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転生したら魔法の才能があったのでそれを仕事にして女の子と異世界で美味しい物を食べることにした  作者: 鉄毛布
四章

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イリアとの再会

 俺たちはリズミナの回復を待ってイリシュアールへと出発した。

 幸いリズミナのけがは見た目の痛々しさとは裏腹にたいしたことはなく、倒れた主な原因は疲労だった。

 自宅を出ても反政府勢力の人間は接触してこなかった。

 俺たちが監視されているとしたら、ラグゼーといっしょにいるのを見て状況を察したのかもしれない。

 もしイリシュアールで蜂起するつもりなら、イリアの軍に俺たちが加わることを邪魔する必要はないということだ。

 そう、俺はイリアと会ったら反乱軍に加わることを進言するつもりだ。

 さすがに今のイリシュアールは腐りきっている。

 このまま現王キリリュエードの政権が続いても、国民は生殺しのような苦しみを味わわされ続けるだけだ。

 以前イリアからもらいうけた馬は馬屋に預けてある。俺たちは馬を回収して俺とアンナ、リズミナとエリがそれぞれ乗った。ラグゼーは自前の駿馬(しゅんめ)に乗ってきたようだ。

 イリシュアール領に入り、以前に商売で訪れたアールドグレインの町に着く。ここにイリアは陣を構えているらしい。

 鉱山で栄えたアールドグレインの町はかなり広いが、それでも兵士たちを全員入れるわけにはいかない。町の外の荒原には数多くのテントが張られていた。

 しかしテントの数を見てもおそらく二千人程度だろうと思われる。

 とても国の正規軍とは思えない少なさだった。

 俺はラグゼーの案内で町の、それなりに立派な宿の一室へと通された。イリアは現在ここを拠点にしているらしい。

 俺が部屋へ入るなりイリアは書き物をしていた机から立ち上がって破顔した。

 炎のような赤髪のポニーテール。凛々しくて可憐な姫将軍。

 武骨な銀装の胸当ての下は優美な紺の服。金属の装甲版をいくつもあしらったスカートも同じ色だ。


「クリスっ……! 会いたかった!!」


 眉を八の字に曲げて、笑顔だがまるで泣き出しそうに見える顔のイリア。

 両手で力強い握手を求められる。


「ああ。俺もまた会えてうれしいよ」


 レメナイリア・フレイムズブラッド。彼女はイリシュアール第五軍将軍にしてイリシュアールの炎神の異名を継ぐ剣豪だ。

 以前レクレアの村で共に魔物と戦い、カイルハザの手勢二千人に包囲される窮地を助けたことがある。

 そのイリアは突然、握手の手を離すと俺へと抱きついてきた。


「会いたかった! 会いたかった!! ああっ……!」

「ちょっ、おい……」


 幸い今部屋には他の兵士はラグゼーしかいないけど……。

 でもアンナもエリも見てるんですけど!?

 ぎゅっと抱きつくイリアの髪がふわりと鼻先をかすめて、くらくらするようないい匂いがした。


「ああっ、私ったらなんてことを……す、すまない! うれしさの余り、つい」


 自分から抱きついておいて、大慌てで体を離すイリア。

 うれしいのはいいんだけど、そこまで周りが見えなくなっていたのか。


「レメナイリア様はレクレア村での一件のあとから今日までずっと、クリスクリスって、クリス殿のことばかり言ってらしたからな」

「ラグゼー! お前なんてことを言って――!!」


 顔を羞恥に染めてイリアは拳を振り上げた。


「おおっとすんません。勘弁してください」


 一応は謝っているものの、にやにや笑いを消すつもりはないようだ。


「クリスって、どこ行ってもモテモテだよね」

「そうか?」


 呆れたようにため息を吐くアンナ。俺としてはそれほどモテているという気もしないのだが。いや前世よりは間違いなく女の子の接点は多いよ。そこは認めてもいい。でも、うーん……。


「で、俺を呼んだのはただ寂しかったから、というわけじゃないんだろ?」


 冗談のつもりで言ってみれば、イリアは目を伏せて言葉に詰まる。


「え。まさかマジで寂しいから……?」


 イリアは慌てて手のひらを上げた。


「ま、待て。誤解するな! 違うぞ、いくら私でもただそれだけのためにお前を呼んだりはしない。いや……寂しかったのは……本当だけど」


 素直なやつ。

 もう少しふざけて再開を楽しみたい気持ちもあったが、さすがにそろそろ話を進めたほうがいいだろう。


「ラグゼーからある程度の話は聞いた。反乱軍か国か、どっちにつくか迷ってるんだって?」

「ああ、そうだ。将軍として恥ずべきことだと思っている。本来なら抱いてはならない疑問だ。国にこの身を捧げるべき私が……な。だがどうしても今のまま国に仕えていても、民の幸福のためにならないのではないかという気がしているのだ。今、国は腐敗し、民は苦しんでいる。私はそれを見過ごせない」


 イリアは拳を握り、目に力を込める。

 その目はいつだって民の姿を映している。

 イリアは自身の地位や権力などに興味はない。その心に占めるのは人々の幸せなのだ。

 俺はイリアと共に過ごしたレクレア村の一件で、それをよく知っていた。


「なら答えは出ているんじゃないか? 今回反乱を起こしたお前の祖父は、私利私欲のために軍を動かすような人間なのか?」

「違う!! 祖父は……ロミオは高潔な男だ。兵からの信奉は一線を退いた今なお厚い。だからこそ今回旗印に担ぎ上げられてしまったのだろう」

「担ぎ上げられて……しまった?」


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