第十六話 「結果こうなってしまうのは作者が悪いのかそうなのか」
更新遅くてすみません。
綾音とのデートの続きです。
少し長くなってしまいましたがお楽しみください!
あとがきも読んでもらえると幸いです。
「というわけでやってきたぜユ〇クロ!」
お昼を食べた後どこの服屋さんに行くかとなった結果、安心安定のユニ〇ロへとやってきた。
「それじゃあさっそく、私の服を選んでもらおうかな」
「そんないきなりですかっ!」
最初にファッションについて教えてもらってから満を持して綾音の服を選ぼうと思っていたというのに、まさかいきなり最終局面を迎えることになろうとは。
――俺はこのまま生きて帰れるのだろうか。
「すまない、心。お兄ちゃんはもう帰ることはできなさそうだ。もう一度会いたかったよ……」
「何バカなこと言ってるの。現実を見なさい」
「はい、すみません」
綾音の辛辣な一言で現実に戻された俺はそれでもなお向き合いたくない現実から逃れようと必死に考え続けた。きっとどこかに一縷の希望がある、そう信じて。
――しかし、現実はそんな淡い期待をも打ち砕くのである。
「それじゃあ私はまことの服を選んでくるからあっちに行くね。お互いに選び終わったら連絡するってことでよろしく」
そう言って綾音は男物のコーナーへと消えていった。
「マジっすか……」
しばらくの間動けずにいたが、何とかするしかないと腹をくくった俺は女物のコーナーへと向かった。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「さて、見に来たはいいが、どんな服がいいのかさっぱりわからん」
さすがに新しくできたからなのか服の種類がとても多く、ファッションの知識がない俺にとってはどれも同じようなものに見えてしまう。
それに何より、女性向けのコーナーに男一人で来ているためかとても視線を感じる気がする。
「はあ、さっさと選んで早く抜け出すしかないよな」
そう決意した俺は必死に綾音に似合いそうな服がないかと目を凝らした。
――すると、一つの商品が目に入った。
「これ、あいつに似合いそうだ」
そう思った俺はその商品を手に取り綾音に連絡を入れるとすぐに返信が来た。
綾音もちょうど選び終わったから最初にいたところに集合しようとなったので、俺は少し早歩きで向かって行った。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「おーい、まことー」
集合場所に行くとすでに綾音が到着していた。
「すまん、待たせたな」
「ううん、私も今来たところだよ。――さあ、それじゃあさっそく見せてもらおうかな。まことは私にどんな服を選んできたのか」
そう言われた俺は隠すように持っていたそれを綾音に渡した。
「こ、こんなかんじでいかがでしょうか……」
そう言って渡したのは少し青みのある白色のワンピースだ。
「色々見たけどどんなのがいいかよくわからなくて、そんな時にこれが目に入ってさ。――これを着た綾音を想像してみたら、すごく綺麗だなあと、思いまして……」
「な、なるほど……」
そう言って綾音は少しうつむいてしまった。
「ど、どうした?や、やっぱり、変だったか?」
そう心配して俺は綾音の顔を覗き込もうとした。
すると綾音は顔を上げてこう言った。
「ううん、すごくいいよ!まさかまことがまともなものを選んでくるとは思わなかったからびっくりしただけだから気にしないで良し!」
「いやそれはそれで気にするわっ!」
さすが綾音、人が心配したというのに的確に心をえぐってくるような一言を返してきやがる。
しかしまあ、喜んでもらえたのならよかったと思っておこう。
「いやー、緊張した。人に服を選ぶのなんて初めてだからな。めちゃくちゃ疲れたよ」
「ふふっ、お疲れ様。――それじゃあ今度は私の番だね」
綾音はそう言っているが、どこをどう見ても綾音は服を持っていない。
「まさかと思うが、選んでないということは……」
「そんなことないよっ!せっかくだからファッション初心者へおすすめの選び方も一緒に教えようと思ったから持ってきてないだけだよ」
「ああ、なるほどなるほど。――それじゃあ色々教えてくださいお願いします」
そう言って俺は頭を下げた。
そのパフォーマンスを見て気分が良くなったのか、綾音はとてもいい笑顔をしている。
「まかせなさい、さあ、こっちについてきて」
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
綾音に連れられて男物コーナーへとやってきた。
こちらも女物コーナーと同様様々な種類の服やズボンがあり、俺は目が回るような感覚に襲われる。
すると、とあるマネキンの前で綾音は立ち止った。
「さて、今日教えることはとても簡単なことだけです」
「な、なるほど」
「これさえ覚えていれば、服を買う時に困らなくて済むという必殺技です」
「なんですとっ!」
まさかそんな必殺技が存在したとは。そしてなぜそのようなことを学校は教えてくれないのか。学校は社会で生きていくうえで必要なことを学ぶ場所だといわれているが、このように日常生活に必要な知識ももっと教えるべきである。
そんなことを考えてしまうのも仕方がないと笑って許してください学校関係者の皆様。教職者に幸あれ。
「また何かくだらないこと考えてるでしょ」
そう綾音に言われて俺は自分が思考の世界に飛んでいたことに気づいた。
仕方ないじゃない、作家志望なんだもんっ!――とでも言おうものなら綾音からの制裁が来るに違いないのでここは素直に謝らなくてはならない。
「すみませんでした」
「もうっ、まことのために教えてるんだからちゃんと聞いててよね」
「ごもっともでございます。感謝しています、綾音様」
「なんかバカにされた気分……、まあいいや。それでね、その必殺技は――」
ついに来る。俺が今日もっとも求めている一言が。
さあ、いったいどんな方法だというのか!
「マネキン買いです!」
「――――マネキン?」
マネキン買いとはどういうことだ?あれか、マネキンを買うということか?いや待て待て、マネキンを買ってもそれはマネキンであって服ではない。むしろマネキンにも服を着させなくてはならないので余分に服を買う必要があるのではないか?何故だ、なぜそのようなことをするのだ?
「はっ、まさか、これが今の流行というやつなのか……」
「絶対違う意味だと思ってるでしょ。――マネキン買いっていうのは、こうやってマネキンが来ている服をそのままの組み合わせで買うことを言うの」
そう言って綾音は目の前のマネキンを指さした。
「ああ、なるほど、それでマネキン買いか」
「そー言うこと。これさえ覚えておけば自分でいろいろ組み合わせる必要もないし手間もかからない。それにお店の人が選んだ組み合わせだから見た目もいいし組み合わせの勉強にもなるからファッションについても学べる。すごくお得な方法なんだ」
「おおっ!それは確かに俺にはもってこいの方法だな!それじゃあさっそく選ぶとするか」
そう言ってマネキンを探そうとした俺に綾音は静止の声をかけてきた。
「ちょっとまって、今日は私が選ぶって言ったでしょ」
「そういえばそうだったな。――それで、綾音はどんなのを選んでくれたんだ?」
そう尋ねると綾音は先ほど指さしたマネキンの隣にあるマネキンを指さした。
「これなんかどう?まことってあんまり派手すぎるの好きじゃないし、このくらいシンプルなのがいいかなって思ったんだけど」
そのマネキンが着ていた服は、白色のパーカーに黒色のジーンズというとてもシンプルな組み合わせだった。
「おお、いいじゃん!このくらいシンプルなのだと着やすそうだな」
「最初だしどこをこだわったらいいかわかんないだろうからこのくらいシンプルなのもありかなって。それによくパーカー着てるから着慣れてるものの方がいいでしょ」
「最高だよ!ありがとう綾音!――でも、これだといつものとあんまり変わらなくないか?」
確かに俺好みでいいと思ったが、今日ははおしゃれについて勉強をしに来たのだ。このままだと普段の俺と何にも変わらないもののように思えるが、俺が気づいていないだけで大きな違いがあるのだろうか?
「そうだね、普段とほとんど同じだよ」
違いなどなかったらしい。
「え、でもそれでいいのか?」
「いいのいいの、まことの一番の問題は同じものしか着ないことだから。――まことって同じ服を何回も着るでしょ。だからまずは着る服のレパートリーだけでも増やせばいいの」
「はあ、なるほど」
「それに服が似ているだけで色は違うからそれだけでも印象は少し変わったりするの。そうやって少しずつ変わっていけばいいから今はこれで大丈夫。また今度は違うことも教えてあげるから楽しみにしてて」
「そうか、そうだな。ありがとな綾音!」
「私も選んでもらったんだからお互い様だよ。でもまあ、どういたしまして」
こうして俺たちはそれぞれが選んだ服を持ってレジへと並んだ。
――――ちなみにお会計はしっかりと僕が払いました。そこはほら、男の甲斐性ってやつですよ。うん。
え?財布?もちろんすっからかんですともそうですとも。ユ〇クロ万歳!
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
無事服も買い終えたためそろそろ帰ろうとなり、その前にとトイレへ行って戻ってきた時、綾音は男性三人組に囲まれていた。
――よく見るとその三人は、フードコートで綾音のことを気にしていた大学生くらいの人たちだった。
「私、人を待っているので」
「いいじゃんか、俺たちと一緒に遊ぼうよ」
「そうだよ、かわいい子がいるなあってずっと気にしてたんだから」
「それに連れってあの頼りなさそうな奴だろ?絶対俺たちと遊んだほうが楽しいよ!」
そんなナンパのテンプレのようなセリフをずっと綾音に対して男たちは言っていた。
何とかしなくちゃとは思うが、綾音なら自分でもなんとかできるくらい強いだろうと、そうも思っていた。
――――しかし、それは間違いだと気づかされた。
「ほらほら、こっち行こうよ」
そう言って一人の男が綾音の腕を強引につかんだ。
「やっ、やめてください!」
「あれえ、震えてるの?かわいいなあ。大丈夫だよ、楽しいことをするだけだからさ」
そう、震えていたのだ。あの綾音が。
遠足の事件の後、あれだけ強く見えていたのは、綾音が心配をかけないために強がっていただけだということを、なぜ俺は気づいてあげられなかったのだろうか。
ナンパされて怖くないわけがない。ナンパに慣れているからと言って全く知らない男に声をかけられたり無理やり腕をつかまれて怯えないわけがない。せれに、あの遠足の時だって、何とか助け出した瞬間は、強がっていたじゃないか。その時は気づけていたのに、なんでその後は気づいてあげられなかったんだ。
――違う、そうじゃないな。俺は綾音に甘えていたんだな。
心があんなことになって気が動転していた俺にこれ以上心配はかけられないって、きっと綾音はそう思っていたのだろう。
綾音だって、ただの女の子なのに。
そう思った俺は走り出し、綾音と男たちの間に入り、綾音をつかんでる手を離させた。
「やめろ、この子は俺のだ。邪魔するな」
そう言って俺は相手の男たちを睨んだ。
「あ、なんだこいつ。口だけは達者だな」
「きゃー、正義の味方気取りでかっこいいねえ」
「そこどいてくれると嬉しいなあ。そしたら痛い目に合わなくて済むよ」
そう男たちは脅してくる。
しかし、全く恐怖を感じない。それもそうだろう、以前の奴らほどの本気がこいつらからは感じられない。
きっとこれまでも適当にナンパをして適当に生きてきたのだろう。
そんな奴相手に、屈することはない。
「お前らこそ早く消えろ」
そう言った俺の目を見て男たちは少しひるんでいた。
「なんだこいつ、妙な雰囲気放ちやがって」
すると、少し遠くから警備員が走ってきた。
おそらく俺たちのことを見ていた誰かが呼んできてくれたのだろう。
警備員がつく前に男たちは慌てて逃げていった。
「君たち、大丈夫かい?」
そう優しく警備員のおじさんが声をかけてくれた。
「僕は大丈夫です。――綾音、大丈夫か?」
そうやって俺の背中に隠していた綾音に問いかけた。
綾音は少し震えていたが一息つき答えた。
「私も大丈夫です。ご心配おかけしました」
「そうかい、それならよかったよ。何かあったら声をかけてね」
そう言って警備員のおじさんは元居た方へと戻っていった。
「綾音、ごめんな。遅くなって」
「ううん、大丈夫だよ。ありがとうまこと。それじゃあ帰ろうか」
そう言って綾音は歩き出した。
俺もそんな綾音について歩きだし、帰路へとついた。
家に帰ったら綾音とは色々話さなくてはと、決心しながら。
いかがでしたか?
今回は終わり方がいつもの感じと違いますが、次の話がこの綾音デート編の最終話となりますので少し中途半端ともとれる終わり方にしました。
文字数をもっと増やして一羽にまとめることも考えましたが、まあそれはまだしない方がいいなと後々の展望についても考えた結果こうなりました。決して和数を増やそうとしているわけではありません。
今大事なのは、手軽に読んでいただくことだと思っているのでどれだけ長くても六千文字以内に収めようとしていることが理由です。
そのうちおそらく一話当たりの長さが六千文字から八千文字になり、そして気づいたら一万文字オーバーになっているという風にしていこうかと思っています。
そのことについてなども含めて、感想や要望をいただけると幸いです。
それではこれからも「俺がシスコンで私がブラコンのどこが悪い」をよろしくお願いします。
――――あっ、もうそのうち妹が中心の話も出すからお楽しみに!