
まァいいか。アンタも落ちとけよッ!!』
そのまま、壮絶な打ち合いが始まった。
蹴り技でガンガン仕掛けるユキさん。支援に徹するチナツ。
しかしグリハは余裕で受ける。ぜんぜんまったくのノーダメージ。ダメージポップアップすら上がらない。
『そんな、効いてない!』
『そりゃーそーだろ? たかが人間ごときにこのオレ様が、どーにもできるかってんだ!!』
『そうとはかぎらないわよっ!』
そのとき、援軍到着。
旅姿のサクラさんとリンカさん。そして、鳥レイジと猫フユキを肩にのっけたコトハさんだ。
サクラさんが、前回大好評だったアレを披露する。
見栄を切りつつ、いうことには。
『あたしが修行に行ってる間に、お城を乗っ取ろうなんて!
ぜったいぜったい、許さないんだから!
あたしにかわって、おしおきよ!!』
『あの、それ本人じゃ……』
『おだまりっ!』
今回ツッコミを入れたのはチナツ。もちろんわんわんにくきゅうぱんちを頂戴して幸せそうな顔になっている。もしかしてあれってシアワセ効果がついてるのだろうか。そんな追加効果はなかったはずなんだけど。
まあソナタの『ふわふわ・うさダンキック』ならおれもうれしくなっちゃうし、そんなかんじのアレなのだろう。
『チッ、こいつらまで来やがったか……
この体はジャマだな。オラ受け取れ、よッ!』
グリードは思い切りよく憑依を解いた。ふだんのこぎつねドールを大きくしたような姿でクレハの背中からにゅるっと出て来たかと思うと、右手でクレハの体をコトハさんにむけてぶん投げ、そのすぐ後を追いかけるように左手で衝撃波を投げつける。
気持ちいいほどに外道な攻撃。だがそれは、空振りに終わる。
コトハさんの肩を飛び降り、変身を解いたふたりの魔神が、コトハさんとクレハを抱えて大きく後ろに跳んだのだ。
『フユキ! お嬢とそのアニキを頼む!』
『任せろ!』
そうして、フユキが戦えないコトハさんとクレハを守り、レイジがグリードに相対した。
『ンだよレイジ。オレはてめえが遊べる場所を作ってやろうとしてるんだぜ?
戦いをけしかけ武器を売って、ドンドン戦火を広げてやるんだ。
もちろんそこのお嬢はあぶないメにはあわないぜ。この国は武器を売ってるだけだかんな。
そうしてこのしょっぼい国が豊かになれば、可愛いお嬢にキレイなドレスのひとつも着せてやれるだろうよ。どうなんだ?』
しかしレイジは、その誘惑を一蹴した。
『てめえよ。
言ってることとやってることが矛盾してんだよ。
つーかお嬢に衝撃波投げやがった時点でテメエはギルティだ。俺にかわっておしおきしてやっからカクゴしやがれ!!』
『ハ、テメエがオレにかなうとでも?
まあいーや。来いよ有象無象ども。めんどまくせえからまとめてブッとばしてやる!』
グリードが中指を立て、再び戦端が開かれた。
『『サクレリンク!』』
サクラさんとリンカさんはダブル変身。サクラさんは瞬時に突撃、リンカさんがその背に強化を飛ばす。
つづいて、ユキさんも……否、彼女はその場に立ったまま。
途方に暮れた様子で立ち尽くすユキさんに、チナツが声をかけた。
『ゆっきーさん?』
『ダメだ……あたしの力じゃ、あいつに通じない……
あたし、何もできない……!!』
ユキさんは頭を抱えて嘆く。
その頭には、いつもの羽飾りがない。
『ユキ、さん……
これ。使って!!』
クレハが必死の様子で身を起こす。
倒れこみつつユキさんへと投げるのは、その羽飾り。
『ユキさんのために……つくったから……
きっと……力になる……』
『クレハくん……はい!!』
羽飾りを受け止めたユキさんは、小さく涙をにじませた。
それでも迷うことなく、羽飾りをポニーテールの髪にさす。
とたん、変身が始まった。
いつものシンプルな軽武装から、覚醒時の戦乙女装備へと。
『すごい。これなら、やれる……
見ていて。あたしも、あなたのためにっ!』
ユキさんが背中の翼でふわりと舞い上がり、『タメ』を始める。
見つめるクレハが覚醒発動。『タテガミオオカミの星眼』だ。
支援効果を及ぼす祝福の視線を受け、戦乙女の気迫はさらに膨れ上がる。
『サクラ、レイジ君!』
リンカさんがサクラさんとレイジに声をかける。
二人もグリードと打ち合いながら、その気配をしっかり感じ取っていたようだ。タイミングを合わせてぴょいと飛びのく。
『ユキちゃんいけーっ!!』
『了解っ!!
――風よ集え、放てコノハ!『コノハライド』!!』
ユキさんの周囲に集った渦巻く風が、すらりとした右足に集中。
気合一閃蹴りだせば、飛び出す暴風の一撃がグリードを押し込む!
サクラさんがガッツポーズで快哉を上げた。
『っしゃあ! このちょーしでドンドンいくわよ!!』
『オイオイ姫サンよォ。なんか勘違いしてねェか?』
しかしグリードは、不敵に笑った。




