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第六話 「可愛い子とは旅がしたい」

 心とのデートの翌日、今日も無慈悲なことに学校である。

 俺は昨日のことを思い出し、幸せな気分でリビングに向かった。


 「あっ、お兄ちゃん、おはよー」


 「ああ、おはよー」


 愛しの妹が作ってくれた朝食をいただき俺は一日の活力を養った。


 「それじゃあ心、お兄ちゃん先行くからなー」


 「あっ、待ってお兄ちゃん!」


 そう言って心は俺を呼び止めて玄関へと慌ててきた。


 「どうかしたのか?」


 「えっとね、その……」


 そう言って下を向き体をもじもじさせる妹。


 ――――――――可愛すぎるだろっっっ!


 なんなんだこの生き物は、なんでこんなに可愛いんだ、もうこのまま学校に行かずに一日中家で眺めていたいていうかもうそうしよううんそれがいい!


 ――――――――――などと一人で勝手に自己完結した頃ようやく心は口を開いた。


 「……いっ、いってらっしゃい、お兄ちゃん」


 「――――――――――――――へ?」


 待て待て待て待て、いったん落ち着こう。

 いま心はなんていった?

 いってらっしゃい、て言ったんだよな?

 いや、それ自体はよくあることなんだ、だが、今回のはいつもとは明らかに違うのだ。

 そもそも、わざわざ俺を呼び止めなくてもリビングから言えばいいし、っていうかいつもはそうしてるし。

 ならなぜわざわざ呼び止めてまでしてきたのだろうか。


 …………まっ、まさか、呼び止めてでも俺にいってらっしゃいと言いたかったのだろうか。

 もしそうだとしたらお兄ちゃん、嬉しくてもう学校にいけません!


 ――――――――――――――なんてことを考えていたら、沈黙に耐えられなかったのか心が話しかけてきた。


 「もっもう、お兄ちゃん!なんで何も言ってくれないの!」


 「あっ、ああ、すまない。い、いや、わざわざ呼び止めて言ってくれるとは思わなくて……」


 「やっぱり迷惑だった?」


 そういって悲しそうにうつむく心。


 「いっ、いやいや、そんなことないぞ!……むしろお兄ちゃんはうれしかったよ」


 「ほっ、ほんとに?」


 「ああ、本当だよ」


 「それなら、よかった」


 そう言ってとてもうれしそうに微笑む心。

 もうこの笑顔さえあればお兄ちゃんは生きていけるよっ!


 「それじゃあ改めて、いってらっしゃい、お兄ちゃん」


 「ああ、行ってくるよ、心」


 そう言って俺は玄関の扉を開いた。


 ――――今日はいい一日になりそうだぜ!




※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 ――――――――時間は流れて六限目、時間割はホームルームだ。


 「それじゃあ今から皆さんで自由に明日の遠足の班を決めてください」


 そう、すっかり忘れていたが、明日は遠足なのだ。

 ちなみに行先は京都だ。


 「――――うーん、自由に決めろ、か……」


 そういわれて誰と回ろうかと考えていたら声をかけられた。


 「おーい、真―」


 「ああ、綾音か。どうした?」


 そう言ったら綾音は急に体をもじもじさせながらいつもより小さい声で話し出した。


 「あっ、あのさ、明日の遠足なんだけど、いっ、一緒に、回らない?」


 「ああ、もちろんいいぜ」


 「ほっ、ほんとに!」


 そう言って嬉しそうに笑顔を向けてくる綾音は素直に可愛いと思う。

 しかし妹のほうが上だがなっ!


 「それじゃああと誰を誘おうか?」


 「あっ、あのね、出来たら、二人がいいなあ、なんて思ったり……」


 「そっ、そうか?お前がいいならそれでもいいが」


 「ほんと!それなら二人で回ろっ!」


 というわけで、明日の遠足は二人で回ることになった。


 (――――そういえばなんで綾音は二人がいいなんて言ったんだろう?)


 そんなことを考えていたら授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。



※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 放課後、俺はいつも通り綾音を駅まで送っていた。


 「ねーねー、真、明日楽しみだね!」


 「ああ、確かに楽しみだな」


 「ねえねえ、京都のどこを見て回りたい?私はやっぱり清水寺かなあ、二寧坂(にねんざか)でお土産も買いたいなー」


 「俺もそこがいいかな。清水寺は見てみたいしな」


 「よし、じゃあ明日は清水寺を中心に見て回ろう!」


 「ああ、明日が楽しみだ」


 「うん!あっ、駅着いたね。それじゃあ真、また明日ね!」


 「ああ、また明日な」


 そう言って綾音は駅のホームへと走っていった。


 「さて、それじゃあ俺も帰りますか」


 俺は明日の遠足のことを考えながら自転車をこいで家に帰った。


 (……結構明日、楽しみだなあ)




※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 「ただいまー」


 そう言って靴を脱いでいたらリビングから足音が聞こえてきた。


 「お帰り、お兄ちゃん」


 朝と同様、妹が玄関まで来てくれた。


 ――――――ああ、俺はなんて幸せ者なんだ!


 「ああ、ただいま、心」


 ――――――――その後制服から着替えた俺は、自分の部屋で小説を書いていた。


 …………しかし、アイディアがなかなか思い浮かばずにいた。


 「うーーーーん、何かいいアイディア降ってこないかなあ……」

 

 ――――――そんなことを考えていたらどうやら相当な時間が経っていたらしく、外を見たらすでに日は落ちていた。


 「ここまで考えても出てこないとは……」


 モチベーションが落ちていたその時、神は舞い降りた。


 「お兄ちゃ―ん、入るよー」


 そう、心がやってきたのだ!


 「ああ、いいよ」


 「ねえねえお兄ちゃん、今から夜ご飯作るけど、何がいい?」


 「そうだなあ⋯⋯、心が作るものは何でもおいしいから悩むなあ……」


 「そっ、それは、あっ、ありがとう、です」


 本当のことを言っただけなのに照れてしまった心を見ていたら、さっきまでの沈んだ気持ちはどこかに吹き飛んでしまった。


 「それじゃあ今日はカレーがたべたいな」


 「うん、わかった。それじゃあできたら呼ぶね」


 「ああ、ありがとうな」


 そうして心は料理をするために一階へと戻っていった。


 「それじゃあ、もうひと頑張りしますか!」

 

 ――――――書いている途中に寝てしまったことは内緒だ



※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 「「いただきまーーす」」


 あの後、料理ができたので俺を呼びに来た心が起こしてくれて、二人の幸せな晩餐会が始まった。

 メニューはリクエスト通りカレーである。

 ちなみにうちのカレーは鶏肉です。


 「そういえばお兄ちゃん、私明日遠足で京都に行くんだよ」


 「そうなのか?実は俺も明日遠足で京都に行くんだ」


 「えっ、そうなの?だったら向こうで会うかもね」


 「ああ、そうかもしれないな」


 そんなことを話していたらあっという間にカレーを食べ終えてしまった。

 心もおなかがすいていたらしく、ほとんど同じタイミングで食べ終えていた。


 「「ごちそーーさまでした」」


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 洗い物を終え、リビングのソファでくつろいでいた。


 「そういえばお兄ちゃん、さっきの話の続きなんだけどさ、誰と一緒に回るの?」


 「うん?ああ、綾音とだよ」


 「……まさか、二人で回るの?」


 質問に答えただけなのになぜか急に心をまとう空気が変わった気がした。


 「あっ、ああ、そうだよ」


 「へー、そうなんだー、二人で回るんだー」


 「あ、あの、心さん?」


 「なんですか、真さん?」


 「どうして急に機嫌が悪くなったのでしょうか?」


 「……知らないっ、お兄ちゃんのばか……」


 なぜだかわからないが急に心の機嫌パラメーターが急降下していることに気づいた俺は何とか話を続けた。


 「そっ、そういう心は誰と回るんだ?」


 「私?私はね、空宙乃ちゃんとあと男子三人とだよ」


 「ほう、男子もいるのか」


 「うん、学校の班で回らなきゃだめだからね。たぶん空宙乃ちゃんとずっとしゃべってるよ」


 「それなら心配ないな」


 そう言いながらも内心はすごく心配していた。

 遠足でテンションの上がった男子が心に何かしてしまったらどうしようかと。


 「……清水の舞台から叩き落すか」


 「何物騒なこと言ってるの!」


 おっといけない、どうやら心の声がもれてしまったようだ。


 「いや、なんでもないよ、あっはっはー」


 「そう?それじゃあ明日も早いし、お風呂入って寝るね」


 「ああ、それじゃあお休み」


 「うん、お休み、お兄ちゃん」


 そうして心はリビングから出て行った。



※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 心の後で風呂に入って自分の部屋に戻った俺は、明日の準備をしていた。


 「――――これで忘れ物はなしっと。さて、明日も早いしさっさと寝るか」


 そう言って俺はベッドに入り部屋の電気を消した。

 だが、明日のことを考えてしまい、なかなか寝れずにいた。


 「遠足が楽しみで寝れないとか、小学生かよ……」


 ――――――――それから寝るまでに一時間かかったとか

気に入っていただけたのであれば、ブックマークやコメントをぜひぜひよろしくお願いします!

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