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リオンの物語 迷いの森編 前編

第五話パート1 <迷いの森>へ

リットとリオンは今、冒険者の集まる場所

いわゆる“ギルド”に来ていた。

ギルドはなんだろうか…神聖な

 雰囲気がどことなくするだけの

教会?のような感じの建物だ。

「リットさん…ここは?」

リオンは何か分からずリットに質問する。

「ここはギルド、ここでは色々な依頼を

 受けることが出来る。

 俺たちの目的はここで今から行く

 <迷いの森>への通行許可を得ることだ。」

<迷いの森>の事をリオンはリットに

すでに教えられていた。


<迷いの森>。

人を惑わせる森で、リットさんの目的の一つが

そこにあるのだと…。


「入るぞ。」

リットはリオンにそう告げ、ギルドに

入っていった。リオンもそれに続く。


中は広くカウンターのある酒場のようになっていた。

人がごったがえしており誰もが剣や弓などの

武器を身に着けていて、とても強そうだった。

二人はカウンターへと向かう。

「…彼らか。」

そんな二人を一人のフードを被った者が

座りながら凝視し、そう呟いた。


リオン達はカウンターに着いた。

「いらっしゃいませ、何をなさいますか?」

カウンターのお姉さんはにこやかに笑いながら

二人にそう問いかける。

「クエストを受けに来た。」

リットがそう答える。

「クエストの受注ですね。かしこまりました

 …そちらの方はお連れ様ですね?」

お姉さんはリオンにそう話しかけた。

「はい、そうです。」

リオンは答える。

「かしこまりました。それでは冒険者の証を

 ご提示していただけますか?」

そう言うお姉さんにリットは一つ頷き

スッと小さなメダルを見せる。

「そちらの方もご提示をお願いします。」

お姉さんはリオンに催促する。

しかし、リオンには何が何だか分からなかった。

「あ、あの…証って何ですか?」

一瞬、場が静まり返る。

「…なるほど、ではまず彼女の新規登録から

 行いましょうか。」

カウンターのお姉さんはリオンの言葉で状況を

察したようで、笑顔に戻り告げた。

「…そうだな。」

リットは不服そうに頷いた。

「では、こちらへ…」

とお姉さんは建物の奥にリオンを導く。

「…なるべく早くな。」

リットはリオンにそう告げ、その場を離れる

リオンもそれを見て、すぐに向き直り

建物の奥へと進んだ。


「あの…冒険者ってなんですか?」

リオンはギシギシとなる廊下を通りながら、

少し前を進んでいるお姉さんに聞いた。

「冒険者とは、各地にある“ギルド”と呼ばれる

 建物にてクエストと呼ばれるもの、

 まあ、いわゆるお願いみたいなものです

 そして、それを受け解決に向かう人の事です。」

お姉さんは歩きながら続ける。

「しかし、依頼を受けずただ各地の

 まだ人が踏み入れたことのない場所に

 行く人達もいます。彼らもれっきとした

 冒険者です。

 冒険者になれば立ち入り禁止区域と

 なっている場所にも入ることが出来ます。」

ギシギシと一歩一歩歩くたびに

うるさいくらい木の音が鳴り響く。

「さて…着きました。」

お姉さんは一つのドアの前で止まった。

ドアが開き中へと進む。

中は単純なつくりとなっており、

カウンターが一つあるだけだった。

「では、新規登録を始めましょうか。」

お姉さんはリオンに微笑みかけ言った。


一方その頃…

「…ふう。」

リットは一人ため息をついた。

どれだけ自分は待てばいいのか…

そんな事を注文した飲み物に映る自分の顔を

見ながら思っていた。

頼んだはいいが、

なんだか飲む気になれなかった。


「…おい聞いたか?

 迷いの森のクエストあるだろ、あれそろそろ

 危険クエストに格上げされるらしいぜ。」

「マジかよ、あれって簡単じゃないのか?」

「いや、俺の知り合いが

 実際に行ってみたらしくてさ。そしたら中は

 生態系がメチャクチャになってたらしいぜ。

 それに死人も出てたとかなんとか…」


「…。」

リットは飲み物を一気に飲み干した。

その時、

ドンっとなぜかリットの背中に軽い衝撃があった。

何事か、とリットは振り返る。

すると一人のフードを被った者が

通り過ぎて行った。

リットはその者が何かを落としたことに気付く。

「おい…!」

リットは落とし物を確認した後、呼び止めようと

顔を上げる、しかし見当たらない。

「…っ!…??」

リットは困惑した。

けれども落とし物を

そのままにしておくわけにはいかないので、

とりあえず自分が持っておくことにした

リットが拾ったのは小さなカギだった。

「…どうしようか」

リットはこれをどうするか悩む。


「お待たせしました、リットさん。」

リットの背後から声がする。

「…っ!ああ早かったな。」

驚きつつ、リットは答える。

「はい、早くクエストを受けましょう。」

リオンはリットにそう告げた。

まあ、なんとかなるだろう…。

リットは一人ポケットになおしたカギを

触りつつそう思った。


「これでよし…。」

ギルドの外、誰もいない裏路地で

フードの男はそう呟く。

「後は、森で…す…だけだな…」

男はボソッと呟き、歩き出した。


第五話パート2 運命の出会い

ザっと音をたてて地に足をつくと、

少しだけ砂ぼこりが舞う。

目の前には眩しいくらいの日の光とは

あまりにも対照的な暗闇が広がっている。

森が日の光を嫌っているように思える…

「ふう…」

そんな初めて見る森の不気味さに

ため息が出てしまうほど圧倒されている

リオンだった。

「リオン…」

そんな彼女にリットが森を見つめたまま

話しかける。

「分かっているとは、思う。

 ここは迷いの森だ、一度はぐれたらそう簡単には

 再会できない。」

リオンは真剣な面持ちでリットの話を聞く

「それに聞いた話によると生態系も滅茶苦茶らしい

 死人も出ているようだ。

 俺が調べた時には、そんなことは

 なかったはずなんだが…」

この時、リオンの頭の中にあの大きな白狼が

ちらついた。

「…行くぞ。」

リットはそう言って歩き出す

リオンはリットの少し後ろをはぐれないように

ついていく。

二人は森に入っていった…


そんな二人の後ろ姿をじっと見つめるものがいた

それはあのフードの男だった

「…?」

フードの男は首を傾げる

二人の後に遅れて続くように、

白い子狼が森に入っていったからだ。

「…なるほど。」

フードの男は頷く

「あれは…任せるとして、

 できる事といえば…そうだな。」

フードの男はそう言って歩き出した


「あれっ…?中はそうでもないんだ。」

リオンは一人驚いた。

外から見ると薄暗く、気味の悪い

森だったのだが、いざ入ってみると意外にも

明るかったのだ。

「…油断するな。」

リットは少しリオンが浮かれていると思ったらしく

ピリピリとした空気で注意した。

「はい…」

リオンは素直に反省する。


森を進む

ハアハアとリオンは息を荒くしていた。

まだリオンにも体感的にはそこまで

歩いていないのは分かっているが、やはり木の根が

複雑になっているのがどうにも厄介だった。

デコボコとし、森が足元に意識を

向けさせようとしているのがありありと分かった。

また少し進む

その時、リットが止まった。

「待て…」

リオンを手で制し、辺りを見る

「しまった…やられた。」

「もしかして、迷いました?」

「いや、そうじゃない。

 俺たちは元の場所に戻されたようだ…。」

見ろ…とリットは指をさす。

リットが指をさした方には日の光があり

先程二人が入ってきた場所に出ていた

「そっ…そんな…」

リオンはその場でへたり込む。

「さすがは迷いの森…一筋縄ではいかないな。」

リットはこうなることが分かっていたのか、

もうクールさを取り戻していた。

だが、リオンはまだ衝撃から立ち直れずにいた。

リットは優しく手を差し伸べる

「いこう…次はもう失敗はしない。」

リットは力強い目でそう言った。

リオンはリットの手を取り立ち上がる

そして二人はまた森の奥へ進んだ


二回目、またしばらく森を歩く。

「…。」

スッとリットがリオンをまた手で制す。

「…あれは人か?」

リオンはリットが見ている方向をじっと見る。

暗くてよく分からないが確かに人が

何匹かのモンスターに襲われているようだった。

「…いくぞ!」

リットは一番に駆け出した。

「えっ…待ってくださいリットさん!」

リオンも慌てて駆け出した。

その手にはあの短剣が握られていた。


「くっ…くそ…。」

ロウルは片足をついた。

ロウルは今アズサを守るようにして

五匹の鳥型のモンスターと戦っていた。

けれども、相手が多すぎた。

ロウルは防戦一方だった。

ロウルは立ち上がり、剣を構えなおす。

絶対に負けるわけにはいかなかった

この鳥型のモンスターは、知能が高く

魔法を使っていた。

魔法で作り出した石を高速でぶつける魔法である。

先程からロウルに石がかするのだが、

そのどれもがロウルの体に切り傷を残していた。

恐らく直撃すれば肉が抉れるほどの

威力はあるだろうとロウルは予測する。

剣で石の軌道をずらし避ける

ロウルは走り出した

鳥型モンスターの体に剣を振る

直撃した。

一体の体から血が出る。

モンスターの体が力もなく地に落ちた。

ゆっくりと光の粒になっていく。

それに構わずロウルは向き直る。

あと四匹。

四匹全てを視界に入れた

ロウルは剣を構え走り出す

そしてまたモンスターに向け跳躍した。

「はあ!!」

左なぎ払いの一撃。

渾身の一撃がモンスターの体を切り裂く。

いや、切り裂いて“しまった”。

ズアッと切り裂いた部分からもう一体の

モンスターの顔が出てきた。

切り裂かれたモンスターの後ろに

潜むようにいたのだ

「し、しまっ…!!」

ロウルは前傾姿勢のままその様子を見る。

モンスターのくちばしに光が集まる。

その光は石を作り出す。

「くっ…!」

ロウルは奥歯を噛みしめた。

刹那、

ザンッとモンスターの頭が切り落とされた。

「はっ…!」

ロウルは受け身を取る。

ロウルを守るように二人の人物がいた。

「大丈夫か?」

二人のうちの一人、獅子族の青年が

剣を構えつつ話しかける。

「ああ、大丈夫だ。」

ロウルは立ち上がりつつ言った。

「まだ戦えますか?」

少女のほうが今度は尋ねる。

「もちろんだ!」

ロウルは叫ぶように言った。


リオン、リット、ロウルの三人はこうして出会った。


第六話 白い子狼と死にゆく少女

残るモンスターはあと二体

こちらは三人だ。

「リオン、あの少女を守ってやれ。」

リットはアズサを見ながらそう言った。

「そうしてもらえると助かる。」

ロウルも続けて言う。

「分かりました!」

リオンはアズサに駆け寄る。

そうしてアズサを守るように立った。

「よし、やるぞ!」

「了解!」

リットとロウルが叫んだ。

二人はそれぞれ別のモンスターに向かう。

戦いはすぐに決着が付きそうだった

リットがモンスターの翼を切り落とす。

片翼を失い、がくんとモンスターが地に落ちた。

光の粒に少しずつなり始めている。

それを見てリットはロウルの加勢に向かった。

ロウル側のモンスターは首を切り落とされ

絶命する。

リオンはそれを見届け、アズサを治そうと

アズサのほうを向いた。

そう、誰もが決着がついたと思っていた。

だが、ついてはいなかった。

まだ死んでいなかったのだ片翼のモンスターが。

片翼のモンスターは残る力を魔法に変え

大岩を作り出しリオンに放った。

「!! リオン!」

二人が叫ぶ。

「えっ?」

リオンは振り返る

見ると大岩がすぐそこまで迫っていた。

リオンは何も反応できない。

大岩がリオンに直撃しそうになる。

しかし、バキッと大岩が突然砕けた。

「えっ…?」

またリオンは驚きの声を上げる。

大岩を横から飛び出した子狼が砕いたのだ。

「ガウッ!!」

白い子狼は怒るように一鳴きし、

モンスターに向かって走る。

一瞬で喉元に食らいつき噛み千切った。

戦いは本当に終わった。


白い子狼はトコトコと歩いてリオンに

近づきワフッと一鳴きして尻尾を振る。

「この子は…。」

リオンは困惑してしまう。

「そういえば、ここに来るまで。

 いやそれ以前から何かの気配を感じていたが…

 そうか、こいつだったのか。」

リットは白い子狼を見ながら言った。

「そうなんですか?」

ああ…とリオンの問いにリットが頷く。


「アズサ、良かった。なにもされてないな。」

そんな二人の会話を聞きつつ、

ロウルはアズサを抱きかかえながら言った。


「こいつはリオン、お前についていきたいと

 言っているようだ。」

ワフッと一鳴きする子狼を一瞬だけ見て

リットは言った。

「この子の言葉が分かるんですか?」

リオンはリットに聞く。

「ああ…カタコトだがな。」

リットは頷いた。

「そうなんですか…。」

リオンは子狼を見る。

目が合った。

「分かった、いいよついてきて。」

リオンは子狼に微笑みながら言った。

ポンっと頭をなでる。

ワンっ!と子狼は力強く鳴いた。


「なあ、二人のどっちかが治癒魔法を

 かけられないか?」

ロウルがアズサを抱えて二人に話しかける。

リオンは子狼から視線をロウルに移す。

「私が出来る…と思います。」

リオンは治癒魔法についてマガータから

聞いていた。

けれども、実際にやるのは初めてなので

自信がなかった。

「…頼めるか?」

ロウルはリオンに聞いた。

正直に言えば藁にもすがる思いだった。

アズサを抱えている両手から少しずつ

アズサの体温が感じられなくなっていたからだ。

「はい…」

リオンは小さく頷く。

地面に降ろされたアズサの手をリオンは握る

リオンはこの時、異常に冷たくなっているアズサの手に

言われようのない恐怖と焦りを感じた。

リオンは目を閉じ、相手をいやすイメージをしながら

力を込めるように深く集中する。

リオンの体から手を通りアズサへと

治癒の力のこもったエネルギーが伝わる。

そして、アズサの生命力を増強しようか、と

していた時、集中しているリオンの意識に

語り掛ける声があった。


ありがとう…でも…もうやめて…


「えっ?」

この声をきっかけにアズサに流れていた

治癒魔法の流れはストップしてしまう。

「うう…。」

弱弱しく声を出しながらアズサが

そっと目を覚ます。

「アズサ!?…気が付いたのか!」

ロウルはアズサの様子を見て声を荒げる。

「…ロウル…うん。」

アズサは倒れたまま返事をする。

「でも、もう遅すぎたよ…」

その声は寂しそうだった。

「!!…アズサ、嘘だろ…」

ロウルはリットとリオンの姿など

見えなくなってしまったかのように言う。

その顔は驚愕と動揺の色がはっきりと浮かんでいた。

「…。」

二人は顔を背け、辛すぎる現実に何も言えなくなっていた。


「ロウル…これ…」

アズサはロウルに震える手でネックレスを渡す。

ロウルは目に涙を浮かべながらそれを受け取った。

「私を…守ってくれて…あり…が…とう…」

アズサはそれきり動かなくなってしまった。

「おいっ?アズサ!

 おい!返事しろよ!おいっ!!」

ロウルは必死に既にこと切れているアズサを

必死にゆする。

アズサの体はロウルのゆすりを受けながら

光の粒になって消えてしまった。

ロウルの受け取ったネックレスを残して…

「…アズサ。」

ロウルは形見となったネックレスを握りしめる。

「リオン…」

リットがリオンに近づく。

彼は少し離れよう、というジェスチャーをして

リオンに移動を促した。

リオンは初めてこの世界での人の 死 を知った。

そしてもうこんなことがないように、と

そっと誓ったのだった。

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