リオンの物語 迷いの森編 後編
今回から次回予告を入れたいと思います。
第七話 消えないトラウマ
辺りはすっかり夜になっていた
「…。」
今、三人は森の中でたき火をしているのだが、
三人の間に会話はほとんどなかった。
「…そういえば、ありがとう助けてくれて。」
ロウルが口を開く
「ああ…別に大したことじゃない…」
リットが答えた。
会話がそこで止まり、続かない
パチパチというたき火の音が無常に響く。
「…彼女は、どういう存在だったんだ?」
しばらくして、リットが口を開いた。
少しでもロウルの悲しみをほぐそうと
リットなりに考えていったのだろう。
「…幼馴染だったんだ。冒険者になってからも
ずっと一緒だった…。」
たき火の炎は暗がりでロウルの顔を照らしている。
…彼の弱弱しい、今にも泣きだしてしまいそうな顔を
「けど…俺のせいなんだ…
あいつがこうなったのも、全部。」
「一体何があった…?」
リットはロウルの顔色を伺いながら聞く。
「ああ…それは…」
*
ロウル達も二人と同じようにクエストを受け
この森に来たのだという。
ロウル達はこのクエストが、森の調査であったため
比較的簡単だと思っていたらしい。
迷いの森の中をしっかりと調査していた二人
森の中で現れるモンスターを二人で力を合わせて、
打倒していたのだとか。
そうして二度、迷いの森を回り三度目にうつった時
それは起きた。
ロウル達は三度目の調査中、森で開けた場所に出た。
「ねえ、ロウルまだこんな場所があったんだね。」
「ああ、そうだな…さっさと調査を済ませて帰ろうぜ。」
ロウルはあらかた調査も終わっていたので
十分だと思い、投げやりな態度でアズサに返した
「もう!しっかりしてよ!」
ガサッ…ガサガサッ
茂みが揺れる 「え?」
ロウルとアズサがその方向を見ると、
大型の影がそこにいた。
木陰から、日向に姿をさらす
黒い体、その体には苔が生えている。
そしてその姿は獣とは違う威圧感を持っていて
8つある眼は二人を確実に捉え、
ギラギラと殺気を放っていた。
大グモ、恐らくこの森の生態系の現トップで
あろう存在がそこにいた。
「…!」
二人は無意識のうちに武器を取り出し構えていた
アズサが弓で遠距離攻撃、ロウルが剣で
近距離攻撃を繰り出す。
このスタイルが二人の鉄板だった。
しかし、今回はロウルの前にアズサが来てしまっていた
それによりロウルは先制することが出来ない。
結果としてわずかな時間ではあるが、
大グモに猶予を与えてしまった。
大グモはその時間を使い、二人の“餌”に対して
攻撃を繰り出そうとする。
クモの移動速度はその巨体にふさわしくないほど速い。
大グモは一瞬で距離を詰める
「…っ!」
アズサ、ロウルの二人は左右に分かれて回避する
二人がいた場所に大グモが到達した後、
一瞬その動きを止めた。
ここでロウルが動く
ロウルは大グモの胴体部分に左側から近づき、
4本ある足のうちの1本に剣を叩きつける。
ガギンッ! 鈍い音が鳴った
ロウルの一撃は足を切り飛ばすには至らなかった
切った場所から紫色の血が溢れ出している
ロウルは剣を抜き、大グモから離れた。
大グモは体を回転させ足の一本を
振り回すように動かす。
もしそのままとどまっていたならば、ロウルの体は
凄まじい力によって引き裂かれていただろう
「ちっ…」
ロウルは小さく舌打ちをした
剣を握る腕はビリビリと今も少し痺れている。
まだ全力で剣を振ることは出来ないだろう
大グモと真正面からロウルは対峙する。
その眼は血のように真っ赤だった
次はどう来る…?
ロウルは剣を構えなおす
大グモはロウルに向かい大きく跳躍した。
ロウルは急いでアズサのいる場所へと向かう
ズドン!と大きな地響きが発生した。
大グモの足元から黒い影がそっと
抜け出すようにはい出していった。
二人にはそれは見えていない
大グモは二人を探し、振り返る
ここで、二人の猛反撃が始まった。
ロウルはアズサと何かを話し、
大グモに再度接近する。
大グモの目がロウルをとらえている
大グモは前足を振り上げ、
ロウルに向け勢いよく降ろした
ロウルはそれを横っ飛びでかわす
大グモの前足が地面に突き刺さる
その時だった。
ヒュンっと何かが空を切る
それは大グモの目の一つを貫いた。
アズサの弓矢だ
大グモは突如訪れた激痛に、
金切り声のような声らしき音をあげる
爆音のそれは森中に響き渡った。
「うっ…!!」
二人は耳をふさぐ
大グモは目からダラダラと紫の血を滴らせながら
アズサとロウルをとらえる
しかしながら、弓矢によって戦意を
失ったのか大グモは後ずさる。
ロウルとアズサはこれを好機と見た
大グモを倒すため更なる攻撃に移ろうとする
…はずだった
アズサの背後から突然黒い影が襲い掛かった
ロウルは“それ”にいち早く気づきアズサに呼びかける
「アズサ!」
「え?」
アズサは後ろを振り返った
…そいつは成長期で腹が空いていた
…そいつは大グモの命令を忠実に聞いた
なぜなら親であるからだ
そう、体長15センチほどの子グモが
アズサに襲い掛からんとしていた
「きゃあああ!」
アズサは悲鳴を上げる
子グモはアズサにとりつき体を噛んだ。
アズサの視界がぼやけアズサが倒れる
「アズサ!」
ロウルはアズサに駆け寄る
そしてアズサにとりついていたクモを払った
けれども、アズサはすでに意識を失っていた
「おいっ、アズサ!…畜生!」
ロウルはアズサを抱え、戦闘から逃亡する
アズサの弓矢を忘れているが、仕方がないことだった
森を走るロウルは後ろから大グモが
追ってきているような気配が常にしていた
追いつかれるまいと必死に走る
走って、走って死に物狂いで走った。
気が付くと森の一角にいた。クモの気配はない
ロウルはアズサの傷跡を消毒した
何度も毒抜きをした、しかしアズサは目覚めない
ロウルは困り果てた。
と、そこで泉のうわさを思い出したのだとか
ロウルはあの大グモのテリトリーに入らないように
泉を探した
そして二人に出会うことになった
これがこの森で起きたことの全てだとロウルは言った。
*
「そうか…そんなことが…」
リットは語られた話を聞いて一人納得していた
「生態系がメチャクチャになったのも、
死人が出たというのも恐らくそいつが原因か…」
リットは炎を見ながらひとり呟く。
「…倒しに行くのか?奴を」
「…。」リットは下を向いた
「待てよ!たった二人で行くのか?!
わざわざ死にに行くようなもんだぞ!」
ロウルは自分たちと同じ目に逢わせたくないと思い、
声を荒げる。
「しっ…」
リットはロウルを静かにするように促す
「え?…ああ…」
ロウルはリットの行動に戸惑いを見せたが、理由は
すぐに分かった。
リオンが体操座りのまま眠っていたのだ
彼女のすぐ横でこれまた眠っていた子狼は
少し起きてあくびをしてまた眠りに戻った
ちなみに子狼は名前がワルグとなった
「よっぽど疲れていたんだろう。
今日一日中歩きっぱなしだったからな」
リットは続ける
「ロウル、俺は二人で行くとは言っていない。
お前の力を貸してほしい、そのクモを実際に見たことが
あるのはお前だけだからな」
「俺が?」
「すぐに答えは出さなくていい
ただ、力を貸してもらえると助かる。」
ロウルは何も言えずに黙ってしまった
「…お前ももう寝ろ。疲れているだろう?」
「…ああ、そうさせてもらうよ。」
そう言ってロウルは適当な場所を見つけ横になった
…俺は、どうしたらいいんだろう。
ロウルは森の木々の隙間から見える星々の光を
見ながら一人悩んでいた
そうして、答えが出ないままロウルはゆっくりと
夢の中に落ちていった…
第八話パート1 夢の中で
体がふわりと浮いているような感覚
ゆっくりと体に力が働き、
どこかに連れていかれている
ロウルはゆっくりと目を開いた
真っ白な世界 何もない
ロウルはキョロキョロと周りを見ていた
「ロウル…」
!!
その方向を見る
そこにいたのは紛れもない アズサだった
「」
声が出ない。
「ごめんね、ロウル…
ここでは私しか話せないの…」
「」 ロウルは悲しそうに頷いた。
「あのね、ロウル…私ずっと眠っているとき
夢を見ていたの。
その夢では私は死んでいた。今と同じようにね」
「」 ロウルは首を振る
「分かってるロウル。
でもね、私思うの。きっとあの夢はこれから起こる
未来だったんじゃないかって…」
アズサは続ける
「だって、私の知らない人とか色々出てきたの
夢にしてはおかしいもの。」
少し、おかしそうに笑うアズサ
「それでね、ロウルも出てきたんだよ」
「」 ロウルは驚きの表情をした
「色々傷ついて、でもしっかり前に進んでたよ。
あの二人と一緒にね」
「」 困り顔
「今一緒にいる人たちだよ。ロウルがあの人たちと
一緒に行動すれば救われる人たちも多いの。」
「」
「そう、私も。」
アズサは頷いた
突然アズサの姿がぼやけだす。
「あ、もう時間みたい。」
ロウルの意識は薄れていく
「ロウル、私その時を待ってるからね。
だから自分を責めないように
まっすぐ生きてね…!」
私 絶 対 ま っ て る か ら ね … !
「アズサ!!」
ロウルは飛び跳ねるように目を覚ました
周りの光景は森だ
「…大丈夫か?」
暗がりにリットの心配そうな顔があった
「随分うなされていたようだが…」
リットはなおも心配そうな声を上げる
「…大丈夫、ちょっと夢を見てただけだから。」
ロウルは眉間を抑えつつリットに少し明るい声で答えた
「…そうか、ならいいんだ。」
リットはたき火の近くに戻っていく
「…どれくらい時間が?」
ロウルは立ち上がり、リットに聞いた。
「たき火の薪を三回くべるくらいだな」
そこそこの時間が経っていることに気付く
「見張り、代わろうか?」
「…頼んでもいいのか?」
リットはロウルが悪夢にうなされあまり疲れが
取れていない事を知っていた。
それはロウルの少し疲れたような顔からも分かる
「ああ、十分寝たから。大丈夫」
「…そうか」
リットは半ば強引に話を進めるロウルを
心配しつつ頷く
「任せる。でも無理はするな」
リットはそう言ってロウルに背を向け仮眠をする
…自分にはロウルを止める資格があったのだろうか?
…俺はこの二人と一緒に行動すればいいんだよな。
パチパチと燃える炎の音を聞きながら
リオン、リットの姿をみてそう思うロウル。
…きっと大丈夫だよな
ロウルは星空をまた見上げる
…アズサ、俺が絶対助けてやるからな。
そう決意するロウルを応援するように
星空は鮮やかにきらめいていた。
第八話パート2 因縁に復讐を
時刻は昼過ぎ
迷いの森の開けた場所に三人と一匹の人物が現れる
彼らにとって今からここは戦場になるのだ。
そして、そんな彼らを出迎えるように
ゆっくりと、しかし確かな足取りで大グモが
その姿を現した。
グッとその場の全員が臨戦態勢をとった
一瞬の沈黙
何かの線が切れるように戦いは幕をあける。
最初に動いたのはロウルだった
ロウルは大グモに向かって走り、剣を振る
大グモはそれを後ろに下がることでかわし、
そのまま前に飛び出すようにして
ロウルに体当たりをした
弾かれるように後ろに飛ぶロウル
とここで大グモは痛みを感じる
大グモはロウルに向かって左前足を
横なぎに払った
しかし、その攻撃はロウルには届かない
第一関節から先がなくなっていたからだ
大グモは横目で見る
そこには剣を振り終わったリットの姿があった
大グモは後ろに下がる
それに伴いリットとロウルも元の位置に戻った
「なるほど…確かに硬いな…」
リットは自身の剣を見る
少し刃がかけている
「だが、切れないことはない」
視線を大グモに戻す
リット、ロウルの二人はまた動き出す
「あなたもお願い!」
その声に反応してワルグも二人についていく
大グモはまた金切り声をあげた。
森にその声は響き渡る
ロウルの剣が硬い体にあたる
リットの剣が、ワルグの牙が、
着実に大グモの体力を奪っていく
大グモはそんな彼らを振り払うように
また体を回転させた。
大グモの足での薙ぎ払いをギリギリでかわす
リット、ロウル、ワルグ。
しかし、その行動を引き出すことこそが
彼らの狙いだった
大グモは気付いていない。
彼らの中でただ一人、
その戦闘に参加していない“彼女”の存在に
「凍り付け!」
不意にリオンの声がした
その声に遅れて大グモに向かう氷の塊
着弾、そして氷結していく大グモの体
あたりに冷たい風が吹く。
大グモは生命力を失いただの氷の彫刻になっていた
「…終わったか。」
リットは構えを解き、一人呟いた
「…なんだかあっけなかったな。」
ロウルはあまりの急展開に少しガッカリしていた
「…」 でも仇はとれたぜ、アズサ
ロウルは光の粒になっていく大グモを見る
「お疲れ様です、皆さん!」
リオンがロウル達に向かってそう言った
ヒュッ…と森の奥から音もなく何かが飛んでくる
「!!…危ない!」
ロウルの声
直後、リットとワルグにそれがかかる
それはクモの糸だった
そして…
ズドン という音とともに
大きく後ろに飛ぶリットとワルグ
「リットさん、ワルグ!」
リットとワルグは木にたたきつけられ
気を失ったようだ
「クッ…、もう一匹いたのかよ!」
そいつは今倒した大グモよりも
また更に一回り大きい大グモだった
そのクモは体が緑色だ
そしてやはり体中に苔が生えており、
その眼はもう既に赤く、
怒りは頂点に達しているようだった。
リオン、ロウルの二人はすぐに構えなおし、
臨戦態勢に入る
「リオン、さっきと同じで行くぞ」「うん」
ロウルはサッと会話を済ませ、攻撃に入る
ロウルは走り出した
緑の大グモはロウルに迎撃する
ロウルは攻撃をかわした
ここまでは先程と同じだった
リオンと大グモの間がひらけた
「凍れ!」
またリオンは氷の魔法を放った
大グモに飛んでいく魔法
着弾
…だが大グモは凍らない
「えっ!」
二人は驚いた
緑の大グモを見ると、
背中に生えていた苔はしっかりと凍っている
どうやら魔法の効果がなかったわけではないようだ
「それなら!」
リオンはまた他の属性で攻撃しようと
魔力をためる
けれども、緑の大グモの糸によってそれは
中止させられた。
べたべたの糸を頭からもろにかぶってしまうリオン
必死にはがそうとするもののなかなか出来ない
ここで、リオンに影が近づく
そう、それは子グモだった…。
*
「!」
ロウルは子グモにすぐに気づいた
ロウルの頭の中であの瞬間がちらつく
ギリっとロウルは奥歯を痛いぐらいに噛みしめる
…今から行っても間に合わない…じゃあどうしたら…
戸惑い、うろたえるロウル。
一歩後ろに下がった時、足にこつんと何かが当たった
それはアズサの弓だった。矢もいくつか落ちている
…これなら!
ロウルはそれを急いで拾い上げ、
子グモに向かって矢を引き絞った
この時、誰も見てはいなかったが
ロウルの体に重なるようにアズサの姿があった
そして放つ
矢は正確に空気を切り裂きながら飛んだ
リオンに遂に子グモが襲い掛からんと飛び上がった
リオンもその気配にようやく気付き姿をとらえる
一瞬
子グモに矢が突き刺さった。
紫の血とともに体が弾け飛ぶ
「リオン!」
リオンの頭に響くようにロウルの声が届いた
リオンはロウルを見る
体中の糸などもうどうでもよかった
「早くあいつを!」
リオンの目が緑の大グモを再びとらえる
この森の王者は、堂々たる佇まいでそこにいた
リオンは考える
先程、氷の魔法は効かなかった。
他の魔法を使おうにも、
同じように効かないのではないか。
どうすればいい?どうしたらいい?
緑の大グモを少し観察する。
「…」
リオンはここで気がついた
先程の魔法で発生した氷が解け、
緑の大グモが濡れていることに。
さらに今、自分は大グモと糸でつながっていることに。
「これしかない!」
リオンは思わず声が出る
魔力を集め、実行に移す
体に絡みついている糸を一つにまとめるように
手に集める
糸はまだクモとつながっている
一か八か、リオンは魔法をイメージする
「轟け!」
その瞬間、凄まじい光とともに荒れ狂う雷鳴が
大グモとリオンを襲った。
リオンは意識が飛ぶ
緑の大グモもまた同様に
全身から湯気を出しつつ、
痛みでのたうち回り数秒後、生命力を失い
その場で黒く変色した腹を見せ動かなくなった。
「いいですか?雷の魔法の威力は高いですが、
当てるのは非常に難しいです。」
それはリオンがマガータと話していた時の事だ
「どうしてですか?」
「雷は塊にならないんです。
ですので、放った瞬間逃げるように対象以外にも
当たってしまうんです。」
「じゃあ、どうしたら…」
「そうですね…対象となにかつながっているもの、
もしくは対象に触れるか、対象を濡らすのも手ですね」
「?なぜですか」
「それは…よく言うじゃないですか、
水は電気をよく通すと。」
「??」
「まあ、今は分からなくても
もし雷の魔法を扱う時には今の三点に注目してくださいね」
…
第九話 癒しの湖
「…」
ロウルはリオンとリットそしてワルグを
安全なところに運んだ。
彼らはもう少しで目覚めそうだった。
「ふう…」
ロウルは緑の大グモの死体を見る
フワッとその姿は光に消えかけていた
…あれをやったのか。
ロウルはリオンを見る
…すごいな、こいつ。あれをやるなんてさ
まだ眠っているリオン
ロウルは視線をもう一度大グモに戻した
「?…!」
ロウルは少し驚く。
大グモが完全に光に消えた時
一人のフードを被ったものがいたからだ
その者は、ロウルには目もくれず
森の奥に進んでいく。
「おいっ…!」
ロウルの声が聞こえなかったのか
フードを被ったものは居なくなってしまった
…?なんなんだあいつ
ロウルはリオン達とフードの者の進んだ方を
何度も視線で往復した
その時、ワルグが目覚めた。
「丁度良かった、ワルグちょっと頼む!」
そう言ってロウルはフードの者を追った
何故かロウルには追わなければならない
気がしたからだ
「…まだ無事か…しかし…」
フードの者は湖の中を覗き込んで、呟く
「…いや、このままでも…」
「あのっ…」
ロウルがフードの者に話しかけた
フードの者が振り向く
「君は…?…ああ、そうか。」
そう言うとフードの者は湖で何かをした
そしてロウルに近づく。
「…?」
ロウルは身構えた
「そんなに身構えなくてもいい。これを」
フードの者はロウルに小さな瓶を渡す
「これは?」
「その湖の水だ、詳しく言えば 癒しの湖のか。」
ロウルは驚く
「でも、単なるうわさ話じゃ…」
ロウルは湖についてはもう信じていなかった。
それくらい探していたのだ、アズサを助けるために。
「手を…」
フードの者は言う
ロウルは疑いながら傷口を見せた
もちろんいつでも攻撃できるように臨戦態勢で、だ。
「…」
フードの者は傷に一滴水を垂らした
すると、傷がスッと治る。
「…!ほんとかよ」
ペタペタとロウルは傷を触る。
しかし痛みはなく、もう傷もなくなっていた
「…というわけだ。」
フードの者はロウルの様子をみながら言った。
「…疑って悪かった。」
ロウルは謝る
「…いや、別に構わない」
フードの者はそう答え、ロウルに小瓶を渡した
「早く彼女たちにかけてあげるといい。
いつまでもこんな所にいてはいけないだろう?」
「でも、あなたは?」
「…まだやることがある。」
そう言ってフードの者はロウルの横を通り過ぎた
「またいつか会うことになるだろう。」
ロウルはフードの者を見る。
けれども、もう姿はどこにもなかった
「…」
ロウルはリオン達の元に急いで戻る
その後、ロウルはリオン達を回復させた。
そしてもう一度癒しの湖に行き、その水を少しずつ
持ち帰ることにした
リオン達は森を歩いていた
「そういえば、リットさん。
この森での目的って何だったんですか?」
歩きながらリオンはリットに聞いた。
「いや、どうやらこの森ではなかったらしい」
リットはリオンに答える
「そうですか…」
「あのさ、二人とも。」
?と突然のロウルの声に立ち止まる二人と一匹
「良かったら、俺も一緒に旅していいかな?」
ロウルは少し恥ずかしそうに言った
「どうだ?リオン」
リットがリオンに問う
「えっ…えっと…」
急に話を振られたリオンは少しうろたえる
「私は、いいと思いますけど…」
「だそうだ。」
リットはリオンの言葉を聞いてロウルに言った
「俺も同意見だ」
リットは頷きつつ言う
ロウルは笑顔になった
「じゃあ、よろしく!」
こうして、ロウルが仲間になった。
「リットさん、今のはひどいですよ!」
リオンがリットを責める
「すまなかった…俺が言うのは何か違うような
気がしたからな…」
「別に言ってもよかったと思うけど…?」
ロウルがリットを諭す
「そうだな…次からはそうしよう。」
リットはロウルの言葉に頷いた。
ワフッとワルグが鳴く。
見ると森の出口だった
森を出ると夕焼けが三人を眩しく照らしていた…
~次回予告~
森を出たリオン達。
街に戻るととある出来事が
それによって物語は次なる舞台へ!
次回 水成都市ミナト編
よろしくお願いします