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第十七話 「幼馴染が絶対に負けないタイプのラブコメ読んだ結果これですよ。責任取ってください」

 綾音メイン回もひとまず書ききれました。

 それではそんな幼馴染との物語をお楽しみください。

 後書きも読んでくれたらうれしいです。


 あっ、今回は妹もちゃんと登場してますよっ!

 「あ、お兄ちゃん、綾音さん、お帰りなさい」


 家につくと妹が出迎えてくれる。

 それがどれだけ素晴らしいことか、今から語ろうとすると五十万文字くらいになってしまいそうなのでここでは割愛させていただく。


 「ああ、ただいま。空宙乃(そぷらの)ちゃんは?」


 「ちょうどさっき用事があるからって帰ったとこだよ」

 

 「ただいま、心ちゃん」


 そう言って綾音は自室として使っている母さんの部屋へと逃げるかのように向かって行った。


 「ねえ、お兄ちゃん。綾音さん何かあったの?」


 綾音の行動がどこか不自然に見えたのか、心がそう尋ねてきた。


 「ああ、まあ、ちょっとな」


 「お兄ちゃん、また何か変なことしたんじゃないの?」


 「なっ、失礼な、俺は何もしてないわっ!――何もできてないんだ、俺は……」


 そう、俺は何もできていない。だから、今から綾音のために何かをしなくてはいけないんだ。


 「お兄ちゃん、どうしたの?」


 「いや、大丈夫。ちょっとお兄ちゃん今からあいつと話があるから行ってくるな」


 そう言った俺に何か言いたそうにした心だったが、何かを察したかのように優しい笑みを浮かべた。


 「そう、うん、わかった。詳しくは聞かないでおくね。――頑張れ、お兄ちゃん!」


 そう心は俺を励ましてくれた。

 なんでだろうか、心に少しでも励ましの言葉をもらうと俺はなんでもできるような気がしてくる。

 やっぱりそれは、俺がこいつのお兄ちゃんだからなんだろうな。


 「ああ、ありがとな。――ところで、よくよく考えたらさっき『また』変なことをしたとか言わなかったか?」


 「だって、大体悪いのってお兄ちゃんじゃん」


 そう答えた心の顔は先ほどの優しい顔とは違いどこかいたずらっ子のような不敵な笑みだった。

 そんな表情すらかわいいと思えてしまう俺はやはり重度のシスコンなんだろうと改めて実感する。


 「お前ってやつは……。はあ、まあいいや。このことは後でじっくりとお話ししましょう」


 「ごめんってばお兄ちゃん。そんなに怒らないで、ねっ」


 そう頼み込んでくる心の表情と言ったらまあなんということでしょう。

 ちょこんと両手を合わせて上目遣い。もうこれはあれですね、役満というやつですね。もうなんでうちの妹はこんなに可愛いんでしょうか女優にでもなるべきなんでしょうか。でもそんなことしたら世の男どもがきっといかがわしい目で心のことを見るだろうしそれにきっとすぐにヒロインを演じて今をきらめくイケメン俳優と感動のキスシーンとかさせられるんだろうな。

 ――――よし、決めた。


 「心を芸能界には入れさせないからな」


 「何の話してるのお兄ちゃん」


 オッといけないどうやら心の声が少し漏れてしまったようだ。

 これだからシスコンの兄貴ってやつは最高なんだよな。


 「いや、なんでもない、気にするな。――まあそんなわけだからちょっと母さんの部屋に行くからまた後でな」


 「そんなわけがどんなわけなのかよくわかんなかったけど、うん、また後でね、お兄ちゃん」


 そうして俺は綾音のいる母さんの部屋へと向かった。



※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 ――――トントン、と母さんの部屋のドアをノックして中にいる綾音に声をかけた。


 「綾音、俺だけど、ちょっと中に入っていいか?」


 そう言うとキィッと小さな音を立ててドアが開いた。


 「うん、いいよ。入って」


 そう答える綾音はいつものような元気は見えない。

 そんな姿を見ると、今まで何も気づいてあげられなかった自分を殴りたくなる。


 そうして俺は部屋の中に入り、ベッドを背もたれ代わりにして座った。

 綾音は俺の隣ではあるがベッドの上に座っている。


 「それで、どうしたの?」


 「いや、少し話がしたくてさ。――綾音、本当に大丈夫か?」


 「ああ、さっきのこと?本当に大丈夫だよ!ほら、こんなに元気なんだし!」


 そう言って笑顔を見せてくる綾音は、確かに元気そうにしていて、なんともなさそうにも見える。


 でも、それが演技だということはもうわかっている。

 だからこそ、俺は強い怒りを感じる。


 「どこがだよ……」


 「えっ?」


 もちろんそんなことに気づけなかった自分自身に対してもだが、何よりも、


 「どこが大丈夫なんだよ!」


 どこまでも強がっている幼馴染に対してだ。


 「大丈夫かと聞けば大丈夫と答える、そればっかじゃないか!」


 「ま、まこと、、、」


 「本当は大丈夫じゃないくせに!いまだって、あの時だって、本当は全然大丈夫じゃないだろ!めちゃめちゃビビってんだろ!怖かったんだろ!だから震えてたんだろ!」


 一度言葉を吐き出してしまってはもう抑えがつかない。これも小説家志望ゆえなのか。

 まあ、だとしたら今回はそんな自分をほめてやりたい。


 「まこと、落ち着いて、ねっ。私は本当に大丈夫だから」


 「だから、それだよ、それをやめろよ!なんで強がるんだよ!俺にくらい弱みを見せたっていいだろ!」


 大丈夫としか言わない、そんな強がりな綾音は本当はいない。そのことを俺は思い知らされたんだ。

 だからこそ、綾音には、弱さをさらけ出してほしい。そう思うのは何故だろうか。


 ――ああ、そうか、簡単なことだ。


 「俺たち幼馴染だろ!」


 こんなに簡単なことだったんだ。

 だからこそ俺は綾音と喋っていると素直になれるし綾音には素直に弱さを見せることができていた。


 それなのにこいつは俺に対して弱さを見せない。見せようとしない。

 そのことがあまりに悔しかったんだ。


 「お前の弱い所見せろよ!辛いことも悲しいことも全部話せよ!――全部、ぜんぶ、みせてくれよ……」


 気づいたら俺は涙を流していた。

 それだけ感情が高ぶってしまったのだろう。


 しかし、そんなことはどうでもいい。

 今は綾音のことが、一番大切なのだから。


 少しの間静寂が訪れたが、うつむいた状態で綾音がポツリポツリと話し始めた。


 「見せられないよ……」


 「――えっ?」


 「見せられないよ、まことには。――だって、心ちゃんがああなっちゃって、一番辛いのはまことじゃん。それなのに、そんなまことにこれ以上何か背負わせることなんてできるわけないよ!」


 この言葉を聞いて、俺は理解した。

 ――ああ、綾音は、俺のことをよく見てくれているんだ、と。


 俺が弱い部分を見せていたがゆえに、甘えることができなくなっていたんだなと。

 やっぱり俺が一番ダメな奴なんだなと、再び理解した。


 しかし、だからこそ俺は、綾音と本気でぶつかる。


 「そんなこと、気にしてるんじゃねえよ!」


 「そっ、そんなことって、私にとってどれだけまことのことが大事かわかってるの?わかって言ってるの!」


 「そんなものわかんねえよ!――それに、お前こそ、俺がお前のことどれだけ大事に思っているかわかってるのかよ!」


 「わかんないよそんなの!」


 「ああ、そうだろうな、わかんないだろうな!お互いにわからないことだらけなんだよ。でもな、これだけはわかる。綾音、もっとお前は俺に甘えていいんだよ、もっと頼っていいんだよ!」


 「そんなの、できないよ!」


 「出来る出来ないじゃねえよ、やるんだよ!俺がお前に甘えているんだから、お前も俺に甘えろよ!もっと幼馴染として信用しろよ!頼れよ!」


 お互いに息を切らしながら言いたいことを言い合っている。

 よく考えてみたら、こんな風に本音で言い合いをしたのはいつ以来だろうか。


 「そんなこと言われても、わかんないよ」


 「はっ?何がわかんないんだよ」


 「どうやったらいいかわかんないよ!」


 そう言って綾音は先ほどまでとは違い、俺の目を見て言葉を紡ぎだした。


 「私だって怖かったよ!しんどかったよ!知らない人から声をかけられて、無理やり腕をつかまれて!それに遠足の時だって、……本当に怖かったんだから!でも、どうやってまことに甘えたらいいかわかんないよっ!」


 そう言った綾音の目は本気だった。

 ――なんだ、ただの甘え下手なんじゃないか。


 そんなことも俺は知らなかったんだな。


 「今出来てるじゃないか」


 「えっ?」


 「今出来たみたいに、本気で言いたいことを言えよ。怖かったなら怖かったって言って思いっきり泣けよ。その姿、もっと見せてくれよ。――俺だってそんな姿いっぱい見せるからさ」


 そう言って俺は隣に座り、綾音を抱きしめた。


 なぜだろうか、こうしなくてはいけない気がしたからだ。


 少しの間動きもしなかった綾音が、ゆっくりと、俺の背中に腕を回してくる。


 「……怖かった、怖かったよ。痛かったよぉ!いやだったの、あんな人たちに触られて、無理やりつかまれて、でもどうしようもできなくて、でもまことには甘えられないと思って、苦しかったよ。辛かったよ!うわああぁぁあ!」


 そうして綾音は俺の腕の中で思いっきり泣きだした。


 こんな華奢な体で、これまでたくさん強がってきたんだ。

 今は思う存分、弱さを吐き出すべきなんだ。

 そんな綾音のすべてを、受け止めようと思う。


 だって俺は、こいつの幼馴染なんだから。



※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 ――――ひとしきり泣いた後、落ち着いた綾音が背中に回していた腕を外すのを合図に離れた。


 そして冷静になるにつれて、自分がしたことの大胆さに埋まりたくなってしまう。


 やばいやばいやばいやばい、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。

 さっき俺なんて言った?弱さを見せろ?誰が言ってんだよそんなイケメンなセリフ。俺か。――いや待てやっぱ無理恥ずかしい死にたい消えたい。挙句の果てに抱きしめてるし何してんだよ俺は!


 よし、落ち着け、まずは深呼吸をするんだそうだそれしかない。


 そうして俺が深呼吸をしようと息を吸った瞬間、綾音が声をかけてきた。


 「ねえ、真」


 「はっ、きゃはいっ!」


 ハイ完全に超え裏返りましたね消えたいです。


 「これからは、甘えていいんだよね」


 「できれば今は触れてほしくないけどまあ、そうだな。そういうことになるな」


 そう言ったらまた綾音は少しうつむいて、黙り込んだ。


 しかしすぐにこちらを向いて、俺の手を握った。


 「わたし、めんどくさいよ?ものすごく甘えるし、甘え下手だから変な風になるかもしれないよ?」


 「なんだ、そんなこと気にしてたのか」


 「なんだとは何よっ!」


 そう言い返してきた綾音はいつもの綾音だった。

 いや、いつもよりもどこか素直にすら感じる。


 「ははっ、そんだけ元気があれば大丈夫だな。それに、素直にこうしたいって言ってくれればいいし、そうしてくれいいんだよ。綾音のやりたいようにやってくれ」


 そう言って俺は綾音の頭を撫でた。

 また後でこの行為について悶えるんだろうなとも思いながら、それでもこの甘え下手な幼馴染に少しでも素直になってほしい、そんな思いを込めている。


 「うん、わかった。頑張ってみるね」


 「おうっ」


 「ありがとう、真。これからもよろしくね」


 そう言った綾音の笑顔を忘れることはないだろう。

 そう思えるくらい、素敵な笑顔だった。


 「ああ、こっちこそ」


 そう言ってお互いなんとなく気恥ずかしくなって顔をそむけた。


 するとトントンッとドアがノックされた。


 「お兄ちゃん、綾音さん、夜ご飯できたからそろそろ食べようよ」


 どうやら心が俺たちが言い合いをしている間にご飯の準備を一人でしてくれたらしい。


 「心ちゃん、いい子だね」


 「ああ、自慢の妹だ」


 「もう、威張っちゃって。――それじゃあ行こっか」


 そうして俺たちは心の待つリビングへと行き、夜ご飯を食べた。


 言い合いをした後の一日置いたカレーってなんであんなに美味しいのでしょう。



※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 「それじゃあお兄ちゃん、私先に寝るね」


 「ああ、おやすみ、心」


 一足先にお風呂に入った心は自分の部屋へと戻っていった。


 俺も今日は一段と疲れたため、さっさと風呂に入って寝ようと思い、風呂場に向かった。


 「よっしゃあ、今日も一日お疲れ様……あ?」


 「えっ……」


 ドアを開けたその先には、まさに今下着を脱ごうとしていた綾音の姿が。


 「い、いやあ、そ、そうだ!俺小説の続き書かないとなあ……」


 そう言って俺はその場を後にしようとしたが、すでに手遅れだったらしい。


 「まぁこぉとぉ……」


 「お、落ち着いて、ね、ほ、ほら、お互いにすべてを見せ合おうってなったじゃないか」


 「バぁぁぁカぁぁぁあああああ!」


 「ご、ごめんなさあああああい!」


 なんかこんな落ち久しぶりな気がするぜ、チクショーーーー!

 というわけでいかがだったでしょうか?

 何とか無事綾音回を書ききれてほっとしています。

 いやあ、それにしても文章を書くのって難しいですね。イメージ通りの言葉ってなかなか見つからないから大変です。

 まあだからこそ、書いてるのって楽しいんですけどね。

 ちなみに次回から心ちゃん中心の話にしていく予定なのでお楽しみに!


 あと僕YouTubeやってるのでそちらの登録もしていただけると幸いです。

 同人活動がそろそろ本格的に始まるのでその様子も動画にしていくつもりなのでぜひ見てくださいね。もちろんバラエティも楽しめるものを作っていますのでそちらもチェックを忘れずに!


 それではこれからも「俺がシスコンで私がブラコンのどこが悪い」をよろしくお願いします!

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