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第三話 「ラノベ主人公の周りはなんでかわいい子ばっかりなんだ?」

 「おっ、おはよう、心」


 「⋯⋯⋯⋯うん」


 俺が妹に理不尽に怒られた次の日、今日はあいにくの雨である。

 そして、俺の心も雨である。

 なぜなら、まだ妹と仲直りができていないからである。


 ⋯⋯⋯⋯やばいやばいやばいやばいやばい!


 このままだと俺らはどうなっちゃうんだ、もっ、もしかしてもう二度と口をきいてもらえないとか⋯⋯。


 そっ、そんなことになっちゃったら俺はもう生きていけない、っていうか生きてる意味がない!

 でも今回は俺から何かしたわけじゃないから謝るのもおかしいし、だからと言ってこのままだと俺は生きる意味を失っちゃうし、全く、どうしたらいいんだ‼


 ――――――――そんなことを考えている間に、俺たちは朝飯を食べ終えていた。


 (こっ、こうなったら学校で綾音に助けを求めるしかない!)


 「そっ、それじゃあお兄ちゃん、もう行くな」


 そう言って俺は食卓から出ていこうとした。


 「――――まっ、待って、お兄ちゃん‼」


 しかし、そんな俺を心は引き留めた。


 「おっ、おう、どっ、どうした?」


 「あっ、あのね、お兄ちゃん⋯⋯」


 「おっ、おう⋯⋯」


 「きっ、昨日はその、ごめんなさい!お兄ちゃんは何も悪くないのに、わっ、私がいっ、一方的に怒鳴っちゃって、本当にっ、本当にごめんなさい」

 そういって心は泣き出してしまった。


 「――――おっ、落ち着け、心。大丈夫、俺は何も怒ってないから。だっ、だから泣き止んでくれ、なっ」


 「――――――――――ほっ、ほんっ、とうっ、ほんとうにっ、おこってないの?」


 「あっ、ああ、本当だよ。それに、俺も一昨日やらかしちゃってるしな。だからこれで全部チャラ。なっ、それでいいよな?」


 「うんっ、うんっ、これで仲直り、したんだよね?」


 「ああ、そうだとも。これで仲良し兄妹に仲直りだ」


 「よっ、よかったああ、本当に、よかった⋯⋯」


 どうやら妹も俺とのことでどう謝るかずっと悩んでいたらしい。


 ――――――こんなに妹から思われてる俺って、なんて幸せ者なんだっ‼


 「そっ、そうだお兄ちゃん、こっ、これ⋯⋯」


 「おっ、お前、これは、まっ、まさか⋯⋯」


 妹が渡してきたのは、なんと手作りの弁当だった。


 いつもは朝は時間がないので昼飯は購買で買うことになっていたが、今日はどうやら早起きをしてまで作ってくれたらしい。


 「そっ、その、仲直りのしるしに⋯⋯ねっ」


 「あっ、ああ、そういうことならありがたくいただくよ。わざわざありがとな」


 「うっ、ううん、いいよ、お礼なんて」


 「いや、わざわざ早起きして作ってくれたんだろ?感謝してもしきれないよ」


 「そっ、それは、どう、いたしまして、です」


 ――――――――――かっ、かわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ‼


 なんですか、なんなんですか、妹は俺をキュン死にさせようとしてるんですかっ!

 うれしそうに微笑んでる顔、お礼を言われたことによって照れ、薄い赤に染まった頬、どれをとってもかわいすぎる!

 なんなんだこのかわいすぎる生き物はっ‼


 「――――――――――――――と、ところでさ、お兄ちゃん」


 「どうした?」


 「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯時間」


 「――――――――――――――――あっ」


 ――――まあ誰にだって二日連続で遅刻することくらいあるよねっ




※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 「――――――ちくしょー、何もあそこまで怒らなくてもいいじゃないか」


 放課後、俺と綾音はいつも通り駅へ向かっていた。

 今日は雨なので俺も電車である。


 「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯真」


 「はっ、はい‼」


 綾音の声色はあからさまにいつもと違っていた。


 (これは完全に怒ってらっしゃる⋯⋯)


 「今日はなんで遅刻したの?」


 「えっ、えっとですね、そっ、その、あれがこうなったと言うか、それがそうなったと言うかでいろいろありまして⋯⋯」


 「言い訳無用っ!」


 「はっはい‼」


 「昨日言ったよね、あんまり夜更かししちゃだめだよって。私、言ったよね!」


 どうやら綾音は、俺が遅刻した理由はまた夜遅くまで小説を書いていたと思っているらしい。


 ――――まあでもまさか朝から妹に泣かれたからだとは言えないし、どうしような。


 「真、聞いてるの?」


 「はっ、はいっ一言一句残さずに聞いております!」


 「じゃあなんで遅刻したの?」


 「そっ、それはその、家庭の事情といいますかなんといいますか」


 「⋯⋯⋯⋯何かあったの?」


 「ちっ、違うよ、そんな大げさなことじゃなくてだな」


 「まあでも、家庭の事情ならあんまり何も言えないよね」


 「ほっ⋯⋯⋯⋯」


 どうやら俺は尋問から逃れることができたようだ。


 「でも、遅刻した罰は受けてもらいます」


 「なっ、何をさせる気だ?」


 「それは⋯⋯今から真は私と遊んでもらいます!」


 「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯は?」


 「だーかーらー、今から私と遊んでもらいます‼」


 「あっ、ああ、それはいいんだが、そんなことが罰でいいのか?」


 「真が嫌なら違うことでもいいけど⋯⋯」


 「ぜひとも遊びましょう‼」


 そんなわけで今から遊びに行くことになった。


 ――――妹に帰るの遅くなるって伝えなきゃ。




※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 ――――――電車に乗ること十五分、俺たちが下りる駅へと着いた。


 「それで、どこへ行くんだ?」


 「あそこだよー」


 そう言って綾音が指さした先には某有名書店があった。


 「お前、ここって本屋じゃねえか。俺は全然いいけど、お前はここでいいのか?」


 「うん、さあさあ、早く入ろっ!」


 そう言って綾音は俺の手を引っ張って中へ入っていった。


 「わあーーーー、小説がいっぱいだーーーーーー!」


 中に入るとすぐに綾音はラノベコーナーへと向かったので、俺もそれに従った。


 「お前、ラノベとかそんなに好きじゃないんだろ?」


 「うーーん、まあ、すごく好きでもないし、だからと言って嫌いでもないけどね」


 「なら何でここにしたんだ?」


 「それはね、真が書こうとしてる作品の何かヒントにでもなればなあって思ったんだ」


 「綾音⋯⋯⋯⋯」


 「最近の真、なんだか疲れてそうだったから、何か手助けになれないかなあって。それに真、ラノベを書くのも好きだけど、読むのも大好きじゃん!だから息抜きもしてほしかったんだ」


 「⋯⋯⋯⋯ありがとう、綾音」


 「うんっ、どういたしまして」


 「⋯⋯よしっ、それじゃあラノベ祭りと行こうか!」


 「おーーーっ!」


 この後俺らは夜まで俺おすすめのラノベを立ち読みしていた。


 ――――――店員さんの視線ってあんなに痛かったんだねっ




※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 「ただいまー」


 本屋で長時間にわたる立ち読みをした後、俺は綾音を家まで送ってから帰ってきた。


 「おかえりー、お兄ちゃん。ご飯で来てるよー」


 「ああ、わかった。すぐ行くよー」


 妹からのおかえりなさいと手作りの夜ご飯が疲れた俺の心を癒してくれるぜ!


 「「いただきまーーす」」


 俺たちはいつもより遅めの夜飯を食べ始めた。

 今日のメニューは鳥の唐揚げだ。


 「それにしてもお兄ちゃん、今日は帰るの遅かったね」


 「ああ、まあな。なんなら先に食べててもよかったのに」


 「べっ、べつに、お兄ちゃんと一緒に食べたかったとか、そんなんじゃないんだからね。ただ、別々で準備するのがめんどくさかっただけなんだからねっ」


 ――――――おおっと、いけないいけない、妹のかわいさに、お兄ちゃん今日も昇天しかけたよ。


 「そっ、そんなことよりお兄ちゃん、今日は何してたの?」


 「今日か?今日は綾音と遊んでたんだよ」


 「⋯⋯⋯⋯⋯⋯綾音さん、ね」


 「えっと、心さん?」


 なぜだかわからないが、急に妹の声色が変わった。


 「ふううううううううううううん、お兄ちゃんは綾音さんとデートしてたから帰ってくるのが遅かったんだ」


 「でっ、デートじゃねえよ!」


 「とか言って、本当は付き合ってたりするんじゃないの?」


 「つ、つつつつつつっ、付き合ってなんかねえよ!」


 「⋯⋯⋯⋯本当に?」


 「ああ、本当だとも」


 「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ならいいんだけど」


 「え?何がいいんだ?」


 「べっ、べつに、何でもないんだからね!勘違いしないでよねっ‼」


 「おっ、おう⋯⋯」


 「そっ、そんなことより早く食べちゃおうよ」


 「あっ、ああ、そうだな」


 そんなわけで、俺たちは夜飯を再び食べ始めた。


 ――――――何がよかったんだろう?



 「「ごちそーーさまでした」」


 夜飯を食べ終わり、俺はいつも通り食器洗いをしてから自分の部屋で小説のプロットを練っていた。

 ちなみに妹は今、風呂に入っている。


 「何かいいアイディアが出てきそうなんだよなあ⋯⋯」


 綾音のおかげでかなり考えはまとまってきたのだが、あと一歩のところが思い浮かばないでいた。


 (考えろ、俺が今一番書きたいことはなんなんだ⋯⋯⋯⋯)


 しかし、いいアイディアは出てこなかった。

 今日は諦めるかと思ったその時、


 「お兄ちゃん、お風呂あがったよー」


 そう言って妹は俺の部屋へと入ってきた。


 ――――――――――――――これだっ‼


 風呂上がりの妹の姿を見て、俺はそう思った。


 ――――この妹の美しさを、小説にしよう、と。


 (妹を見て妹物の小説を書こうとか、やっぱり俺、相当シスコンだよなあ)


 「お兄ちゃん、どうしたの?」


 妹の言葉を聞き、俺はトリップ仕掛けていた意識を戻した。


 「ああ、お前のおかげで次の小説のアイディアが浮かんだんだよ」


 「私のおかげで?でも私、何もしてないよ」


 「いや、俺には十分すぎることをしてくれたよ。ありがとな、心」


 「それならまあ、どういたしまして」


 「それじゃあ今日はもう疲れたし、俺も風呂に入って寝るとするか」


 「うん、わかった。それじゃあお休み、お兄ちゃん」


 「ああ、お休み、心」


 そう言って妹は自分の部屋に、俺は風呂場へと向かった。


 「――――――――はああああああ、癒されるなあ」


 湯船につかりながら俺は、思い浮かんだアイディアを整理していた。

 そして、もう一度気合を入れなおしていた。


 「よおおおおおおおし、やってやるぞ、おおおおおおおおおおっ‼」


 「お兄ちゃん!うるさい‼」


 「すっ、すいません⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


 ――――――――――やっぱり最後はこうなるのね。

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