Extra Stage ツクモエもりの『すばらしっぽたいかい』~こねこのイツカとはじめての冬~
使用上のご注意
・これは、100話記念という事で書いてしまった、本編とほぼ全く関係のないお話です。
・すみません出来心だったんです。
・モフモフマシマシです。
・むしろモフしかありません。
・モフ。
2020.09.24
これはこちらに貼らせていただかねばと思った(使命感)……!
by 佐藤ココ先生!
ツクモエじまのツクモエもりは、もうすっかりと、あきいろです。
あか、きいろ、オレンジ。 いろとりどりのおちばがまいちるなか、
きょうも、にぎやかなこえがきこえてきます。
こねこのイツカが、みーみーみー。
こいぬのミライが、くんくんくん。
そして、こうさぎのカナタが、ぷーぷーぷー。
さんびきはとてもなかよしで、いつもどこでも、いっしょです。
きょうも、いつものきのしたで、さんびきそろってあそんでいました。
でも、きょうはちょっとだけ、ようすがちがうみたいです……
「うー、またまけたー!」
くろいこねこのイツカは、ころん、ところげてくやしがります。
いつもはようきなイツカですが、きょうはぺこんとおみみをおって、
なんだかとっても、くやしそうです。
「げんきだして、イツカ。
イツカもおっきくなったら、きっともっとふさふさになるから!」
ちゃいろいこいぬのミライは、
そんなイツカにほっぺをすりすり、やさしくなぐさめてくれます。
でも、イツカはなっとくできません。
「でもー。カナタだって、こうさぎなんだよ?
なのにどうして、おれよりふさふさなのー?」
イツカと『しょうぶ』をしていた、みずいろこうさぎのカナタも、
おおきなたれみみをやさしくイツカにかけて、あったかくしてくれます。
「うーん。おれが、うさぎだからかな?
イツカは、ねこだから、ちいさいうちはしっぽもほそいんだよ。
それは、ミライだってそうでしょ?」
「でもー……ミライだっておれよりもっふいもん……
おれももっと、ふさふさのしっぽになりたいよー……。」
ふかふかのおみみのしたでまーるくなって、イツカはすねてしまっています。
そう、さんびきは、『だれのしっぽがいちばんふさふさか?』という、
しんけんしょうぶをしていたのです。
ひたすらかわいらしいようですが、わらってはいけません。
まいとし、はるにひらかれる『すばらしっぽたいかい』。
これにゆうしょうすると、もりのめがみさま『マザー』に、
ねがいごとをひとつ、かなえてもらえます。
だから、ツクモエじまのみんなは、はるにむけてがんばります。
『はやねはやおき、ごはんもおやつもしっかりたべて、
いっぱいあそんで、げんきをつけるのです。
そうすれば、しっぽもげんきになりますからね』
やさしいマザーのおいいつけをまもって、まいにちげんきをたくわえるのです。
ミライが、そうっときいてみます。
「ねえイツカ。
おとなになるまで、まってちゃだめなの?」
「いまじゃなきゃだめ。
ぜったい、こんどゆうしょうしたい」
カナタも、そうっときいてみます。
「ねえイツカ。
おれのとくいの『はつめい』で、なんとかできないようなものなの?」
「それは……うん、ちょっとむりかも。
たぶんこのよで、そんなことができるのは、もりの『マザー』だけなんだ。
ノゾミにいちゃんも、ミソラねえちゃんも、それだけはぜったい、できないことだから」
そしてそのみっかご、イツカはたびにでたのです。
あたたかなもりをでて、はるかきた。
ゆきとこおりのだいちで、きびしいしゅぎょうをつむために。
まだちいさなこねこが、そんなのむちゃだよ!
みんながとめましたが、イツカはききません。
ついには、ミライのおにいさんで、イツカとカナタの『あにきぶん』の、
きつねのノゾミさんがこういいました。
「そこまでけっしんしているなら、いってくるといい。
おれもむかし、きたのくにでたくさんしゅぎょうをして、つよくなったんだ。
おれが『ししょう』として、ついていく。
ミソラ、みんな。
そのあいだは、ミライと、カナタをたのんだぞ」
そうして、ひとつき、ふたつき、みつき。
あきがさり、ふゆがきました。
もりのみんなは、イツカのことがしんぱいでした。
だれよりやんちゃなイツカですが、なんといってもまだこねこなのです。
ノゾミさんはとってもつよくって、とってもやさしいきつねさんですが……
それでもみんなは、やっぱりしんぱいです。
まだちいさなイツカが、かぜをひいてはいないかな、けがをしてはいないかな、と
まいにち、まいにち、はなしあっていました。
そのうち、ふとだれかがいいだしました。
イツカのねがいごとって、なんだろう。
おとなになるまで、まてないこと。
『てんさいこうさぎ』カナタのはつめいでも、まわりのおとなたちのちからでも、
どうにも、できそうにないこと。
それはいったい、なんなんだろう。
ああでもない、こうでもないとはなしあいながら、ふゆごもりのひびをすごしました。
もりでいちばんのものしり、シロフクロウのミソラさんには、
なんとなくわかるようなきがしていました。
イツカとカナタには、おとうさんとおかあさんがいません。
ことしのなつのはじまりに、どこからともなくあらわれた、
ちいさなこねこと、ちいさなこうさぎ。
それが、イツカとカナタなのです。
それからずっと、ミソラさんがにひきの『おねえさん』をしてきたのですが……
ほんのすこしだけ、さびしくおもいつつ、
それでもミソラさんは『マザー』に、おいのりをしました。
もりのかあさま、めがみさま。
イツカが、ぶじにかえりますように。
そしてどうか、イツカのねがいがかないますように、と。
それから、またすうかげつご。
ツクモエもりに、ようやくはるがやってきました。
かわにはゆきどけみずがながれ、
きぎのえだや、じめんからは、たくさんのみどりの『め』がでます。
そして、あか、きいろ、オレンジ。
いろとりどりのはなが、もりをいろどりはじめました。
けれど、イツカとノゾミさんはかえってきません。
どうしたのだろう。ぶじでいるのだろうか。
はやくかえってこないと、『すばらしっぽたいかい』にまにあわないぞ。
もりのみんなはうわさしあいます。
あるものは、もりのそとにすむしりあいに、おてがみをだしました。
あるものは、マザーにいのりました。
けれど、ついにふたりはみつからないまま……
『すばらしっぽたいかい』のとうじつが、きてしまったのです。
ツクモエもりの『すばらしっぽたいかい』は、
ツクモエじまに、はるをつげるおまつりです。
もりのひろばには、たくさんのごちそうがならべられ、
しまじゅうから、たくさんのどうぶつたちがやってきました。
きたのだいちからやってきた、わかいおおかみのハヤトは、
もりのみんなに、しつもんぜめにあいました。
「ねえハヤト、イツカをみなかった?」
「ちっちゃなくろい、こねこだよ!」
「とってもやんちゃであばれんぼうで」
「きつねの『おししょうさま』といっしょなの!」
「ちっちゃなくろい、こねこだって?
そんなやつには、あったことないぞ」
ハヤトはこまったようにこたえます。
ハヤトのともだち、しろうさぎのアスカもいいます。
「とってもつよそうなきつねはいたけど、ちっちゃなこねこはみてないよん。
ただ、でっかい『けだま』はなんどかみたなあ」
ざわざわと、もりのみんながざわつきます。
イツカはどうしてしまったのだろう。
まさか、そのけだまに、たべられちゃったのかな。
でも、そうしたら、いっしょにいたノゾミさんは?
もりのみんなが、ふあんではちきれそうになった、そのときです。
そいつがひろばに、やってきました。
けだまです。もわっもわの、まっくろなけだまです。
ひとあしあるくたび、もっさ、もっさと『け』がおちます。
そんなおそろしい『けだまのおばけ』は、いっぽ、ひろばにはいるなり、
ごろごろとのどをならして、こういいました。
「うわあ、おいしそうだなあ!
どれからたべようかな!!」
「たべないでくださ――い!!」
うわあ、『けだまおばけ』にたべられる!!
ひろばはもう、だいパニックです。
みんな、われさきににげだします。
でも、にげなかったものもいました。
みずいろうさぎのカナタと、ちゃいろいしばいぬのミライです。
あきとふゆとをのりこえて、にひきはずいぶん、おおきくなりました。
『おとな』というには、はやいけど……
もう、ちっちゃなこうさぎと、ちっちゃなこいぬではありません。
けどまさか、にひきは『けだまおばけ』とたたかうつもりなのでしょうか?
みんながドキドキ、みまもるなかで……
にひきはダッ! とかけだしました。
そして、『けだまおばけ』にたいあたり!
そのまま、むぎゅーっとだきついて、なみだながらにいいました。
「イツカ、イツカだよね! よかった!!」
「おかえりイツカ!! しんぱいしてたんだから――!!」
するとけだまも、いいました。
「おう、カナタ、ミライ!
おそくなってごめんな。ただいま!!
なあなあ、まずはごちそうたべようぜ。
ギリギリまでしゅぎょうして、いそいできたからもうおなかペッコペコ!!」
ちょっぴりおとなびてはいますが、よくきけばそう、それはたしかにイツカのこえです。
「えええええ――――――!!」
もりのひろばは、みんなのおどろきのこえにつつまれました。
そうしてはじまった『すばらしっぽたいかい』。
しゅつじょうしゃたちは、いっぴき、またいっぴきとマザーのごぜんにでて、じまんのしっぽをひろうします。
(しっぽがはえてないばあいは、こころのしっぽをおみせします。)
けれど、いつまでたっても、イツカはでてきません。
「ひとり、しゅつじょうしゃがまだ、こないようですね。
どうしたのですか? はずかしがらずに、でていらっしゃい?」
マザーがやさしくよびかければ、ぶたいのそでから、しょんぼりとうつむいたイツカがでてきました。
みんながあっとこえをあげます。
「うう……
しゅつじょうまえに、ブラッシングしたら……
ふゆげがほとんど、とれちゃって……
すっかり、ふつうのねこに、もどっちゃって……」
なんとそのすがたは、もうあの『けだまおばけ』では、なくなっていたのです。
イツカはたしかに、りっぱなけなみの、くろねこになっていました。
けれどきたいのしっぽは、まるでふつうのボリュームです。
つやつやふさふさとしていながらも、もふもふではなくなってしまったしっぽをかかえて、
イツカはなみだまじりに、こういいました。
「これじゃあ、とっても、ゆうしょう、なんて……。
ごめん、マザー。おれ、きけんしま……」
そんなことない! かっこいいよ!
きけんなんてするなよ! おうえんしてるから!
かいじょうじゅうから、こえがあがります。
みんな、みんながイツカにせいえんをおくりました。
なんと、ライバルのはずの、ほかのしゅつじょうしゃたちまでも、です。
マザーはにっこりほほえみました。
「ことしのゆうしょうしゃは、きまりですね。
おめでとう、イツカ。
さあ、ねがいをおいいなさい」
「え……いいの?!
ほんとに、おれでいいの?」
いいよー! かいじょうじゅうがこえをあわせます。
べそをかいていたイツカは、みるみるえがおになりました。
「ありがとう。ありがとみんな!
それじゃあ、ねがいごとをいいます!
――おれのねがいは、かぞくです!
カナタには、おやじとおふくろが、いないから!
ミソラねえちゃんは、ねえちゃんだし、
ノゾミにいちゃんも、ししょーでにいちゃんだから!!
だから、カナタのおやじやおふくろに、
ひとめあわせるだけでも、してやりたい! です!」
しかし、マザーはしずかにくびをよこにふりました。
「そのねがいは、ききとどけられません」
「え……なんで?! どうして……」
「なぜって、そのねがいは、すでにかなっているでしょう?」
そして、いたずらっぽくわらいます。
「わたしはもりの『マザー』です。
このわたしこそが、あなたたちふたりをうみだした『マザー』。
あなたたちふたりは、このわたしのつかいとして、
ツクモエもりにつかわされた『てんし』なのですよ」
「え……えっ、ええええ?!
うそ、まじ?!
マザーは、おれたちのおふくろ?
ってことは、カナタとおれは、きょうだいなの?
うわあ、ぜんぜんにてなーい!
でも、うれしいや!! よかったー!!」
かいじょうが、わらいにつつまれます。
でも、ちょっぴりなみだもこぼれます。
シロフクロウのミソラさんは、イツカのことばに、うれしなみだをぬぐいます。
「わたしは、ふたりの『おかあさんがわり』。
それにしか、なれないとおもっていた。
だから、さいしょから『おねえさん』と、よばせてた。
なのにまさか、ほんとにおねえさんのように、おもってくれていたなんて……」
そのかたをささえて、きつねのノゾミさんも、ほこらしげにめもとをふきます。
「イツカのやつ、カナタのことだけで、
じぶんのことは、まるでかんがえていないじゃないか。
やさしすぎるのか、たんじゅんなのか……いや、りょうほうか」
カナタとミライは、イツカとさんびき『だんご』になって、
まとめてマザーになでてもらっています。
こうして、イツカのはじめての『すばらしっぽたいかい』は、
まくをおろしたのです。
さて、きになるのが、イツカの『ねがいごと』のゆくえです。
イツカはほかにねがいごともなく、その『ねがい』は
ほかのしゅつじょうしゃにゆずられました。
そのしゅつじょうしゃ、レミーのねがいはこうでした――
「わたしも、しっぽがほしい!」
レミーは『マンクス』という、
うまれつき、しっぽのないねこだったのです。
りっぱなふさふさしっぽをはやしてもらい、
しあわせそうなレミーでしたが……
すうじつご、ごめんなさいとあやまって、
マザーに『ねがいごと』をおかえししました。
というのも、レミーはずうっとしっぽがなかったので、
きゅうにはえてきたしっぽを、もてあましてしまったのです。
それから、まわりまわったねがいごとは、
けっきょくイツカのもとにもどってきました。
それがどんなかたちになったのかは、またいずれ。
だいじなともだちのために、はじめての『すばらしっぽたいかい』で
ゆうしょうしたかった、
やさしくてがんばりやのこねこ、イツカのおはなしは、これでおしまいです。
~おしまい~
ふゆげのおはなしでございました!
次回は通常モードに戻ります。




