第一章 第一話 「小説ってこんな感じでいいですか?」
「お兄ちゃん、私もう学校行くよー」
「ああ、気を付けていくんだぞ~」
四月某日、今日から俺、上屋真は高校二年生となる。
父親が再婚してから六年、そしてその後父親が単身赴任となり、母親もそれについて行ってから三年が経っていた。
つまり、俺と妹が二人暮らしを始めてもう三年も経ったのだ。
最初、俺たちが二人暮らしをしろと言われた時は、それはもう焦った。
そもそも俺まだ中学生じゃん、妹に至ってはまだ小学生じゃん!だとか色々思ったことはあった。
だが、俺はそんなことより先の思ったことがある。
そう、それは⋯⋯
俺が死んじゃうかもしれないじゃん‼
⋯⋯だって俺の妹めちゃくちゃかわいいじゃん。
銀髪ロングの髪とか、ぱっちりした大きい目とか、整った顔とか、当時小学五年生とは言え少しずつ色々なところが成長してきてたじゃん、ていうかもう存在が天使じゃん!
――――そう、何を隠そう、俺は重度のシスコンである。
だって仕方ないじゃん、心が可愛すぎるのが悪いじゃん、ちなみに心とは我が妹、上屋心のことである。 皆の者、決して忘れるではないぞ。
⋯⋯俺は誰に説明しているのだろう。
ま、まあそんなわけで二人暮らしをしているわけだが、今日から俺たちはそれぞれ新学年となる。
俺の通っている学校、櫻野西高校までは自転車で三十分程度で着く。
別に電車で行ってもいいのだが、朝の電車の人込みは苦手なので避けるようにしている。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
――――――学校についた俺は、昇降口に掲示されている新クラスの名簿を見ていた。
(ええっと、俺は⋯⋯お、今年はA組か。誰か知り合いいるかな)
「おーーい、まことーーーー!」
聞き覚えのある声が聞こえ、そっちに顔を向けるとそいつは走ってこっちに来た。
「まことー、おはよ~」
「おお、綾音か。おはようさん」
――――こいつは染井綾音。
お互いの家が近く、幼稚園から高校までずっと一緒の幼馴染だ。
黒髪ショートボブで顔も整っており、体形も出るところは出て、引っ込むところはそこそこ引っ込んでいるという見た目に加えて性格も良い。
そのため学校中の男子だけでなく、女子からも人気が高い。
「ところでそんなに慌てて、どーしたんだ?」
「別にどーもしないよ。真が見えたから走ってきちゃった」
さらには天然とまで来た。
「ところで真はもう自分のクラス確認した?」
「ああ、俺はA組だったよ。お前はどうだったんだ?」
「今から見るとこだよ~。えっとね⋯⋯⋯⋯あ、あったよ!真と同じA組だよ!やったやった~~‼」
「お、じゃあ今年はクラスメイトだな。よろしくな、綾音」
「うん!こっちこそよろしく、真」
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
――――――そして放課後、俺は自転車を押しながら綾音を駅まで送っていた。
綾音は電車通学のため、一年生の頃から駅までは一緒に帰っていた。
「ねえ、今日どこかで遊んでいかない?」
「悪い、今日は帰ってからやることがあるんだ」
「あ~、また応募する小説書いてるの?」
「ああ、当たり前だろ?」
俺は中学一年生からいわゆるオタクというものになった。
そのころから俺はプロのラノベ作家になることを夢に見ている。
そして今まさに、今度のラノベコンテストに応募するための作品のプロットを練っているところだ。
「そっかー、じゃあまた今度誘うね」
「ああ、すまないな」
「それにしてもよく小説なんて書けるよねー。私だったらあんなに文章思い浮かばないよ~」
「確かに書くのは大変だよ。でもな、書いているとすごく楽しくなってくるんだ!自分の考えたキャラ
が成長していく時とかは我が子が成長したかのように嬉しくなるし、何よりも自分の書いたものを読んで面白かったって言われた時なんかほんっっっっっっっっとうに最高の気分になるんだ‼」
「真って自分の好きなことになると熱くなるよね~」
「しかたないだろ。本気で好きなんだから」
そんないつも通りの会話をしていたら、駅についていた。
「それじゃあまた明日ね。書き終わったら小説、読ませてね」
「おう、最高の作品にしてやるから楽しみに待ってろよ」
「うんっ、楽しみにしてるね。それじゃあバイバイ、真」
「おう、気をつけてな」
そして綾音は駅の改札へと向かっていった。
(さて、俺も帰るか)
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
――――駅からは二十分ほどで俺は家についた。
「ただいまー」
⋯⋯⋯⋯返事はない、ただのボッチのようだ。
「って、そんなことしてる場合じゃないな」
そして俺は自分の部屋に閉じこもり、新作のプロットを練り始めた。
――――――(お⋯⋯ちゃん、お兄ちゃん⋯)
ああ、俺はまた妹が出てくる夢を見てるのか。
夢にまで出てくるとは、なんて最高なんだ!
「もう、お兄ちゃんっ、いい加減起きて!」
「はっ、はいぃぃぃぃぃぃぃい!」
――どうやら俺はプロットを練りながら寝てしまっていたようだ。
その間に妹が学校から帰ってきて、夜ご飯の時間になっていたようだ。
「いつも飯作らせて悪いな」
「べっ、別にお兄ちゃんのためにとかじゃないんだからねっ!私が作らないと夜ご飯食べれなくなっちゃうからだもん」
――――――――おっといけない、妹のあまりのかわいさに、お兄ちゃんちょっと昇天してしまうところだったよ。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「「ごちそうさまでした」」
「洗い物は俺がやっておくよ」
「うん、よろしくね」
両親が家にいないため、俺たちは家事を二人で分担している。
俺は食器洗いと掃除、妹は食事の用意と洗濯を担当している。
さすがに年ごろの女の子に男物の下着とかを洗濯させてもいいのかと聞いたところ、
「別々で洗うともったいないじゃん。だっ、だから、お兄ちゃんのもまとめて洗ってるのはあくまでついでだからねっ」
と言われた。
「――よし、食器も洗ったし、風呂にでも入るか」
そうして俺は風呂場へと向かった。
「よっしゃー、今日の疲れをいやしてもらいますかーー」
そして俺は風呂場のドアを開けた⋯
「っ!っっっっっっっっっっっっっっっっっっっ‼」
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
そこには服を脱いでいる最中の、妹がいた。
「おっ、おにぃ、ちゃん?」
「いっ、いやー、ま、まさかこんなことが現実でもあるんだーー」
「おっ、お兄ちゃんの⋯⋯⋯⋯」
「ひっ‼えっ、えっと、そ、その、ごめんなさ――」
「ばかああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」
新学年早々、テンプレばかりの一日であった。
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