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第十話 「長い一日だったな」

 心が倒れた後、俺はすぐに救急と警察に連絡を入れた。

 先に警察が到着し、そのすぐ後に救急車がやってきた。

 俺は事情聴取のために警察署に来てくれと言われたのだが、心のことが心配で救急についていこうとした。

 

 すると、何とかショックから立ち直った綾音が俺に話しかけてきた。


 「心ちゃんのことは私に任せて、真は警察に行ってきて」


 「いや、でも、お前だって……」


 「私なら、大丈夫だから。――――――だから、真は今日のこと、ちゃんと警察に話してきて。」


 「綾音……」


 大丈夫なはずがない。

 その証拠として、今も綾音は震えている。

 当然だ、ついさっきまであんな辱めを受けていたんだ。

 きっと今も、恐怖を感じているのだろう。


 「お願い、真」


 「――――っ、分かった。でも何かあったらすぐに連絡しろよ、すぐに駆けつけるから」


 「うん、分かってるよ」


 「それじゃあ心のことを頼む。――――――それから」


 「それから?」


 「無理だけは、するなよ」


 「――――っ、やっぱり、真はやさしいね。でも、大丈夫、今は大丈夫だから。――――だから、なるべく早く来てくれると、うれしい……」


 「……ああ、分かった。俺もなるべく早くそっちに行くから。それまで待っていてくれ」


 「うん、待ってるね」


 そう言って心と綾音は救急車で近くの病院に搬送された。

 俺は哲也たち三人が連行されるのを見届けてから、パトカーで警察所へと向かった。




※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 ――――――――事情聴取が終わり、俺はパトカーで心達が搬送された病院へときた。

 ここに来るまでに学校の先生へ今日あったことを話したところ、後日詳しい話を聞かせろとのことだった。


 病院に着いた俺は、心と綾音のいる病室へと案内された。

 扉をノックすると、中から綾音の声が聞こえてきた。


 「はい、どうぞ」


 そう言われたので俺は扉を開け、病室へ入った。


 「――――綾音、遅くなって悪かった」


 「真、遅いよ、もう。何かあったのかなって心配しちゃったよ。待ってたんだよ。真」


 「綾音……」


 「まことっ、――――――っ、うわあああああああああああああああああっ!」


 そう言って綾音は俺に抱き着き、泣き出した。

 今までの恐怖がすべて流れ出るかのように、病室全体に響く声で泣いていた。


 「本当に、すまない。俺のせいでこんなことに……」


 「っ、ううん、真は何も悪くないよ。だって、真は、心ちゃんと私を、助けてくれたじゃん」


 「すまない、本当に、すまない」


 「私はもう大丈夫だよ。――――それより、心ちゃんが……」


 「そっ、そう言えば心は?」


 そう言って俺は病室を見渡した。

 すると、二つ置いてあるベッドのうち、奥においてあるベッドで心は眠っていた。


 「心……」


 「まだ一度も目を覚まさないの、心ちゃん……」


 俺は心がいることに安堵しつつ、目を覚まさないことに不安を感じていた。

 すると、病室を誰かがノックした。


 「はい、どうぞ」


 すると、白衣をまとった女の人が入ってきた。


 「失礼します、今回お二人を担当しました、三ツ矢と申します。心さんのお兄様の上屋真さんでよろしかったでしょうか?」


 「はっ、はい。そうですけど」


 「お二人のことでお話したいことがあります。それにあなた自身の診察もしたいのでついてきてもらえますか?」


 「はい、分かりました。――――それじゃあ綾音、ちょっと行ってくるよ」


 そう言って俺は病室を後にした。



※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 一通り診察が終わった俺は、心と綾音についての話を聞いていた。

 ちなみに俺は運よく軽い打撲ですんだ。


 「それで先生、心と綾音は大丈夫なんですか?」


 「そうですね、とりあえずは二人とも最悪の事態は避けられていました。まず綾音さんですが、彼女はおそらく大丈夫でしょう。彼女は本当に強い人です。――――問題は心さんです」


 「心に何か問題が?」


 「目を覚まさないので何とも言えませんが、心に大きな傷が残るかもしれません。それが影響して精神に異常がみられる可能性も十分にあります」


 「……えっ」


 「あくまで可能性の話です。しかし、そう言ったこともあり得るということだけは覚悟していてください」


 「はい……」


 「あと、心さんと綾音さんには今日一日入院してもらうことになります。真さんはお二人の病室の隣の部屋にある簡易ベッドを使っていただいてもかまいません。もし何かあったらすぐに呼んでください」


 「分かりました。ありがとうございます」


 そう言って俺は診察室から出て、二人のいる病室へ戻った。



※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 病室へ戻っもまだ心は目を覚ましていなかった。


 「心……」


 そう言って落ち込んでいる俺に、綾音が話しかけてきた。


 「心ちゃんならきっと目を覚ますよ。だから真も今日はもう休んで」


 そう言われたので俺は時計を見て見たら、すでに針は11時を回っていた。


 「そうか、もうこんな時間なのか。――――でも、心はまだ」


 「心ちゃんが起きたら、ちゃんと呼びに行くから。だから今日はもう寝よ。真だってきっと疲れてるはずだよ」


 「でも……」


 「きっと心ちゃんも、そんな顔の真よりも、元気な顔の真のほうが見たいと思うよ。だから、心ちゃんのためにも今日はもう休もうよ。お兄ちゃんなんでしょ?元気な顔、見せてあげてよ」


 そう言われた俺は一度病室にあった鏡で自分の顔を見た。


 ――――確かにひどく疲れた顔をしている。


 俺は綾音の言葉に従い、今日はもう寝ることにした。


 「ああ、分かった。今日はもう寝るよ。――――てかお前、最近俺のことお兄ちゃんだからとかって言ってうまく丸め込んでないか?」


 「えーー、そんなことないよ、――――お兄ちゃん?」


 「ほら、そーやってさ……」


 「あははっ!やっぱり真はそのくらい元気なほうがいいよ」


 そう言われて俺は確かにさっきよりも気分が楽になっていることに気づいた。


 「なんかお前には迷惑かけてばかりだな。――――ありがとうな、綾音。それじゃあお休み」


 「ううん、こっちこそだよ。お休み、真」


 そう言って俺は二人の病室を後にした。



※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 今日泊めてもらう部屋に入ってすぐ、俺は簡易のベッドへ入った。


 「だめだ、もう一歩も動けねえ」


 そしてすぐに睡魔が襲ってきた。

 俺は抗うことなく、素直に目を閉じた。


 (明日は目が覚めてるといいな、心……)


 そして俺は意識を手放した。




 ――――――こうして俺達のとても長かった一日が幕を閉じた。

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