リオンの物語 ミナト編 前編
すいませんお待たせしました
今回は少し、というかだいぶ短めです。
ではお楽しみください
第十話 パート1 記憶の欠片
迷いの森を抜けた日の夜
リオン達は森の近くで野営をしていた
その日の時間がただ過ぎていく
だがしかし、この日リオンは寝付けずにいた。
なぜかは分からない
けれども眠れない、それだけは事実なのだ
大丈夫か?とリット、ロウルの二人に心配されたが
大丈夫です。と答えておいた
今、リオンは炎に向かい、一人考え事をしている
相変わらずリオンに記憶が戻ることはない
そう、まるで何も存在しないかのように
断片すら戻ってこないのだ
…とここでリオンは短剣を取り出した
短剣を見つめる
リオンからサラの記憶は消えてしまっているが
何故短剣を手に入れたかは覚えている。
…知らない誰かからもらったという形で。
「一体だれが?」
リオンはそれをまず思い出そうとした
…まあ、当然思い出すはずもない
「やっぱりだめか…」
リオンは肩を落とす
!!
とここで急にリオンに頭痛が襲った
「…いっ、いたっ!」
リオンは頭を片手で抑える
リオンの頭の中に映し出される光景
深い青色、波…。
そしてそこにいる二つの光る眼
リオンが思い出したのはここまでだ
「…う、うう。」
リオンは激しい吐き気を催すが
吐くに至らず、我慢しながら考える。
先程の光景は何だったのだろうか?
クウ~ン…とワルグが心配そうにリオンを見ていた
それを見てリオンはワルグの頭をなでる
大丈夫だよ、と心に思いながら。
翌日。
リオンは出発の前に昨日の出来事を二人に話した
「それは…」
リットはリオンの話を聞いて一人考え込む
「記憶、それ以上は分からないのか?」
ロウルがリオンに聞く。
「うん、まったく」
リオンは答える
「そっか…」
ロウルも黙ってしまう。
「リオン、俺は一つ心当たりがある。」
リットが少しした後、話し始めた
「ギルドでクエストを見ていた時だ。
あまり覚えていないんだが…」
リットはまた考え込んでしまった
多分思い出そうとしているのだろう
「じゃあ、早く戻って見に行こうぜ!
ここで考えたって時間の無駄じゃないのか?」
ロウルが二人に言った
二人は頷いた
三人は街に向かって歩き出す。
第十話パート2 次なる舞台へ
街にようやく戻ってくることが出来た三人
街に入ろうとする
ワウっ!とワルグが三人に向かって吠えた。
リオンが振り返る。
「どうしたの?」
ワルグと向かい合う
ワフッとワルグがまた鳴く
「…街に入ると迷惑、ここで待つ。 だそうだ。」
リットがワルグを見て呟いた。
「そっか…分かった。じゃあここで待っててね。」
リオンはリットの方を向き、またワルグと顔を合わせ
ワルグの頭をなでる。
そうして三人は街に入っていった
ギルドにて…
「クエストを完遂、おめでとうございます!」
ギルドの受け付けの人は笑顔だ。
そして、奥の方に向かう
「こちらが、報酬になります。」
しばらくした後、受付の人が出てくる
その手には一つの剣があった。
ゴトン、とリオン達の前に置く
「…まあ、危険クエストになりかけたとはいえ、
元は簡単なクエストだったからな…」
ロウルが報酬の剣を見ながら呟いた。
「これは、俺がもらっておこう。」
リットが言い、そっと剣を取り腰に差した
ロウルもリオンも先日の戦いで
リットの剣が欠けていることを知っていたため
何も否定はしなかった。
そうして三人はカウンターを離れる
「さてと、報酬も受け取ったし
リット、どこなんだ?その見覚えってやつ。」
ロウルが歩きながらリットに聞いた
「こっちだ」
そう言ってリットは別方向に歩き出す。
それについていく二人
「これだ」
「…これ、危険クエストか?」
呟くロウル
リットが指さしたのは
危険クエストの欄にあった一つのクエスト。
それは水成都市 ミナトという所で
怪物が暴れている。というものだった
「リオンの話の中に出てきた深い青色、波
そして二つの大きな瞳。
この三つの言葉に当てはまりそうなものは
これしかなかった。」
リットは続ける
「どうだ、リオンこれじゃないか…?」
「…多分、それだと思います…」
リオンはゆっくりと首を縦に振る
「で、でもさ…!これ危険クエストだぜ?!
絶対やばいって!」
ロウルは二人を止めにかかる
迷いの森ですら危険クエストに“なりきれなかった”のだ
そして、自分たちが今行こうとしているのは
紛れもない危険クエストである。
自分たちの手に負えるものではない。とロウルは思った
そう、たとえリオンが
ボスクラスを瞬殺できたとしても、である
「いくら何でも早すぎるだろ?!」
「分かっている。」
リットが頷きながらロウルを諭す
「だからこっちのクエストにしようと提案するつもりだった」
リットが別のものを指さす
それは同じミナトのクエストだが
街の酒場の雑用係を一日頼みたい というものだった。
難易度もはるかに低い。…というよりはないに等しい
「ミナトまで行くことには変わりはない
俺も行くことにしていたからな…」
「ロウル、大丈夫。
私も自分の力量はちゃんとわかっているつもりだから。」
リオンがロウルに微笑みかけた
「そっか…ならいいんだ。」
ロウルが深いため息を吐いた
<水成都市 ミナト>
緩やかに流れる水の音が辺りに平穏な空気を運ぶ
ここは水成都市 ミナト
またの名を水溢れる水龍の住む地 と人は呼ぶ
しかし、その平穏な空気は一瞬にして
殺伐としたものに変わる。
そうミナトの近海にモンスターがまた現れたのだ
そのモンスターは足が八本あった。
「また現れました、ヤツです!」
ミナトの近くに建てられた警備用の建物から
街に向かい警報が鳴り響く
その警報を聞いて街の人は避難を始めた
「お爺様、お婆様私たちも早く非難しましょう」
彼女、アオイもまたそのうちの一人だ
「大丈夫じゃ、アオイ。
わしらには水神様がついておる。」
お爺様こと この街の一代前の長 ナトが言う
「きっと何とかしていただけますよ。」
お婆様である ミナもナトの言葉に賛同する
「そうは言っても…!」
アオイが二人に話そうとした時、
ズズン…と地響きが鳴る
アオイは外を見た。
見ると、警備塔から無数の光がモンスターに
向け放たれる瞬間だった
それはおそらく魔法だろう。
何人もの魔法を使える人間が集まり
一つの魔法を作り出しているのだ
それがモンスターに着弾する。
だがしかし、モンスターには効果がなさそうだった
連続して放たれるもののモンスターの
歩みの妨げになるに至らない
遂には警備塔のすぐ近くにまでモンスターは近づいていた
巨大なモンスターはそのクネクネと曲がる脚を
塔にたたきつける
アオイは思わず目をそらした
ズン…!という音とともに何かが壊れ、崩れていく音がした
もう見なくても分かる。
「水龍様でも誰でもいいです、
誰か、誰かあのモンスターを…倒してください…。」
アオイは祈るように手を合わせ、一人呟くのだった
~次回予告~
ミナトに着いたリオン達は
街の状況を見て絶句する
そして街の平和を願うアオイと出会った時
ミナトのモンスターへの逆襲が始まる…
次回 後編 をお楽しみに!