第十三話 「帰ってきたぞ!」
かなり期間が空いてしまいました。その間にPV12000、ユニーク3700を超えていました。
本当にありがとうございます。
時間の都合上、投稿するのに期間が空いてしまうことがありますが、どうにか頑張っていますのでこれからも「俺がシスコンで私がブラコンのどこが悪い」をよろしくお願いします。
それでは、本編へどうぞ!
――――家に、帰ってきた。
綾音は泊まるための荷物を取りに一度帰ったので、先にドアを開けて玄関に入ると、その感情がより強くなった。
そしてその次には、安堵が浮かんできた。
(家に、帰ってきたんだ……)
2、3日しか空けていないはずなのに、かなり久しぶりに帰って気がする。
(…………まあ、あんなことがあったんだからな。)
そう思って俺は、心のほうを見た。
心も家に着いたことで少し安心したのだろうか、震えが収まっている。
やはり家は落ち着くのだろう、そう思っていると、心が話しかけてきた。
「お、お兄ちゃん……」
「どうした?」
「中、入らないの?」
そう言われてはっと思いだした。
そう言えばまだ玄関から動いていなかったな。
「わ、悪い、ちょっとぼんやりしてたよ。さ、入ろうか」
「うん、そうだね」
そうして俺達は家に入った。
「お兄ちゃん、私荷物の整理とか着替えしたりするから一回自分の部屋に行くね」
「ああ、わかった。俺もそうするよ」
そう言って俺達はそれぞれの部屋へと向かった。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
荷物を整理し着替えも済まして一階に降りてくると、ちょうどインターホンが鳴った。
確認すると、綾音が荷物を持って立っていたので、鍵を開けた。
「お、お邪魔します!」
なぜか綾音は大きな声でそう言った。
「お、おいおい、急に大きな声出してどーした?」
「えっ、あ、ごめん。なんか緊張しちゃって……」
「なんで緊張するんだよ。よく来てただろ」
「それはそうだけどさぁ、でも、ほら、久々に来たし」
「今日から泊まるんだから、自分の家みたいに寛いでくれよ。まあ、とりあえず中に入ってくれ」
そう言って俺は綾音を一先ずリビングへ案内した。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
リビングに行くと、いつの間にか心が下りてきていた。
「あ、綾音さん」
「心ちゃん、今日からお世話になります」
そう言って綾音はぺこりと頭を下げた。
「そ、そんな!お世話になるのは私たちの方で」
「そうだぞ綾音、そんなにかしこまらなくてもいいんだぞ」
「う、うん、それじゃあそうさせてもらうね」
そう言っているが、まだ緊張が解けないのだろうか。
小さいころはよくここで遊んでいたのに、いったい何に緊張してるのだろうか。
そう思っていたら、心が話しかけてきた。
「お兄ちゃん、綾音さんの部屋ってどうしようか?」
「うん?……あー、そうだな。母さんの部屋にしてもらおう。あそこなら今は誰も使ってないし。それじゃあ俺は綾音を案内してくる」
そう言って俺は綾音を母さんの部屋へ案内した。
すると、綾音が少し小さめの声で話しかけてきた。
「ねえ、真」
「ん?どうした?」
「心ちゃん、普通にしゃべってるじゃん。これならすぐに治るんじゃない?」
「ああ、そうだと良いな」
そう言いながらも俺は気づいていた。
――――心はまだ、俺と話す時に震えていることに。
しかしそれは、病院にいた時に比べるとかなり震えていなくなっている。というよりも、震えていないようにも見える。
でも、俺には分かる、分かってしまう。
心は俺に心配をかけないようにするために、震えを必死にこらえているのだ。
普通の人には分からないだろう。でも、俺には分かってしまう。
何故か、それは、
(俺があいつの、心のお兄ちゃんだから分かるんだろうな……)
そう思うと、胸が締め付けられたように感じた。
今一番苦しんでいるのは心のはずだ。
それなのにあいつは、心は、俺のことを考えてくれている。
男が怖いはずなのに、それでも俺のことをお兄ちゃんと呼んでくれている。
そんな心を、俺はとても愛しく感じた。
(そうだ、俺はあいつのお兄ちゃんなんだ。妹がつらい思いをしているなら、俺が、助けるんだ!」
そのことを再確認していると、隣から声が聞こえてきた。
「まこと、ねえ、まこと!聞いてるの!」
「えっ、あっ、ああ、わりぃ、聞いてなかったわ」
「もう、何ボーっとしてるのよ。荷物も置いてきたから、リビングに戻ろうよ」
「ああ、そうだな」
そうして俺達はくだらない、いつも通りな会話をしながら、心のいるリビングへと向かった。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「あ、お兄ちゃん、綾音さん、お帰り」
「ああ、ただいま」
久しぶりに心のお帰りが聞けてテンションが上がり、踊りだしそうになるのを必死にこらえながら俺は答えた。
すると、
「ねえお兄ちゃん、今日の夜ご飯どーする?」
そう言われて時計を見て見ると、もう17時30分を過ぎていた。
いったいいつの間にこんなに時間が過ぎていたんだ?
「ああ、そうだな……、綾音、何か食べたいものあるか?」
「え、わ、私は何でもいいよ。泊めてもらうんだし」
そう綾音は答えた。
しかし、俺はこの答えに納得がいかなかった。
「だーかーらー、そういうのはなしだって言っただろ」
「えっ?」
「そーいう他人行儀みたいなの。世話になるのは俺達も一緒なんだからよ、もっと家族に接するみたいにしてくれよ」
「か、家族……、私と、真が、家族」
そう言って綾音は顔を赤くさせてもじもじし始めた。
いったい何故なのだ?
「わ、わかった。それなら、いつも二人が食べているようなのがいい」
「いつも俺達が食べてるもの?」
「そう。曖昧だけど、それがいい。心ちゃんも真も、そのほうが落ち着くでしょ?」
「まあ、それもそうか。なら心、カレーでも作るか。たぶん材料ならあるだろ」
「うん、分かった。それじゃあ作るからお兄ちゃんと綾音さんは待っててね」
「いや、俺も手伝うよ」
そう言ってキッチンに向かおうとしたが、綾音に止められた。
「て、手伝いなら私がする。ただ待ってるだけなのもあれだし」
「え、いや別にいいんだぞ?」
「いいの、私がやりたいんだから」
そう言われたら何とも言い返せない。
それに、確かに男の俺よりも、同じ女性の綾音と一緒のほうが心も楽だろう。
そう思った俺は綾音に料理の手伝いをお願いすることにした。
「それじゃあ悪いが、頼んだぞ」
「うん、任せて!」
「何か手伝うことがあったら言ってくれよ」
「うん!」
そう言って綾音は心のいるキッチンに向かった。
綾音がいるだけで、何故だかとても安心していられる。
(本当、あいつには助けられてばかりだな)
心が立ち直ったら、綾音に何かお礼をしようと思い、料理の完成を待った。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
18時15分
お待ちかねのカレーが完成した。
三人でそれぞれのを運んで座った。
ちなみに俺と綾音が隣同士に座り、綾音の向かい側に心が座っている。
「「「いただきます」」」
普段より一人多い声が響き、俺達は夕食を食べ始めた。
――――しばらく雑談をしながら食べていると、心が改まって俺に話しかけてきた。
「お兄ちゃん」
「どうした、心?」
「わたし、私ね、絶対、男の人が怖いの、克服するから!だから、……それまで迷惑かけちゃうかもだけど、待っててね」
そう言われて俺は、すこし涙ぐんできた。
いや、俺だけじゃない。隣を見たら綾音も涙を流していた。
(心、お前は、本当にすごい奴だよ)
正直、このままずっと治らなくてもおかしくはないと思っていた。
それはきっと綾音も一緒のことを思っていただろう。
だからこそ、今の心の発言に、俺達は心打たれたんだ。
こんなに心は頑張っているんだ。それを応援して、全力で支えるのが俺達に役目なんだ。そのためならなんだってやる。どんなことだろうと、やらなくちゃいけないんだ!
「ああ、そうだな、一緒に、頑張ろうな」
「私も、私も手伝うからね、心ちゃん!」
「お兄ちゃん、綾音さん、ありがとう……」
そう言って心も泣き出してしまった。
少しして落ち着いてから、残りのカレーを食べ終えた。
「「「ごちそうさまでした」」」
味はもちろん、最高だったぜ!
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
あれから三人で片づけをして、リビングでくつろいでいた。
時計を見ると22時を回っていたので、風呂に入ることにした。
「風呂、先はいるか?」
「私は後でいいよ」
「私も後でいい、真が先に入ってきなよ」
そう言われたので俺が最初に風呂に入ることになった。
――――風呂に入りシャワーを浴びながら、俺はもう一度自分のするべきことを考えていた。
(今心は頑張ろうとしている。そして綾音もサポートしてくれている。なら俺は、俺は心のお兄ちゃんとして、きっと何かできるはずだ。そのできることを全力でやるだけだ!)
「うおおおおおおおおおおおおっ!俺はやるぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「「うるさいっ!」」
「……はい、すみません」
まさか今日もこの落ちだとは思ってなかったぜ……